妊娠中毒症と妊娠高血圧症候群の違いについて【医師監修】

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妊娠中毒症は研究が進み定義が変更され、現在では妊娠高血圧症候群と呼ばれています。自覚症状が少ないものの、悪化した場合は死産につながる恐れがある危険な病態です。約20人に1人の割合で起こり、比較的頻度が高いため注意が必要とされています。

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この記事のまとめ

妊娠中毒症とは「高血圧」「蛋白尿(たんぱくにょう)」「むくみ」のいずれかの症状が認められたことを定義とし胎児が原因と考えられていました。ですが研究が進むにつれこの原因は胎児由来ではなく、血管内皮のの障害による血管の異常収縮と、血小板減少による血液凝固に関連していることが明らかとなりました。これらのことから妊娠中毒症の原因は高血圧が主体であるとされ、名称が「妊娠高血圧症候群」と変更されたのです。

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妊娠中毒症とは

これまで妊娠中毒症とは「高血圧」「蛋白尿(たんぱくにょう)」「むくみ(浮腫)」のいずれかの症状が認められたことを定義とされていました。これらの症状は妊娠が終了すると軽快することから、胎児および胎盤が原因と考えられていましたが、研究が進み妊娠中毒症の定義は変更され、現在では妊娠高血圧症候群と呼ばれています。

妊娠高血圧症候群という名称に改められてからは、症状の中で高血圧が重要視されるようになり、それに伴い定義も変更されました。むくみや蛋白尿がみられても血圧が高くない場合は、妊娠高血圧症候群にあたらないとされています。

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妊娠中毒症から妊娠高血圧症候群への名称・診断基準変更のいきさつ

1986年、日本産科婦人科学会では妊娠中毒症を「妊娠に高血圧・蛋白尿・ 浮腫の 1 つもしくは 2 つ以上の症状がみられ、かつこれらの症状が単なる妊娠偶発合併症によるものではないもので、妊娠20週以降から産褥6週以内に発症したもの」と定義していました。

これまで妊娠中毒症に認められた高血圧・蛋白尿・むくみの三大症状は、妊娠終了とともに軽快することから、妊娠中毒症の原因は胎児や胎盤に由来する毒性物質が疾患を引き起こすと考えられていました。

しかし医療の発展と研究が進むにつれ、これらの症状を引き起こす原因は胎児由来ではなく、血管内皮(血管の最も内側にある細胞)の障害による血管の異常収縮と、血小板減少による血液凝固に関連していることが明らかとなりました。

これらのことから妊娠中毒症の原因は胎児由来ではなく、高血圧が主体であるとされ、名称が「妊娠高血圧症候群」と変更されたのです。

以降、さらに高血圧症状の細分類がなされました。妊娠前(もしくは妊娠20週まで)に高血圧を認める場合を「高血圧合併妊娠」、妊娠20週までに高血圧のみの発症を「妊娠高血圧症候群」高血圧・蛋白尿を認めると「妊娠高血圧腎症」に分けられます。

なお2018年より、蛋白尿を認めない場合も肝機能や腎機能障害、神経障害・血液凝固障害・胎盤機能不全・胎児発育不全なども妊娠高血圧腎症に分類されています。

「むくみ」は妊娠高血圧症候群の症状ではない

妊娠高血圧症候群以前、妊娠中毒症と呼ばれていた頃の三大症状のひとつに「むくみ(浮腫)」の症状がありました。しかし、むくみは約3割以上の妊婦さんに認められる症状となります。また母体にむくみ症状が現われても多くの場合、胎児への影響はないとされ、むくみは妊娠高血圧症候群の診断基準から除外となりました。

妊娠中毒症と妊娠高血圧症候群の違い

妊娠中毒症は胎児由来の毒性物質により高血圧・蛋白尿・むくみが引き起こされると言われていました。分娩・産後(妊娠終了)に伴い症状が軽快することから、妊娠中毒症と呼ばれていましたが、現在では高血圧が主体であることが判明。

妊娠高血圧症候群の名称と診断基準が、以下の通りに変更となりました。

  • 蛋白尿やむくみを認められるものの、高血圧でない場合は妊娠高血圧症候群とされない
  • 妊娠20週以降に血圧上昇し、分娩後に血圧が正常値となる場合は妊娠高血圧症候群とする
    • 軽症:収縮期血圧(最高血圧)140mmHg以上/拡張期血圧(最低血圧)90mmHg以上
    • 重症:収縮期血圧(最高血圧)160mmHg以上/拡張期血圧(最低血圧)110mmHg以上
  • 高血圧と蛋白尿が認められる場合は、妊娠高血圧腎症に分類される

妊娠高血圧症候群・赤ちゃんへの影響は?

