ダウン症とは
ダウン症は正式名称を「ダウン症候群」といいます。染色体の細胞分裂の異常によって起こり、21番目の染色体が1本多くなっていることから「21トリソミー」とも呼ばれています。
1965年、最初の報告者であるイギリス人ジョン・ラングドン・ダウン医師の名前にちなみ、WHOが定めました。
最も頻度が高い染色体異常の一つと言われています。
21トリソミー(ダウン症候群)の特徴
21トリソミー(ダウン症候群)は、筋肉の緊張度が低く、多くの場合知的な発達に遅れが出るのが特徴です。発達は通常よりも全体的にゆっくり進みます。
また、全ての方に起きるわけではありませんが、心臓疾患、消化器系疾患、甲状腺機能低下症、目の疾患、難聴などを合併することがあります。
21トリソミー(ダウン症候群)の原因
21トリソミー(ダウン症候群)は、21番染色体が3本あることで起こる先天性疾患です。
ほとんどが偶発的に起こるもので、誰にでも起こり得ることです。21トリソミー(ダウン症候群)を産む人の特徴が何かあるというわけではありません。
ただ、5%と頻度は低いのですが、「ロバートソン転座」による21トリソミー(ダウン症候群)は遺伝により起こります。母親もしくは父親が「ロバートソン転座」の保因者であった場合、21番トリソミーになる確率が通常の場合より高くなります。
21トリソミー(ダウン症候群)になる確率
21トリソミー(ダウン症候群)は偶発的に起こることがほとんどで、600人~800人に1人の割合で生まれるとされています。
ただ、年齢が高くなるほど、21トリソミー(ダウン症候群)の子どもが生まれる可能性が高くなります。21トリソミー(ダウン症候群)の子どもが生まれるリスクは、母親の年齢が20歳で1667人に1人、30歳で952人に1人、40歳では106人に1人です。
21トリソミー(ダウン症候群)はいつ分かる?
赤ちゃんが21トリソミー(ダウン症候群)である可能性、21トリソミー(ダウン症候群)であるかどうかは妊娠中の検査で調べることができます。
最も早く調べることができるのはNIPT(新型出生前診断)です。NIPT(新型出生前診断)は、エコー検査で妊娠を確認後すぐに受けられます。検査も血液検査で行うのでリスクがなく、感度も99%と非常に高いのが特徴です。
NIPT(新型出生前診断)に比べ83%と感度は劣りますが、コンバインド検査も比較的早く調べることができます。検査は採血と超音波検査で行い、妊娠11~13週に行うことができます。
母体血清マーカー検査は妊娠15~17週に受けることができます。こちらも採血で行う検査ですが、感度は80%とNIPT(新型出生前診断)より劣ります。
これらの検査は非確定的検査ですので、これらの検査で疑いがある場合は確定検査を行うことが多いです。
確定検査には絨毛検査と羊水検査があり、21トリソミー(ダウン症候群)の有無を確実に調べることができますが、流産や死産のリスクがあるというデメリットがあります。
絨毛検査は妊娠11~14週で行うことができ、流産・死産のリスクは1%ほど、羊水検査は、妊娠15~16週以降に行うことができ、流産のリスクがは0.3%ほどです。
検査を受ける際は、検査が受けられる時期、精度、リスクなどを考慮し、選択するようにしてください。
妊娠中に21トリソミー(ダウン症候群)の予兆はある?
