マイコプラズマ感染症

マイコプラズマ感染症とは

マイコプラズマは、ウイルスでもなく細菌でもなく、どちらかといったら細菌に近い病原体です。細菌との違いはマイコプラズマには細胞壁がないことです。
これにより細菌は肺気管支の表面に付着できるのに対し、マイコプラズマは付着できる機構がないため、体内には入ることができないということになります。
しかし、マイコプラズマが肺気管支内でただよっている時に身体の免疫反応で発熱が生じ、免疫反応が続くことで肺気管支の表面が傷つき、肺炎にいたります。

マイコプラズマ肺炎とは

マイコプラズマは、肺炎の10~20%程度を占めており、とてもありふれた感染症です。病初期は高熱や倦怠感、筋肉痛、関節痛等の症状が強く、3~5日後、痰がらみのひどい咳が現れ、レントゲンで肺炎とわかる変化が現れます。
病初期のレントゲンには肺炎像は映らないことが多いので、レントゲンは咳がひどくなってから撮影することがポイントです。
免疫の能力が弱い乳児は肺炎にはなりにくく、免疫の能力が上がる3歳~学童の子どもが肺炎を発症しやすいと言われています。しかし、発症する割合は、マイコプラズマの飛沫を吸い込んだとしても3~5%のみです。 このためインフルエンザに比べると大流行はまれです。発病前から発病後2週間程度、感染力があると言われています。
肺炎といってもマイコプラズマ肺炎は、細菌による肺炎と比べると軽症で、入院の必要がないことがほとんどです。一度かかっても終生免疫を獲得できないため、繰り返しかかることがあります。

診断

流行状況や症状の経過から胸部レントゲンで肺炎像(スリガラス様陰影)を認めた場合にマイコプラズマ肺炎を疑います。
のどの奥を綿棒でぬぐって行う抗原迅速検査(15分ほどで結果が出る)は感度が低い(検出されにくい)という欠点があり、核酸同定検査法(LAMP法)は 1日程度で結果が出て感度特異度ともに高い検査(検出に優れていて結果も信用できる)では、検査会社に検体を送り検査する時間が必要になります。
抗原検査もLAMP法も、陽性の場合は確定診断ですが、陰性の場合もマイコプラズマ肺炎を否定できません。マイコプラズマ肺炎の診断は胸部レントゲンでの肺炎の発見が重要で、病原体の存在を証明することは必須ではありません。

症状

  • 潜伏期間2~3週間程度
  • 感染経路飛沫、接触感染
  • 感染初期発熱、倦怠感、頭痛、乾いた咳など
  • 感染中期高熱が1週間前後持続し、咳が強くなる
  • 感染後期湿った咳が3~4週間ほど長く続くことがある

そのほかに、胸の痛み、発疹、喘鳴など多彩な症状が出現することでも有名です。

治療

多くの場合は抗菌薬による治療で自然経過により治癒。マイコプラズマにはペニシリン、セフェム系の一般的な抗菌薬は効果がありません。
マクロライド系(エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン)、テトラサイクリン系(ミノマイシン)、ニューキノロン系(レボフロキサシン、トスフロキサシンなど)に限られます。
最近マクロライド系抗菌薬は耐性化で効果が低くなっていると言われています。マクロライドが効かない場合にはニューキノロン、テトラサイクリンの順に抗菌薬の変更を行います。