待望の赤ちゃんを授かり、妊婦さんは喜びと同時に不安を抱え込む方も多いことでしょう。妊娠中の悪阻・流産はもちろん、産後に分かる胎児の病気や障害、中でもダウン症を心配する妊婦さんがほとんどです。この記事では妊娠中の不安について医師が解説します。
妊娠中の不安・心配ごとは当たり前
妊娠中は母体と胎児の両方に、さまざまな健康リスクが生じることも少なくありません。また多くの妊婦さんは妊娠初期から臨月、そして産後に起こる「万が一」を考え、眠れないほどの不安を抱えることでしょう。
しかし妊娠中のさまざまな不安や、心配などの心のゆらぎは異常なことではありません。初めての妊娠・出産であれば妊婦健診の通院さえも不安、という妊婦さんは多くいらっしゃいます。また妊娠によって大量に分泌されるホルモンの作用で、イライラや不安を感じるケースも。
強いストレスは時に、胎児の成長に影響を与えてしまいます。不安な気持ち、心配やイライラとした感情はホルモンバランスのためと認識し、検診や健康状態に不安があれば産婦人科の医師や助産師へ早めに相談することが大切です。
妊婦健診での不安
妊娠が判明すると、妊娠経過と胎児の成長・健康状態を確認するために「妊婦健診」を定期的に受ける必要があります。
妊婦健診は初診から妊娠3か月は1~2週間に1度、妊娠4~6か月は4週間に1度、妊娠7~9か月は2週間に1度、臨月になると1週間に1度の頻度で健診がおこなわれます。また予定日を超過すると、週2度の妊婦健診を受ける場合もあるため、病院で確認しましょう。
妊婦健診の内容はおもに、尿検査・体重測定・血圧測定となり、毎回おこなう必要があります。これらは過度な体重の増加や尿蛋白、尿糖などを調べ、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群を早期発見するために必要な検査です。 そのほかの診察では問診・腹囲・子宮底長測定・むくみ検査・エコー検査・血液検査・内診・説明がおこなわれます。腹囲・子宮底長測定・むくみ検査は妊娠中期以降は毎回チェックされ、血液検査はその間に2~3回おこなわれます。
この他にも子宮頸がん検診・膣分泌物検査・経口ブドウ糖負荷試験・子宮頸管長測定・NST(ノンストレステスト)といった検査が1回ずつ実施されます。
妊婦健診ではさまざまな検査がおこなわれます。検査の数値に一喜一憂し、また、つわりやお腹が大きくなる時期は通院そのものに、ストレスや不安を感じる妊婦さんも少なくありません。そのため「妊婦健診が面倒」「妊婦健診に行かないとどうなる?」といった声も耳にします。しかし、妊婦健診は母体と胎児の健康のために、とても大切な検査です。決められた期間に必ず検査を受けましょう。
妊娠とお金の不安
妊娠は病気ではないため、妊婦健診は保険適用外となります。 妊娠初期から約9か月間に12~16回程度の通院が必要です。本来なら、1回5000~1万5000円程度の費用がかかり、総額7~15万円ほどの負担になります。
しかし2009年4月、原則14回までの妊婦健診費用を無料化する助成制度ができました。母子手帳とともにもらえる「妊婦健康診査受診票」が補助券となります。しかし現在でも全ての自治体で無料化されているわけではなく、自治体によっては負担金額が異なるなど、助成内容に差があります。
また、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群が見つかった場合、追加の検査により補助券が足りず自費となることもあります。事前に病院で確認しましょう。なお妊婦健診にかかった費用は医療費控除制度の対象です。申請予定のある妊婦さんは領収書を保管しておきましょう。
妊娠と仕事の不安
仕事をもつ妊婦さんであれば、妊娠期間や産後に休業が必要となります。職業や経済的な事情によっては安定期以降、臨月まで勤務する妊婦さんも少なくありません。しかし、妊娠中の体調の変化などを予測することは難しく、職場の理解も必要となります。
これらのことから雇用形態を問わず、仕事をもつ妊婦さんは妊娠中、そして産後復帰に対して不安や心配を抱えてしまうことが多いとされています。いずれも体調を第一に、パートナーや家族、勤務先と産前・産後・育児休暇について、いつからいつまで休業が可能なのかを、しっかり話し合うことが大切です。
産前休暇と産後休暇について
妊婦さんには産前休暇や産後休暇、育児休暇といった労働基準法で認められた休暇があります。これらは正規雇用・非正規雇用などの雇用形態に関わらず、誰しもが取得できます。
産前休暇
妊婦さんが産前休暇を請求した場合、出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間前)からの休業が認められます。なお本人が希望した場合は、出産前日まで勤務が可能とされています。
産後休暇
