ひざ軟骨は、関節の動きを滑らかにし、膝にかかる衝撃を和らげる重要な役割を果たしています。しかし、加齢や過度な運動、ケガなどでひざ軟骨が損傷すると、関節の痛みや可動域の制限が生じ、最終的には変形性膝関節症につながることがあります。これまでの治療法では、症状の緩和が主な目的とされてきましたが、再生医療の進展によって、損傷したひざ軟骨を修復する新しい治療の可能性が生まれています。
1. ひざ軟骨とその損傷の原因
ひざ軟骨は、軟骨組織という滑らかな構造を持ち、膝関節の動きをスムーズにし、衝撃を吸収する役割を担っています。しかし、以下のような要因によって損傷が生じることがあります。
- 加齢
年齢とともに軟骨が摩耗し、弾力性が低下していきます。これにより、ひざに痛みや炎症が生じることがあります。 - スポーツやケガ
スポーツによる激しい運動や外傷によって軟骨が損傷することがあります。スポーツ選手に多く見られる事例です。 - 体重の増加
体重が増えると膝にかかる負担が大きくなり、軟骨が摩耗しやすくなります。 - 遺伝や生まれつきの関節異常
遺伝的な要因や生まれつきの関節の形状が影響する場合もあります。
2. ひざ軟骨の再生医療の種類
再生医療の分野では、損傷したひざ軟骨を修復・再生するためのさまざまな治療法が開発されています。代表的なものを以下に紹介します。
- PRP療法(自己血小板濃縮血漿療法)
患者自身の血液を採取し、血小板を濃縮して膝に注射する治療法です。PRPには成長因子が含まれており、軟骨の修復や炎症の軽減を促進します。主に軽度から中等度の軟骨損傷に対して適用されます。 - 幹細胞治療
患者自身の脂肪組織や骨髄から採取した幹細胞を膝に注入し、軟骨の再生を促す治療法です。幹細胞は、損傷した組織を修復する能力があり、軟骨の再生や関節の機能改善を目指します。重度の変形性膝関節症や軟骨損傷にも対応する場合があります。 - 直培養軟骨移植
患者から採取した軟骨細胞を体外で培養し、増殖させて損傷部位に移植する手術です。自己細胞を用いるため、拒絶反応のリスクが低く、軟骨の再生を促進します。比較的高度な治療法で、適応患者を慎重に選定することが求められます。
3. ひざ軟骨再生医療のメリット
- 自己治癒力を活かした治療
自分の細胞や血液を使用するため、アレルギー反応や拒絶反応が少なく、安全性が高い治療法です。 - 痛みの軽減と機能の改善
再生医療により軟骨の修復が進むことで、痛みの軽減や関節の可動域の向上が期待されます。これにより、日常生活の質が向上することが見込まれます。 - 手術を回避または延期できる場合がある
再生医療による治療は、人工関節置換手術を回避または延期できる可能性があります。特に手術に抵抗のある患者にとって、有望な選択肢です。
4. 注意点と課題
- 効果の個人差
再生医療の効果には個人差があり、すべての患者に同様の効果が現れるわけではありません。年齢や軟骨の損傷の進行度、体質などが影響します。 - 自由診療の費用負担
再生医療は自由診療となる場合が多く、費用が高額になることがあります。費用面での負担を事前に確認し、納得の上で治療を受けることが大切です。 - リハビリが必要
再生医療後は、適切なリハビリテーションが重要です。治療効果を高めるため、専門医の指示に従い、計画的にリハビリを行いましょう。
記事の監修者
皮膚科専門医
岡 博史 先生