COVIT

COVITとは

ヒトに感染するコロナウイルスは、ウイルスの中でも大きな科で、感冒から重症急性呼吸器症候群(SARS-CoV)まで幅広い疾患を起こすウイルスです。
冬に流行する風邪の病原体として存在し、風邪の15%(流行期35%)でほとんどの子どもが6歳までにかかると言われているもの4種類(HCoV-229E・HCoV-OC43・HCoV-63・HCoV-HKU1) と、 動物から感染した重症肺炎ウイルス2種類(SARS-CoV・MERS-CoV)、加えて2019年に発生した新型コロナウイルスの大流行は記憶に新しいと思います。

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)

コウモリが自然宿主となり、ヒトに感染して重症肺炎を引き起こしたと考えられています。
突然のインフルエンザのような症状で発病し、2週目には非定形肺炎へ進行、乾性咳嗽・呼吸困難や水様性下痢といった症状がある時期がピークとなり、約20%の患者が呼吸不全を起こします。
2002年11月に中国広東省で発生し、3月12日にWHOから「グローバルアラート」が出されてから、同年7月に終息されるまで30以上の国と地域で8千人を超える症例が報告されました。
死亡した多くの症例は、高齢者、心臓病・糖尿病の基礎疾患を持った患者で、子どもにはほとんど感染せず、かかっても軽い呼吸器症状のみでした。2003年以降はヒトへの感染はありません。

中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)

ヒトコブラクダに感染するウイルスが、ヒトに感染し重症肺炎を引き起こすと考えられています。最初の患者は、2012年にサウジアラビアで発見されました。
典型的な症状は、発熱・咳・息切れ(呼吸困難)です。肺炎は一般的な症状ですが、必ず発生するわけではありません。また、ほとんどの感染者は軽い呼吸器症状か無症状で経過したと考えられており、15歳以下の患者は全体の2%ほどで軽症あるいは無症状でした。
WHOによると、2022年10月17日時点で診断確定患者数は2600人(うち重症・死亡症例1259人)で、致死率は約35%です。厚生労働省は中東地域に旅行される方へ注意喚起をしています。

新型コロナウイルス(COVID-19)

この病気の病原体の名称は「SARS-Cov-2」ですが、通称は「新型コロナウイルス感染症」です。2019年の中国武漢市で発見されました。
ウイルスの遺伝子配列からコウモリを自然宿主として考えられていますが、実際にどのようにヒトに感染したかは不明です。
2021年9月までに2億2千万人が感染し、志望者は455万人と数えられ、以前のSARSやNERSとは伝播性や病原性において明らかに異質なウイルスだと言えます。
新型コロナウイルスは、高齢者や基礎疾患を持つ人以外に、20~50歳代の人や健康な人においても重症例や死亡例が確認されました。
2022年以降、オミクロン株が主流になってから重症化や死亡例は低下しましたが、急速に型を変異させ、子どもへの感染も多く見られるなど、全世界で爆発的な大流行となりました。 しかし、今回、有効性の高いワクチンが次々と開発、接種実現となり、一般的な感染症として5類への移行となり、今後も4種の風邪のコロナウイルス同様に定着することが予想されます。

診断

流行状況や症状の経過から、以下の検査を選択して結果をもとに診断します。

抗原検査
方法 咽頭ぬぐい液
検査時期 感染初期から検査可能
結果報告 15分ほど
詳細 検査時点での感染を知る
PCR検査
方法 唾液、咽頭ぬぐい液
検査時期 感染初期から検査可能
結果報告 1~3日
詳細 検査時点での感染を知る
血液検査
方法 コロナウイルス抗体(IgG・IgM)
検査時期 いつでも可能
結果報告 30分ほど
詳細 過去の感染の有無を知る
現時点での感染は分からない

抗原検査は短時間で結果が分かりますが、PCR検査と比べ精度が劣り、感度(陽性を見逃さない割合)が高くないため、仮に抗原検査で陰性となっても、それだけでは感染していないとは言えません。
PCR検査は高精度ですが、結果が出るまでに時間がかかり、抗体検査は抗体が体内で作られるのに通常感染後2~3週間かかるため、現時点での感染がわかるわけではないので、その時の病状や発病からの時間を考慮して、適切な選択をすることが重要です。

