先天性疾患の家族への助成金。政府の対応とは?【医師監修】

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みなさんは、難病や慢性疾患などの「医療費助成制度」が改正されたことをご存じでしょうか?これによって、今まで助成対象外だった人が医療費助成を受けられるようになりました。そこで今回は先天性疾患の助成制度について詳しく解説していきます。

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助成対象が拡大した

2015年1月から、「難病対策及び小児慢性特定疾病対策」が施行され、難病や子供の慢性疾患に対する医療費助成制度が改正されました。「難病」「小児慢性特定疾病」の対象が拡大され、今まで対象外だった人も助成を受けられるようになったのです。

子どもの慢性疾患は治療期間が長く、医療費負担が高額となるケースがあります。しかし、対象枠が拡大されたことで、それら負担を軽減できるのです。厚生労働省は、「難病医療費助成は、治療研究を推進する目的と福祉的な目的を併せ持つものとして、 広く国民の理解を得られる公平かつ安定的な仕組みを構築する。」と述べており、小児慢性特定疾病の医療費助成制度の整備を図るため制度改正を行いました。

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「難病」について知る

制度改正の対象となった「難病」。そもそも難病とは、一体どんなものでしょうか?難病は、医学的な定義はありませんが、一般的には治療が難しく、慢性の経過をたどる疾病のことです。しかし完治はしないものの、適切な治療や自己管理を続ければ、普通に生活ができる状態になる疾患もあります。したがって、医療費助成などがあれば、仮に難病を持っていても、普通の生活をしながら治療に臨めるのです。

難病とは

「指定難病」って何?

では、医療費助成の対象となった「指定難病」とは、どんな病気を指すのでしょうか?そもそも指定難病は、厚生科学審議会が審議を行い、厚生労働大臣が指定したものを指します。以下のような要件を満たすものがそれにあたります。

  • 発病のメカニズムがわかっていない
    →原因不明、病態の解明が未だ不十分等。
  • 治療方法が確立していない
    →治療方法が全くない、または対症療法しかない等。
  • 治療に時間がかかる
    疾病に起因する症状が長期にわたって継続する場合。     
  • 患者数が少ない
    日本国内人口の0.1%に達しない場合                                            
  • 診断に関し、一定の基準がある
    抗体検査、画像検査、遺伝子解析検査、生理学的検査、病理検査などの結果、または理学的所見を含めた指標がある
    →関連学会による承認を受けた基準がある

法施行前の対象疾病数は56疾病でしたが、法施行後は331疾病の対象となりました。また対象者も法施行前では56疾病中12疾病についてのみ重症度基準が導入されており、当該基準を満たす者を対象としていましたが、法施行後は全ての疾病について重症度基準が導入されており、当該基準を満たす者が対象となりました。

「小児慢性特定疾病」について知る

もう一つ制度改正の対象となったのが「小児慢性特定疾病」。「小児慢性特定疾病」とは、どんな病気なのでしょうか?小児慢性特定疾病とは、18歳未満の子どもの病気のうち、以下の4つの項目を満たしている病気のことを指します。

  • 慢性に経過する疾病であること
  • 生命を長期に脅かす疾病であること
  • 症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾病であること
  • 長期にわたって高額な医療費負担が継続する疾病であること(平成27年1月1日以降)

対象年齢は? 

対象年齢は、「18歳未満の児童」です。しかし、18歳を過ぎても治療が長引くと判断された場合には、20歳未満であれば対象となります。

対象疾病の種類は?

