出生前診断では、染色体異常や遺伝子疾患、胎児の構造的異常などが検査でわかりますが、完全な健康状態の保証やすべての遺伝子疾患は確認できません。検査の選択は医師と相談し、結果の受け止め方や倫理的側面も考慮することが大切です。
この記事のまとめ
出生前診断は、胎児の健康状態や遺伝的な疾患のリスクを評価するために行われる検査です。具体的に「わかること」「わからないこと」について説明します。
出生前診断でわかること
1.染色体異常
・ダウン症候群(21トリソミー)やエドワーズ症候群(18トリソミー)、パトウ症候群(13トリソミー)などの主要な染色体異常。
・性染色体異常(例: ターナー症候群、クラインフェルター症候群)。
・検査方法: 母体血清マーカー検査、非侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)、羊水検査、絨毛検査など。
2.遺伝子疾患
・特定の単一遺伝子疾患(例: サイコロ細胞貧血、嚢胞性線維症)。
・検査には両親の遺伝情報が必要な場合があります。
・主に羊水検査や絨毛検査で検出。
3.構造的異常
・超音波検査で胎児の身体的異常(例: 口唇裂、心臓の構造異常、脊椎の異常など)。
・中枢神経系や内臓器官の発育状況。
4.胎児の性別
・NIPTや羊水検査、超音波検査で確認可能。
5.妊娠の進行状況
・超音波検査で胎児の発育状況、羊水量、胎盤の位置、子宮の状態など。
出生前診断でわからないこと
1.完全な健康状態の保証
・胎児の健康状態をすべて確認することは不可能。
・検査でわかるのは主に遺伝的・構造的異常であり、出生後の発育障害や慢性疾患は特定できない。
2.環境要因や後天的な影響
・妊娠中や出生後に起こりうる問題(例: 感染症、出産時のトラブル、生活環境の影響)は検査では判断できない。
3.すべての遺伝子疾患
・検査は特定の疾患に焦点を当てて行われるため、全遺伝子異常を網羅的に調べることはできない。
・現時点で知られていない遺伝子異常は特定できない。
4.病気の重症度
・検査で異常が検出された場合でも、その症状の重さや発症時期は正確に予測できないことが多い。
5.検査結果の確実性
・一部の検査は確定診断ではなく、異常の可能性を示唆するもの(例: NIPT、母体血清マーカー検査)。
・結果には偽陽性や偽陰性のリスクが伴う。
注意点
1.検査の選択と目的
・検査にはいくつかの種類(超音波検査、NIPT、羊水検査、絨毛検査など)があり、それぞれ得られる情報とリスクが異なる。
・必要に応じて医師や遺伝カウンセラーと相談し、検査の目的を明確にする。
2.結果の確定性
・スクリーニング検査(NIPTなど):異常の可能性を高精度で示すが確定診断ではない。
・確定診断(羊水検査、絨毛検査など):結果は確定的だが流産のリスクがわずかにある。
3.検査結果の受け止め方
・陽性結果の場合、胎児に異常が確定ではない場合もある。追加検査で確定する必要がある。
・結果によっては難しい選択(出産の継続や中断)が求められるため、精神的な負担が生じる可能性がある。
4.倫理的・社会的な側面
・出生前診断の結果を元に選択的中絶を決断する場合、倫理的・宗教的な価値観や社会的な影響を考慮する必要がある。
5.情報の管理
・検査で得られた情報(性別や遺伝情報)は慎重に取り扱い、家族間や社会的なトラブルを防ぐ。
代表的な検査と特徴
検査名 | 内容 | 得られる情報 | リスク |
---|---|---|---|
超音波検査 | 胎児の形態異常を視覚的に確認する | 身体の異常、成長の遅れ | なし |
NIPT(非侵襲的出生前検査) | 母体血液中の胎児DNAを分析 | 染色体異常の可能性(スクリーニング) | なし |
羊水検査 | 羊水中の胎児細胞を採取して分析 | 染色体異常、遺伝子疾患(確定診断) | 流産のリスク(0.1~0.3%程度) |
絨毛検査 | 胎盤の絨毛細胞を採取して分析 | 染色体異常、遺伝子疾患(確定診断) | 流産のリスク(1%程度) |
出生前診断は、慎重に検討し、医療専門家と相談しながら行うことが重要です。また、結果が家族にとってどのような意味を持つのかを理解し、支援を受けながら対応することが大切です。