妊娠中に妊婦さん自身で21トリソミー(ダウン症候群)に気づくことができるような予兆はない場合が多いです。妊娠中に赤ちゃんに21トリソミー(ダウン症候群)がないか心配なときは、出生前診断を受けることをおすすめします。
21トリソミー(ダウン症候群)の検査はいつ受けるのが良いか
21トリソミー(ダウン症候群)の検査はできるだけ早めに受けるのがおすすめです。早めに受ければ、検査結果が分かった後にご家族で話し合う時間を十分にとることができます。中絶を選ぶ場合の処置も早い方が母体への負担も少なくなります。
検査を受けようと思う方は、なるべく早い時期に受けるようにしましょう。
エコーで21トリソミー(ダウン症候群)が分かる場合もあります
妊娠中に行うエコー検査(超音波検査)で21トリソミー(ダウン症候群)の胎児の特徴を発見できる場合があります。21トリソミー(ダウン症候群)の胎児は血流が悪いため、首の後ろにむくみが出ることが多いためです。このむくみをNT(Nuchal Translucency)といい、通常妊娠11週から13週に計測することができます。
首の後ろのむくみ以外にも特有の特徴があります。
顔に見られる特徴の一つは鼻です。鼻の骨がない、鼻の骨が薄い、鼻の骨の成長に遅れがあるなどの特徴が見られます。
また、体の特徴では、手足の長さが基準より短い、心臓の病気がある(三尖弁逆流・静脈管逆流)、頭が大きいなどの所見があると、21トリソミー(ダウン症候群)の胎児である可能性があります。
顔や体の特徴を細かく見ていく必要があるので、通常の妊婦検診で用いられる2Dエコーよりも、4Dエコーの方が、発見しやすいと言えます。心配な場合は、4Dエコーが見られる産院でみてもらうと良いでしょう。
エコーで21トリソミー(ダウン症候群)が分かる確率
エコーによって、21トリソミー(ダウン症候群)の特徴を発見できることは多いですが、胎児の位置などによっては明確にわからないこともあります。また、所見があっても21トリソミー(ダウン症候群)によるものではないこともあります。そのため、どのくらいの確率で21トリソミー(ダウン症候群)がわかるとは定義することはできません。
エコーで21トリソミー(ダウン症候群)が分かる時期はいつ(何週目)?
エコーで21トリソミー(ダウン症候群)の所見が観察できるようになるのは、おおむね妊娠11週以降です。
しかし、エコーは確定的診断方法ではないため、受けていても妊娠中に21トリソミー(ダウン症候群)だと指摘されない、わからなかったという場合もあります。
心配な場合は、NIPT(新型出生前診断)を受けておくことをおすすめします。
21トリソミー(ダウン症候群)の寿命
日本での2014年~2016年の死亡票による調査では、21トリソミー(ダウン症候群)の方の72%が40歳以上での死亡でした。
先天性心疾患や先天性消化器疾患等の合併症治療の成績が向上し、この20~30年で飛躍的に平均寿命が伸び、現在>21トリソミー(ダウン症候群)のある方の平均寿命は約60歳と言われています。
施設や作業所での軽作業のほか、飲食店や小売業などさまざまな分野で多くの21トリソミー(ダウン症候群)の方が働いています。画家や演奏家を目指したり、プロの書道家、ダンサー、俳優として活躍している人もいます。
21トリソミー(ダウン症候群)のある方がどのように豊かな人生を送るかが重要となっているのです。
検査で21トリソミー(ダウン症候群)の疑いが出たら
NIPT(新型出生前診断)、コンバインド検査、母体血清マーカー検査などの非確定検査で21トリソミー(ダウン症候群)の疑いが出たら、絨毛検査や羊水検査などの確定検査の受診を検討しましょう。
確定検査では21トリソミー(ダウン症候群)の有無を確実に診断することができます。診断結果が出たらどうするかは、事前に家族で話し合うようにしておきましょう。
21トリソミー(ダウン症候群)の新生児の特徴とは
21トリソミー(ダウン症候群)の確定診断である絨毛検査や羊水検査を受けなかった場合、出産後に気になることも多くあると思います。21トリソミー(ダウン症候群)の新生児には、頭が小さい、鼻が小さい、目じりが上がっているなどの特徴がみられます。これらの特徴がみられるなど、心配な場合はすぐに主治医に相談するようにしましょう。
まとめ
21トリソミー(ダウン症候群)について、原因や検査、特徴などを説明いたしました。妊娠中は誰しもおなかの赤ちゃんのことが不安になったり、心配になったりするものです。そういったときは、出生前診断を受けるという選択肢があります。
その中でも、NIPT(新型出生前診断)は早い時期から検査することができ感度も高く、採血で行うためリスクもほとんどありません。検討されてみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
- 日本ダウン症協会 – ダウン症のあるお子さんを授かったご家族へ
- 植田紀美子(関西大学 人間健康学部) – 21トリソミーがある方のくらし
- 齊藤英和(国立成育医療研究センター) – 生殖補助医療の現状からみた特定不妊治療助成のあり方
記事の監修者
岡 博史先生
NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業