つわりや大きくなるお腹、身体も心も大きく変化する妊娠中に働くのは簡単なことではありません。今回は妊娠中の身体の変化と働き方、周囲への妊娠の報告のタイミング、ママと赤ちゃんを守る法律などを分かりやすく解説します。
この記事のまとめ
産前休暇は出産予定日から6週間(42日前)から取得する権利があります。産後休暇は出産の翌日から数えて8週間(56日後)まで取得可能です。産前休暇は申請制ですが、産後休暇は申請の有無に関わらず最低6週間は取得義務があります。
妊娠中の身体の変化と働き方
妊娠中には赤ちゃんの成長にともない、ママの身体にさまざまな変化が起こります。ここでは妊娠初期・妊娠中期・妊娠後期の3つの時期の身体の変化と働き方を解説します。
妊娠初期
妊娠初期は、在胎週数13週6日までの時期です。
妊娠する前の最終月経の開始日が妊娠0週0日です。最終月経から2週間程度で排卵が起こり、タイミングよく受精すると、1週間程度で子宮に着床し妊娠が成立します。妊娠成立後3~4週目に、着床出血とよばれる少量の出血を認める人や、ホルモンバランスの変化による疲れやすさやだるさを感じる人もいます。けれども自覚症状がほとんどなく、妊娠に気づかない人も多い時期です。
妊娠2か月、在胎週数4~7週は生理がこなかったり、胸の張りや怠さを感じたり。些細な体調の変化で妊娠に気づく人が増えます。この時期以降個人差はありますがつわりやめまい、貧血、お腹のはりが増え立ち仕事が辛くなる人もいます。職場に妊娠を報告し、辛いときには業務内容や働き方を相談しましょう。
妊娠3か月、在胎週数8〜11週はつわりのピークの時期です。つわりがひどいと、食事がとれず眠れないために働くことがきついと感じる人も少なくありません。体調に合わせて無理をしないことがママ・赤ちゃんの双方にとって大切です。
妊娠4か月、在胎週数12~15週はつわりが収まってくる時期です。同時におなかがふっくらとして、体調の変化も感じられます。まだまだ、体調も安定しないため無理は禁物です。
妊娠中期
妊娠中期は、在胎週数14週0日〜27週6日までの時期です。
妊娠5か月、在胎週数16〜19週を迎えたころを「安定期」とよび、初期流産のリスクが減りつわりが収まる人も増えます。子宮も大きくなるため、お腹が目立つようになります。赤ちゃんの成長が著しいこの時期は、貧血になりやすい時期です。めまいやたちくらみやふらつきを自覚したらしゃがむ、頻度が増えるなら立ち仕事を減らし在宅勤務にするなど働き方の調整も必要です。
妊娠6か月、在胎週数20〜23週は赤ちゃんが大きくなるにしたがってお腹が前に出るため、立ち方や身体のバランスの取り方が変わってきます。足の血管に負担がかかり静脈瘤やむくみがみられる、足がつるなどのマイナートラブルが増える時期でもあります。立ち仕事がきつくなったり、疲れやすくお腹の張りを自覚したりすることはまだまだ続きます。体調に合わせた仕事量の調整が大切です。
妊娠7か月、在胎週数23〜27週は赤ちゃんの胎動も活発になります。赤ちゃんの成長にともない内臓が圧迫され、食べる量が減ったり便秘がちになったり痔になる人もいます。内臓が圧迫されるため横になると息苦しい、胎動で眠れない、休めないなどの悩みも増えるため無理せず横になるようにしましょう。
双子以上の場合は、14週間前から産休が取得可能と労働基準法で定められており妊娠26週が産休の目安です。
妊娠後期
妊娠後期は、在胎週数28週以降の時期を指します。
妊娠8か月、在胎週数28〜31週頃には赤ちゃんの体重は1kg程度となり、いつ生まれてもおかしくないくらいのからだの機能がそなわっていく時期です。