妊娠高血圧症候群になると、血流が悪くなります。そのため、胎児に栄養や酸素が十分量いきわたらず妊娠高血圧症候群になると血流が悪くなります。そのため、胎児に栄養や酸素が十分量いきわたらず胎児発育不全が起こることがあります。早産や死産、低出生体重児(体重2500g未満)などにつながる恐れがあるため注意が必要です。

妊娠高血圧症候群のリスクが高い妊婦さんの特徴

妊娠以前より高血圧や糖尿病、肝臓・腎臓に持病がある妊婦さんは妊娠高血圧症候群のリスクが高まるとされています。また肥満や高齢・多胎妊娠(双子など)・初産婦のほか、血縁者の中に高血圧や糖尿病を認められる方がいる場合もリスクが上がる恐れがあります。

妊娠高血圧症候群の原因

妊娠高血圧症候群の研究が進み、おもな原因は血管内皮障害による血管の異常収縮と、血液凝固に関連していることが明らかとなりました。しかし妊娠高血圧腎症の病態については低酸素状態や胎盤虚血が関連するとされていますが、全ての原因は未だ解明されていません。

※胎盤虚血:胎盤に必要な量の血液が流入しないこと

妊娠高血圧症候群の妊婦さん

妊娠高血圧症候群の重症化とその症状

妊娠高血圧症候群は自覚症状が少ないとされています。しかし、重篤な合併症を招く恐れもあるため、注意が必要です。

子癇発作

妊娠高血圧症候群が重症化すると頭痛や目がチカチカする、手がしびれるといった症状を生じることがあります。これは子癇(しかん)と呼ばれる、けいれん発作の前兆とされ、子癇が治まらない場合は意識障害や脳出血を引き起こすなど、母子ともに命の危険につながることも少なくありません。

妊娠高血圧症候群と診断され、頭痛などの症状がある際は早めに受診をすることが大切です。

HELLP症候群

HELLP症候群は血液中の血小板減少に伴い、肝臓機能の障害によって引き起こるとされています。おもな症状として、腹痛(胃痛)や吐き気・嘔吐が挙げられます。進行すると多臓器不全の原因ともなり、母子ともに命の危険につながる恐れもあります。

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妊娠高血圧症候群と診断されたら

妊娠高血圧症候群と診断されると、軽症であれば外来となるケースがほとんどです。医師より自宅療養の指導があり、定期的な診察を行うなどの経過観察となるでしょう。

しかし妊娠高血圧症候群は突然重症化することもあるため、軽症であったとしても医師の判断により入院となる場合もあります。

妊娠高血圧症候群の治療法

妊娠高血圧症候群の根本的な治療法は確立していません。生活習慣の見直しや安静にすることが大切とされています。重症の妊娠高血圧症候群の場合、けいれん予防や高血圧改善の薬が処方されることがあります。

なお妊娠高血圧症候群が重症となり、母子ともにリスクが高いと判断された場合は妊娠継続を終了し、早期の分娩誘発や帝王切開が行われます。

妊娠高血圧症候群の治療法

妊娠高血圧症候群の治療費について

妊娠は病気ではないため、健康保険の適用はありません。しかし、妊娠高血圧症候群は病気として分類されるため、健康保険が適用されます。また、各自治体によって医療費の助成を行なっていることもあるため、事前に確認することが大切です。

例えば東京都では

  • 前年の所得税額が30,000円以下の世帯

もしくは

  • 入院見込み期間が26日以上(退院後の申請の場合は実際の入院期間が26日以上)の場合

に助成が受けられます。

自治体によって助成の有無や内容は異なります。妊娠高血圧症候群の診断を受けた際は早めに確認を行ないましょう。

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妊娠高血圧症候群を予防するために大切なこと

妊娠高血圧症候群の詳細な原因は、未だに解明されていません。そのため予防法としては高血圧にならないための食生活や体重管理、妊婦健診が大切とされています。

塩分を控えた食生活を

塩分の摂りすぎは血圧が上がる原因となるため、塩分を控えることが大切です。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では食塩摂取の目標量は成人女性で1日6.5g未満となっています。食生活を見直し、栄養バランスを整えることで血圧を保つよう注意しましょう。

体重管理に気を付ける

肥満や急激な体重増加は妊娠高血圧症候群につながる恐れがあります。健やかな妊娠・出産のためにも妊娠以前より体重管理に気を付け、妊娠中も栄養バランスの良い食生活を送りましょう。

妊婦検診を必ず受ける

妊娠高血圧症候群は自覚症状が少ないとされています。妊婦健診で初めて分かることもあるため、予定通りに受けるよう心がけましょう。

また、妊娠高血圧症候群は重篤な合併症を招き、母子ともに命の危険につながるケースもあります。食事など生活習慣を見直し、血圧を安定させることが何より大切です。

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まとめ

妊娠高血圧症候群は未だ、治療法が確立されていない病気です。自覚症状は少ないものの、重症化した場合は母子ともに高リスクとなることから、妊婦健診をしっかり受け、妊娠以前より肥満・高血圧を招く食生活を見直しましょう。

妊婦健診は妊娠高血圧症候群の早期発見など、健やかな妊娠期間や出産のために大切な検査です。一方、妊婦健診で行われるエコー検査(超音波検査)などでは、胎児の染色体異常による先天性疾患を調べることは難しいとされています。

ヒロクリニックNIPTでは、エコー検査で妊娠を確認できた方にNIPT(新型出生前診断)を行なっております。NIPT(新型出生前診断)とは、母体血の採取のみで胎児の染色体異常症による先天性疾患リスク判定を行うことが可能な検査です。

ヒロクリニックNIPTは、NIPT(新型出生前診断)に精通した医師やスタッフが多数在籍しております。染色体異常症やNIPT(新型出生前診断)について分からないことがありましたら何でもご相談ください。

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【参考文献】

妊娠中毒症は研究が進み定義が変更され、現在では妊娠高血圧症候群と呼ばれています。自覚症状が少ないものの、悪化した場合は死産につながる恐れがある危険な病態です。約20人に1人の割合で起こり、比較的頻度が高いため注意が必要とされています。

NIPT(新型出生前診断)について詳しく見る

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記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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