症状

  • 潜伏期間1日~2週間ほど
  • 感染経路飛沫、接触感染
  • 主な症状発熱、咳、鼻水、倦怠感、疲労感、息切れ(呼吸困難)、動悸、胸痛、関節痛、筋肉痛、頭痛、嘔吐下痢、腹痛、抑うつ状態、味覚・嗅覚障害など

主に咳などの呼吸器症状が出現します。初期は一般的なウイルス風邪のような咽頭炎や高熱や倦怠感、関節痛などインフルエンザとの区別が困難な症状のため、見分けがつきにくいです。
ウイルス感染しても1/3ほどは無症状との報告があり、次々出現する変異株によって、その症状は様々です。肺炎を生じて呼吸困難を認める場合には8日後に見られることが多く、重症化して多臓器不全に陥ることもあります。
ウイルスの排出は発病前の2~3日から始まり、発病直後が最も感染力があります。発症後7日を過ぎるとウイルス量が大幅に低下し感染力をなくしていきます。

軽症
臨床状態 呼吸器症状なし
または咳のみで呼吸困難なし
肺炎の所見なし
SPO SpO₂ ≧ 96%
中等症Ⅰ
臨床状態 呼吸困難、肺炎所見あり
SPO 93% < SpO₂ < 96%
中等症Ⅱ
臨床状態 呼吸不全・酸素投与が必要
SPO SpO₂ ≦ 93%
重症
臨床状態 入院ICU、人工呼吸器が必要
SPO SpO₂

治療

ワクチン

ワクチンには、重症化を防いだり、症状を抑える効果が期待できます。
しかし、他方で副反応として、接種部位の痛みや頭痛・倦怠感、筋肉痛などが報告されています。ごくまれにアナフィラキシーショック(急性アレルギー発作)を起こすことがあります。
接種後に現れた症状の種類によっては、次の接種を受けない方がよいこともありますので、接種後に気になる症状が現れた場合は、受けた医療機関やかかりつけ医にご相談ください。

ファイザー社(6か月~4歳用)のワクチン

接種回数:3回接種(1回0.2ml)

  • 3回セットのワクチンです。
  • 生後6ヶ月から4歳のお子様は、合計3回摂取して初回が完了します。3回で1セットですので早めの接種予約をご検討ください。
    ※ 5歳以上の方の初回接種は1、2回摂取の合計2回です。
6ヶ月~4際のワクチン

1回目接種後、通常3週間あけて2回目を接種、その後、8週間あけて3回目を受けます。
通常の感覚を超えた場合には、なるべく速やかに摂取してください。

ファイザー社(5歳~11歳用)のワクチン

接種回数:2回接種

  • 2回セットのワクチンです。
  • 5歳から11歳のお子様は、合計2回摂取して初回が完了します。
    ※ ファイザー社の12歳以上のものに比べ、有効成分が1/3になっています。
6ヶ月~4際のワクチン

初回接種として3週間の間隔をあけて2回接種します。
その後、5ヶ月以上間隔をあけて追加接種(3回目)を受けられます。
3回目は特に、慢性呼吸器疾患や先天性心疾患などの重症化リスクの高い基礎疾患を有するお子様に接種を勧められています。接種の際には、あらかじめかかりつけ医の先生とよく相談をして下さい。

治療薬

現在、厚生労働省の承認を受けたものは重症化を防ぐ経口治療薬として、「抗炎症薬」と「抗ウイルス薬」、「中和抗体薬」の3種類があります。
しかし、使用条件や併用薬に関しての制約などから処方が難しいため、あまり一般的に処方されていない状況です。このうち軽症の方に処方されるのは、「抗ウイルス薬」と「中和抗体薬」です。

  • ゾコーバ
    副作用が少なく、重症化リスクがなくても使えるが、他の薬との併用が難しく、発症期間が短くなるが、重症化予防の効果はないと言われる。
  • ラゲブリオ
    他剤併用ができ、重症化予防効果も30%減ると認められるが、粒が大きく高齢者などには飲みにくい薬。
  • パキロビット
    重症化予防は88%減と最も高く、妊婦にも処方可能だが、他剤併用が難しく、重症化リスクの高い患者にしか使えない。
  • 中和抗体薬
    ウイルスの型によって効果の発現が分かれるため、変異株ごとの検証が必要となる。
  • レムデシビル
    重症化予防効果は高い。発症7日以内の投与開始と3日間継続投与が必要。