前駆陣痛とよばれるお腹の張りも感じやすく、お腹が急激に大きくなり妊娠線が目立つようになります。むくみもひどくなりやすいため、無理をしないことが肝心です。
妊娠9か月、在胎週数32〜35週は産休に入りはじめる時期です。
労働基準法で産前休暇は出産予定日の6週間前と決められていますので、妊娠経過が順調であれば妊娠33週目(妊娠9か月の2週目まで)が働く目安です。お腹も大きくなっていますから、有給休暇を取得して早めに産休を取得する人、希望して出産ぎりぎりまで働く人など個人差があります。いずれにせよ、ママと赤ちゃんにとって負担の少ない働き方がベストです。
また、産休で活動量が減り運動不足になりやすいのもこの時期の特徴。出産には体力も必要ですから、簡単な運動を心がけ体力を維持しましょう。
妊娠10か月、在胎週数36〜40週のうち36週までの出産を早産、37~41週までの出産を正期産とよびます。いつ赤ちゃんが生まれてもおかしくない時期で、お腹の張りや出産に向けて赤ちゃんが骨盤内に下がってきたことを自覚する人もいます。入院の準備や育児用品を揃えるなど、まだまだやることはたくさんありますので、休み休み無理をしない範囲で赤ちゃんを迎える準備を進めましょう。
出産予定日はあくまで予定日です。赤ちゃんが生まれてくるタイミングを大切に、予定日を前後しても焦らないで赤ちゃんを迎えたいですね。
妊娠の報告
妊娠の報告はいつ頃するとよいのでしょう。家族へは?職場へは?おすすめのタイミングを紹介します。
家族への報告
家族への報告のタイミングは、いくつかあります。パートナーへは月経の遅れを自覚した妊娠2か月目ころです。簡易的な妊娠検査薬を使用する、確定診断のために産婦人科を受診する時期で、妊娠の可能性があることを家族に報告します。
また、実際に妊娠検査薬を使用したり、産婦人科で赤ちゃんの心臓の動きが確認できたタイミングで家族に報告する場合もあります。
身近な家族には、同時期に報告する場合と安定期に入ってから報告する場合とさまざまです。
ママとパートナー双方に負担のないタイミングで伝えるとよいでしょう。
職場への報告
職場への報告は「安定期まで待って」というわけにはいきません。その理由は安定期を迎える前につわりや初期流産などのマイナートラブルに見舞われ、仕事に影響を与える可能性があるためです。マイナートラブルを予防するために、仕事量や業務内容の調整が必要な場合も多いため、妊娠を確認したタイミングで上司や人事課などには最低限伝えるようにしましょう。
また、産休や復職、退職についてもあらかじめ相談しておくことで、引継ぎがスムーズになります。
同僚に伝えるタイミングは配慮が必要なときや、安定期に入ってからなどさまざまです。人間関係に配慮しながら、無理のない範囲で伝えていけるとよいでしょう。
仕事量、働き方の相談
妊娠にともなう体調の変化に配慮した仕事量の調整や業務内容、勤務時間、通勤時間、休憩時間の調整は妊婦が受けられる権利の1つです。検診などで医師から配慮が必要との指導を受けた場合に、雇用主・事業主など雇う側に配慮の必要があると労働基準法や男女雇用機会均等法で定められています。
妊娠にともなうさまざまな体調の変化で、妊娠前のように働けなくなってしまうことは甘えではありません。無理をする、十分に休むことができない働き方は赤ちゃんにもストレスとなり、切迫早産・切迫流産のリスクが高くなってしまいます。上司や人事課、産業医などと相談し、ママと赤ちゃんの双方に負担の少ない働き方をしていきたいですね。
産休はいつから?
