この記事の概要
この記事では、再生医療の最新の政策動向と研究成果について紹介しています。2024年3月に厚生労働省が「再生医療等安全性確保法」の改正案を閣議決定し、安全性の強化や臨床研究法の見直しが進められています。また、再生医療の提供に関する規制強化を求める陳情書も提出され、政策見直しの必要性が高まっています。さらに、がん予防を謳った再生医療による健康被害が報告され、厚生労働省が対応に乗り出しました。
1. 再生医療政策の見直し
1. 再生医療等安全性確保法の改正
2024年3月5日、厚生労働省は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律及び臨床研究法の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。この改正案は、再生医療等の安全性確保の対象拡大、提供基盤の整備、臨床研究法の特定臨床研究等の範囲見直しなどを含んでいます。
Ministry of Health, Labour and Welfare
2. 再生医療政策の抜本的見直しを求める陳情
2024年10月26日、一般社団法人再生医療安全推進機構は、法規外の再生医療を提供・宣伝する医療機関の増加を受け、再生医療政策の早急な見直しを求める陳情書を厚生労働省に提出しました。
これらの動向は、再生医療の安全性と効果を高めるための重要なステップとなっています。
2. がん予防を謳った再生医療での健康被害
東京都内のクリニックで、がん予防を目的とした再生医療を受けた2人の患者が重篤な感染症を発症し、入院しました。この事例を受けて、厚生労働省は再生医療の提供を一時停止するよう緊急命令を出しました。
3. 骨形成タンパク質BMP3bの機能解明
九州歯科大学の研究グループは、骨形成タンパク質BMP3bが骨形成を抑制し、骨量を負に制御していることを発見しました。この発見は、骨再生医療の発展に寄与する可能性があります。
これらの進展は、再生医療の安全性と効果を高めるための重要なステップとなっています。もしさらに具体的な情報が必要でしたらお知らせください。
4. 脳梗塞慢性期患者への再生医療製品「HUNS001」の治験開始
北海道大学病院は、脳梗塞慢性期の運動機能障害を持つ患者を対象に、再生医療等製品「HUNS001」の第I/IIa相治験「RAINBOW2a研究」を開始しました。従来、脳梗塞発症から6か月以降の慢性期における機能回復は困難とされてきましたが、この治験はその常識を覆す可能性があります。
5. アルフレッサとイノバセルの資本業務提携
医薬品卸大手のアルフレッサは、便失禁・尿失禁を対象とした再生医療等製品を開発するイノバセルと資本業務提携を結びました。イノバセルは現在、切迫性便失禁の治療を目的とした製品「ICEF15」の第3相治験を進行中であり、この提携により「ICEF15」の国内流通体制の強化が期待されています。
6. iPS細胞の大量培養技術の確立
理化学研究所などの研究チームは、iPS細胞を高品質かつ大量に培養する新たな方法を確立しました。この技術により、培養コストを従来の数分の一に削減でき、再生医療の産業化が大きく前進する可能性があります。
これらの進展は、再生医療の実用化と普及に向けた重要な一歩となるでしょう。
7. ドコモとセルソースの協業開始
NTTドコモとセルソース株式会社は、再生医療等の認知拡大を目的とした協業を開始しました。2025年1月から、ドコモの「dヘルスケア」アプリ内で、セルソースが提携する医療機関主催の市民公開講座への案内や、再生医療に関する情報発信を行う予定です。これにより、再生医療に関する認知度向上と、早期治療の促進が期待されています。
8. オーファン再生医療製品の指定了承
厚生労働省の薬事・食品衛生審議会再生医療等製品・生物由来技術部会は、フェリング・ファーマの遺伝子治療薬「nadofaragene firadenovec」など3件のオーファン再生医療製品の指定を了承しました。これにより、希少疾患に対する新たな治療法の提供が期待されています。
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9. ひとのわメディカルによる難病治療
東京都千代田区のひとのわメディカルは、ヒトの乳歯から採取した歯髄幹細胞培養上清液を用いた再生医療を提供しています。瀬田康弘院長は、これまでに4,000件以上の上清液投与実績を持ち、特定臨床研究にも注力しています。この治療法は、難病患者への新たな治療オプションとして注目されています。
記事の監修者
皮膚科専門医
岡 博史 先生