小児気管支喘息

気管支喘息とは

気管支が何らかの刺激により、急に細くなってしまうために呼吸がしにくくなりますが、治療により改善する病気です。症状がひどいと「ヒューヒュー・ゼーゼー」といった呼吸音が聞こえることがあります。
「刺激」とは、ウイルス・細菌、ホコリ、ダニ、動物の毛、フケ、たばこの煙、ストレスなど色々あります。喘息の人は、健康な人に比べて気道(空気の通り道)が荒れた状態のため敏感になっていて、わずかな刺激でも発作を起こしてしまうのです。
2~3歳から発症、6歳までには全体の90%が発症し、幼少期のウイルス感染が影響していると言われます。思春期から青年期には約70%が軽快しますが、大人の喘息に移行することもあります。

診断

乳幼児喘息の診断の目安は「呼気性喘鳴を3回以上繰り返すこと」です。
さまざまな刺激により、急に気道が収縮することで起こる咳発作(喘鳴・呼吸困難などの症状)が、治療による改善と刺激による悪化を繰り返す状況を診て診断します。
上記以外にも家族歴・環境要因、アレルゲン検査なども参考にします。

症状

  • 風邪を引くたびに咳が続く
  • 呼吸をする時に「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」と音が出る
  • 走ったり激しく遊んだり、泣いたり怒ったり、冷たいアイスなどの刺激で咳が出る
  • 朝と夜に咳がよく出る
小児気管支喘息

小児の気道は細く、喘鳴などの呼吸音が分かりやすいですが、乳幼児ではよく聞こえないこともあります。
症状はアレルゲンが多い場所、環境などの要因で引き起こされやすいことと、夜間や早朝に発作を起こすことが多いのも特徴の1つですので、上記の症状を繰り返している場合には、受診した方がいいでしょう。

発作強度:間欠型
呼吸困難 急ぐと苦しい・動くと苦しい
動作 普段通り
SPO 96%以上
発作強度:軽度(軽発作)
呼吸困難 苦しいが横になれる
動作 やや困難
SPO 96%以上
発作強度:中等度(中発作)
呼吸困難 苦しくて横になれない
動作 かなり困難、かろうじて動ける
SPO 91~95%
発作強度:高度(大発作)
呼吸困難 苦しくて動けない
動作 会話困難・歩行不能
SPO 90%以下
発作強度:中等度(中発作)
呼吸困難 苦しくて横になれない
動作 かなり困難、かろうじて動ける
SPO 91~95%
発作強度:重篤
呼吸困難 呼吸減弱・チアノーゼ・呼吸停止
動作 会話、体動不能・錯乱・失禁・意識障害
SPO 90%以下

こんな時は急いで受診しましょう

  • 苦しくて顔色が悪い
  • ぼーっとしている
  • せきこんで食事がとれない
  • せきこんで眠れない
  • 苦しくて会話ができない、歩けない
  • 肋骨の上や肋骨の下が呼吸の度にべこべこくぼむ(陥没呼吸)
  • 鼻の穴がぴくぴくしている(鼻翼呼吸)
  • 肩で呼吸している(肩呼吸)

治療

治療の基本は、発作を起こさないための気道炎症の治療(抗炎症治療)ですが、その他に、喘息発作を治す治療(発作治療)とダニやほこりを減らす環境整備などが重要になります。
そして目標は、「発作を起こさず、健康な人と変わらない生活を送ること」です。

薬物療法には、発作を止める薬と発作の予防を目的として使用する薬の2種類があります。前者は気管支を広げる作用(気管支拡張作用)のあるものや痰を出しやすくする作用のあるものがあります。 後者は炎症を抑える作用(抗炎症作用)として吸入ステロイド薬や、喘息症状の予防薬としてロイコトリエン拮抗薬などが使われることがあります。

発作強度:間欠型
治療ステップ ステップ1
治療方法 頓用 ネブライザーβ刺激薬テオフィリン
治療環境 自宅
発作強度:軽度(軽発作)
治療ステップ ステップ1
治療方法 頓用 ネブライザーβ刺激薬テオフィリン
治療環境 自宅
発作強度:中等度(中発作)
治療ステップ ステップ2
治療方法 常用 β刺激薬吸入
酸素投与
治療環境 【救急外来】
1時間で症状軽快 → 帰宅
2時間以上改善が見られない場合 → 医師の判断で入院検討
発作強度:高度(大発作)
治療ステップ ステップ3
治療方法 常用 β刺激薬吸入
酸素投与
治療環境 【救急外来】
1時間以内に改善がなければ入院
発作強度:重篤
治療ステップ ステップ4
治療方法 常用 β刺激薬吸入
酸素投与
気管支洗浄
挿管
人工呼吸
治療環境 速やかに入院、治療開始

Q&A

吸入ステロイド薬の副作用が心配なのです。
赤ちゃんが風邪を引くと、すぐゼイゼイするのですが、喘息ですか?
ゼイゼイする呼吸を3回繰り返すとは?
夜に喘息発作がひどいのに診察時は落ち着いています。
呼気性喘鳴の見方とは?