産休は「産前産後休業」や「産前産後休暇」の略で、正社員・派遣社員・アルバイトなど働き方に関わらず妊娠中の労働者に取得する権利があります。
産休は「産前」と「産後」のそれぞれに休業期間が異なり、労働基準法第65条で以下のように定められています。
”第1項 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。
第2項 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。“
産前休暇は出産予定日から6週間(42日前)から取得する権利があります。産後休暇は出産の翌日から数えて8週間(56日後)まで取得可能です。産前休暇は申請制ですが、産後休暇は申請の有無に関わらず最低6週間は取得義務があります。
育休を取って復職する場合
育休は「育児休業」の略で、育児・介護休業法第5条~第9条で以下のとおり定められています。
”労働者は、申し出ることにより、子が1歳に達するまでの間、育児休業をすることができます(一定の範囲の有期契約労働者も対象となります)。一定の場合、子が1歳6か月又は2歳に達するまでの間、育児休業をすることができます。“
育休は赤ちゃんが生まれてから生後1歳の誕生日の前日までの原則1年ですが、保育所に入所できない場合や養育が困難な場合などは最大2歳まで育休を延長できます。
復職後も、育児時間の取得や子の看護休暇などさまざまな配慮を受けられます。詳しくはこちらのホームページを参照ください。
女性にやさしい職場づくりナビ – 働くママの育児について
退職する場合
妊娠・出産をきっかけに、パートや派遣への働き方の切り替えや退職を悩むこともあるかもしれません。キャリアとライフスタイルを考え、退職を決意した場合には早めに伝えるようにしましょう。産前に退職を決断できない場合には、上司とよく話し合ったうえで産休・育休を取得し復職のタイミングで働き方を考えるのも一つの方法です。出産前に退職すると育児休業給付金が支給されない、出産手当金が減額になるなどお金の面でも大きな差があります。ライフプランやマネープランにも大きな影響を与えますのでよく考えたうえで退職しましょう。
妊婦を守る法律や規定など
働く妊婦をまもる法律は「労働基準法」と「男女雇用機会均等法」の2つがあります。労働基準法は「産休」とよばれる産前産後休暇だけでなく、妊婦等の危険有害業務の就業制限、経易業務転換、時間外・休日労働・深夜業の制限、変形労働時間制の適用制限、育児時間などが母性保護規定として制定されています。
男女雇用機会均等法の母性健康管理措置では、保険指導または健康診断を受ける時間の確保、通勤緩和、休憩に関する措置、妊娠中や出産後の症状に関する措置などがあります。
たとえば、公共交通機関の通勤や人混みが負担になる場合は、自家用車の運転も可能となります。つわりがひどい場合には、症状に併せた業務内容の変更や休憩時間の延長、休憩回数の増加など適切な配慮を受けられます。
仕事をするうえで気を付けること
仕事をするうえで一番に気をつけることは「ママと赤ちゃんの健康」です。周囲に迷惑をかけるのではないか、同僚の負担が増えるのではないかと無理をするママも少なくありません。けれども、赤ちゃんの命を守りながら産前と同様に働き続けることは容易ではありません。ママと赤ちゃんの双方に負担となり、切迫早産や切迫流産など赤ちゃんの命にかかわるケースも少なくありません。
妊娠に伴うさまざまな配慮は法律で定められており、労働者の権利です。妊娠がわかったとき、体調の変化を自覚したときは一人で悩まず職場に相談しましょう。また職場に相談しただけでは解決しない場合には、公的機関に相談できます。一人で抱え込まず、無理のない範囲で働くことができるとよいですね。
妊娠中の働き方を相談したいときは、こちらのホームページを参照ください。
女性にやさしい職場づくりナビ – 困ったときの問い合わせ先
まとめ
妊娠中の働き方やいつまで働くの?という疑問は解決できましたか?つわりやホルモンバランスの変化によるマイナートラブルは個人差が大きく「〇週までは働ける」とひとくくりにはできません。さらに業務内容や労働環境だけでなく、仕事や通勤のストレスなど多種多様な要因がママと赤ちゃんに影響を与えます。ママと赤ちゃんを守るためにさまざまな法律が定められていますし、法律にのっとった配慮を求めることは労働者の権利です。ヒロクリニックNIPTでは、エコー検査で妊娠が確認できたらすぐに赤ちゃんの染色体異常リスクを調べる事ができます。NIPT(新型出生前診断)についてのご質問はヒロクリニックNIPTまでぜひご相談ください。
【参考文献】
- 日本人事労務コンサルタントグループ – 法律で定められている、妊娠・出産、育児・介護のための制度
- 女性にやさしい職場づくりナビ – 妊娠・出産期に知っておくべき法律や制度
- 女性にやさしい職場づくりナビ –妊娠中の女性労働者への対応
つわりや大きくなるお腹、身体も心も大きく変化する妊娠中に働くのは簡単なことではありません。今回は妊娠中の身体の変化と働き方、周囲への妊娠の報告のタイミング、ママと赤ちゃんを守る法律などを分かりやすく解説します。
記事の監修者
岡 博史先生
NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業