この記事の概要
変形性膝関節症は、関節軟骨の損傷や磨耗によって膝に痛みや炎症が生じる慢性的な疾患です。これまで、痛みの軽減や進行を抑制する治療法が主に行われてきましたが、再生医療の分野で注目を集めているのが、PRP療法(自己血小板濃縮血漿療法)とAPS療法(自己タンパク質溶液療法)です。これらの治療法は、膝の自己再生能力を引き出すことで、症状の改善を目指すものです。今回は、PRP療法とAPS療法について詳しく解説します。
1. PRP療法とは?
PRP療法は、患者自身の血液を採取し、血小板を濃縮して作られた血漿(PRP)を膝関節に注射する治療法です。PRPには、組織の修復を促進する成長因子が多く含まれており、炎症の軽減や組織の再生を促進します。
- 期待できる効果
PRP療法は、関節内の炎症を抑え、痛みを軽減することが期待されています。また、軟骨の修復をサポートすることで、膝の可動域の改善や生活の質の向上が見込まれます。特に、軽度から中等度の変形性膝関節症の患者に効果的とされています。 - 治療の流れ
- 患者から少量の血液を採取
- 血液を遠心分離し、血小板が濃縮されたPRPを抽出
- PRPを膝関節内に注射
- メリット
- 自己血液を使用するため、アレルギー反応のリスクが低い
- 外科手術を回避できる場合がある
- 比較的短時間で行える治療
- デメリット
- 効果には個人差があり、全ての患者に同様の効果が見られるわけではありません
- 中〜重度の膝関節症には効果が限定的な場合もあります
2. APS療法とは?
APS療法は、PRP療法をさらに進化させた治療法で、患者自身の血液から抗炎症タンパク質や成長因子を含む溶液を抽出し、膝関節に注入します。この治療法は、炎症の抑制と再生を促進する要素をより強化したものです。
- 期待できる効果
APS療法は、炎症を抑えつつ、軟骨の再生や痛みの軽減をより効果的に行うことを目指しています。PRPよりも効果が持続する場合が多く、長期的な症状改善が期待されます。 - 治療の流れ
- 患者から血液を採取し、専用の装置で抗炎症タンパク質を抽出
- 抽出したAPSを膝関節に注射
- メリット
- 炎症を抑え、痛みの軽減効果が長期にわたり持続する可能性がある
- 自己血液を使用するため、PRP療法と同様に安全性が高い
- 比較的簡単な手技で実施可能
- デメリット
- 費用が比較的高額になる場合がある
- 効果が現れるまでに時間がかかる場合もある
3. PRP療法とAPS療法の違い
- 成分の濃度と効果
PRP療法は血小板を濃縮したものを注入するのに対し、APS療法では炎症を抑制する成分がさらに濃縮されています。そのため、炎症抑制効果が高い点がAPS療法の特徴です。 - 効果の持続性
APS療法の方が、長期的な効果を期待できる場合が多いとされていますが、患者の状態や症状によって選択肢が異なります。
4. 再生医療を受ける際の注意点
- 適切な診断が必要
どちらの治療法も、患者の症状や進行度に応じて効果が異なります。医師と十分な相談を行い、自分に適した治療を選びましょう。 - 費用面での確認
PRP療法やAPS療法は、自由診療となる場合が多く、費用が自己負担となる点に注意が必要です。事前にクリニックでの費用を確認し、納得した上で治療を受けましょう。
記事の監修者
皮膚科専門医
岡 博史 先生