この記事の概要
脳梗塞は、脳血管が詰まり、脳細胞が損傷を受ける深刻な疾患です。急性期の治療を終えた後、多くの患者さんが慢性期における後遺症に悩まされています。再生医療は、この慢性期のリハビリや回復に新しい希望をもたらす可能性を秘めています。本記事では、脳梗塞慢性期の再生医療に焦点を当て、治療の現状や最新の研究、適用される治療法、注意点について詳しく解説します。
再生医療とは?脳梗塞慢性期に期待される理由
再生医療は、細胞や組織を用いて損傷を修復・再生させる治療法です。特に脳梗塞慢性期では、以下の理由から再生医療が注目されています。
- 神経細胞の再生
脳梗塞による神経細胞の損傷を補うため、幹細胞を用いた神経再生が期待されています。 - 機能回復の促進
幹細胞や成長因子を用いることで、損傷部位周辺の機能を活性化し、生活の質(QOL)の向上が可能です。 - リハビリ効果の向上
再生医療をリハビリテーションと併用することで、運動機能や感覚機能の回復が期待されています。
脳梗塞慢性期の再生医療の治療法
1. 幹細胞療法
幹細胞療法は、脳梗塞慢性期における再生医療の中心的な治療法です。患者自身の細胞(自己細胞)や他者由来の細胞(他家細胞)を使用し、神経細胞の修復や新生を促進します。
- 骨髄由来幹細胞: 骨髄から採取した幹細胞を用い、神経修復を図ります。
- 脂肪由来幹細胞: 脂肪組織から採取した幹細胞を用い、損傷部位の治癒を促進します。
- iPS細胞: 人工的に作られた多能性幹細胞で、将来的には個別化医療の鍵となる可能性があります。
2. 成長因子療法
成長因子(Growth Factor)を脳内に投与することで、神経細胞の成長を促進します。この療法は、損傷した部位の周辺で新たな神経接続を形成することが期待されています。
3. 細胞外小胞(エクソソーム)療法
エクソソームは、幹細胞が分泌する微小な小胞で、損傷部位の修復を助ける因子を運びます。この技術は、幹細胞療法の代替または補完として注目されています。
再生医療を提供する病院と施設
国内で再生医療を提供する病院の例
- 東京医科歯科大学病院(東京)
幹細胞療法のリーダー的存在であり、脳梗塞慢性期の治療を対象とした臨床試験も実施しています。 - 慶應義塾大学病院(東京)
iPS細胞を用いた神経再生の研究で知られ、再生医療の最先端技術を提供しています。 - 京都大学附属病院(京都)
再生医療の研究機関としての役割を果たしながら、臨床現場での治療も行っています。 - 九州大学病院(福岡)
幹細胞治療とリハビリテーションを組み合わせた治療を提供しています。
再生医療のエビデンスと研究結果
以下の研究成果が再生医療の可能性を示しています。
- 幹細胞移植による改善
幹細胞移植により、運動機能の一部が回復した事例が報告されています。 - エクソソーム療法の成果
エクソソームを用いた治療で、脳内の炎症が軽減され、神経回復が進んだ事例があります。 - 成長因子注入の効果
成長因子注入による新たな神経接続形成が確認されています。
再生医療を受ける際の注意点
- 適応症例の確認
再生医療はすべての患者さんに適用されるわけではありません。専門医の診断を受けることが重要です。 - 自由診療の費用負担
再生医療は保険適用外となる場合が多く、治療費が高額になることがあります。事前に費用を確認しましょう。 - 治療後のフォローアップ
再生医療は、リハビリや生活習慣の改善と組み合わせて行うことが推奨されます。
再生医療で得られる希望
再生医療は、脳梗塞慢性期の患者さんにとって新しい希望を提供します。従来の治療法で改善が難しかった症状にも対応できる可能性があり、今後さらに技術が進化することで、より多くの患者さんに恩恵がもたらされると期待されています。
記事の監修者
皮膚科専門医
岡 博史 先生