産後休暇は本人が請求しなくても、出産の翌日から6週間は就業させてはならないと定められています。なお産後7〜8週目は本人の希望で休業と就業を選べることから、赤ちゃんや自身の体調によって検討すると良いでしょう。
育児休暇について
育児・介護休業法により条件を満たしている場合、1人の子供につき1回の育児休暇がもらえます。育児休暇は原則的に1歳になる前日まで取得できますが、2歳までに延長することもできます。
母体の健康不安
妊娠中、妊婦さんの体調は大きく変化するとともに免疫力が低下します。これは母体が胎児を父親の遺伝子をもつ異物とみなし、拒絶しないようにする免疫細胞の働きによるものです。そのため、妊娠前であれば感染してもすぐに軽快する感染症や、食中毒の可能性がある刺し身などの非加熱食品には注意が必要となります。
中でも風疹の場合、妊娠初期に罹患することで胎児へも風疹ウイルスが感染し、先天性風疹症候群として難聴・先天性心疾患・白内障を引き起こすおそれがあります。そのほかの感染症も妊娠中の免疫力低下により、重症化することも少なくありません。これらのことから妊娠・出産を希望する方とパートナーは、事前に予防接種で感染リスクを軽減することが大切です。
感染症以外にも、妊娠中期・後期ともなると腹部が大きくなり、頻尿や不眠となる妊婦さんも多くいらっしゃいます。「排尿の頻度が異常」「頭痛やつわりが治まらない」など身体的な症状のほか、「出産が怖い」「赤ちゃんの先天性疾患が不安」といったメンタル面の不調が生じた際は早めに担当医へ相談しましょう。
胎児の健康不安やダウン症について
妊婦さんが最も不安に思うことは、胎児の健康状態ではないでしょうか。「生まれてくる赤ちゃんの先天的な障害や病気が心配」「妊娠前に飲酒や喫煙をしていた場合、胎児への影響は?」など、妊婦さんからは不安の声が寄せられます。
ダウン症(21トリソミー)とは
とくに35歳以上の高齢妊娠の妊婦さんの場合、ダウン症(21トリソミー)についての不安や質問が多く挙げられます。ダウン症(ダウン症候群)とは21番目の染色体が通常より1本多い状態のことです。ダウン症(21トリソミー)のおもな特徴は、扁平でつり上がった目や全身の筋緊張の低下、低身長のほか先天性心疾患やIQの発達の遅れなどが挙げられます。
ダウン症(21トリソミー)についてインターネットなどで、「妊娠前や妊娠中に◯◯をするとダウン症」といった情報を見かけますが、ダウン症(21トリソミー)は胎児の染色体異常症が引き起こす病気です。染色体異常症のはっきりとした原因は未だ解明されていませんが、妊娠年齢が上がると染色体異常症リスクも上昇するとされています。
また胎児の染色体異常症はダウン症(21トリソミー)だけでなく、さまざまな先天性疾患を引き起こします。なお妊娠早期の流産は、染色体異常症がおもな原因といわれています。
胎児のダウン症が妊娠約6週でわかるNIPT(新型出生前診断)
NIPT(新型出生前診断)とは、非侵襲性出生前遺伝学的検査/非侵襲的出生前遺伝学的検査とも呼ばれるスクリーニング検査のことです。NIPT(新型出生前診断)は一般的な健康診断と同様に腕からの採血法でおこなわれ、母体血液に含まれる胎児のDNAより染色体異常症リスクを調べることができます。また、母体血液のみの採取で検査が可能であることから、胎児への直接的な侵襲(ダメージ)はないといえるでしょう。
ヒロクリニックNIPTによるNIPT(新型出生前診断)は母子手帳をお持ちの妊婦さんであれば、どなたでも妊娠約6週(超音波検査で妊娠が確定したとき)より検査が可能です。なおNIPT(新型出生前診断)は、ダウン症(21トリソミー)に関しては99.9%と、とても高い検出精度とされています。
胎児の染色体異常症の中で、最も発症頻度が高い病気はダウン症(21トリソミー)です。ヒロクリニックNIPTではダウン症(21トリソミー)単体検査を始めに、全染色体の検査も実施しております。染色体異常症による先天性疾患や、NIPT(新型出生前診断)について分からないことはヒロクリニックNIPTまで、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
妊娠や出産には喜びとともに、不安や心配が尽きることはないでしょう。しかし強い不安はストレスとして、妊婦さんと赤ちゃんへマイナスの影響を与えることも少なくありません。日々の生活や仕事の不安・心配事はパートナーや家族に、自身と赤ちゃんの健康リスクなどの不安は医師や助産師へ早い段階で相談をおこない、健やかな妊娠期間を過ごしましょう。
待望の赤ちゃんを授かり、妊婦さんは喜びと同時に不安を抱え込む方も多いことでしょう。妊娠中の悪阻・流産はもちろん、産後に分かる胎児の病気や障害、中でもダウン症を心配する妊婦さんがほとんどです。この記事では妊娠中の不安について医師が解説します。
記事の監修者
岡 博史先生
NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業