では、対象となる疾病の種類はどんなものがあるのでしょうか?以下、列挙します。

  • 悪性新生物
  • 慢性腎疾患
  • 慢性呼吸器疾患  
  • 慢性心疾患
  • 内分泌疾患  
  • 膠原病    
  • 糖尿病   
  • 先天性代謝異常
  • 血液疾患   
  • 免疫疾患   
  • 神経・筋疾患
  • 慢性消化器疾患  
  • 染色体または遺伝子に変化を伴う症候群
  • 皮膚疾患 
  • 骨系統疾患  
  • 脈管系疾患         

法施行前の対象疾病数は514疾病でしたが、法施行後の対象疾病数は756疾病となりました。対象者に関しては、法施行前と法施行後も変わらず、「全ての疾病について、医療費助成の対象となる疾病の状態の程度が設定されており、当該程度を満たす者を対象」と定められています。もし、今まで対象外で支給認定が受けられなかった人は、一度確認することをおすすめします。       

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医療費助成の認定を受ける方法

1.「難病」の医療費助成の認定を受けるには?

では、難病の医療費助成を受けるには、どんな手続きをすればいいのでしょうか?それが以下のステップになります。

  1. 難病指定医のいる病院を受診し、診断書をもらう。
  2. 都道府県・指定都市の窓口で、診断書と※必要書類を提出し、医療費助成の申請をする。
  3. 都道府県・指定都市の審査を待つ。
  4. 認定された場合、都道府県・指定都市から医療受給者証が申請者に交付される。
  5. 指定医療機関を受診し、治療を受ける。

※【2】の必要書類

  • 特定医療費支給認定申請書
  • 診断書
  • 住民票
  • 市町村民税(非)課税証明書などの課税状況を確認できる書類
  • 健康保険証の写し

なお、必要書類は自治体によって異なる場合がありますので、お住まいの保健福祉担当課や保健所などで一度確認してみるのがおすすめです。ちなみに「医療受給者証」には有効期間があります。申請日から1年以内で都道府県・指定都市が定める期間です。1年ごとに更新の申請が必要になってきます。また、自己負担額については、法施行前と比べて3割から2割に引き下げられています。

2.「小児慢性特定疾病」の医療費助成の認定を受けるには?

では、小児慢性特定疾病の医療費助成を受けるには、どんな手続きをすればいいのでしょうか?以下のステップになります。

  1. 小児慢性特定疾病指定医がいる病院を受診し、診断書をもらう。
  2. 保護者が都道府県等の窓口に、診断書と※必要書類を提出し、医療費助成の申請をする。
  3. 都道府県(または指定都市・中核市)の審査を待つ。
  4. 認定された場合、都道府県等から医療受給者証が保護者に交付される。
  5. 指定医療機関を受診、治療を受ける。

※【2】の必要書類

  • 小児慢性特定疾病医療費支給認定申請書
  • 小児慢性特定疾病医療意見書
  • 住民票
  • 市町村民税(非)課税証明書などの課税状況を確認できる書類
  • 健康保険証の写し
  • 医療意見書の研究利用についての同意書

なお、必要書類が自治体によって異なる場合があるので、お住まいの保健福祉担当課や保健所などで、一度確認することをおすすめします。

こちらも「医療受給者証」の有効期間があり、申請日から1年以内で都道府県等の定める期間です。1年ごとに更新の申請が必要になってきます。自己負担額については、世帯の所得に応じて、一部自己負担があります。しかし、法施行前と比べて自己負担額の割合が、3割から2割へと引き下げられています。

医療費助成

「NIPT(新型出生前診断)」で早めに知っておきましょう

助成対象が拡大された、「難病」「小児慢性特定疾病」ですが、早期に発見して対処することに越したことはありません。そこでお勧めなのが、「NIPT(新型出生前診断)」です。「NIPT(新型出生前診断)」とは、母体から採血された血液の中に含まれる胎児由来のDNAの量を推定することにより、胎児の21トリソミー(ダウン症候群)18トリソミー(エドワーズ症候群)13トリソミー(パトウ症候群)などの染色体の異常を調べることができる非確定的検査のことです。先天性疾患をいち早く発見でき、精度が高く、母体に負担の少ない検査と言われ、お母さんの血液10ml(小さじ2杯程度)を採取するだけで検査できるため、母体にも胎児にもリスクが無く安心して検査をすることができます。妊娠6週以降であれば検査可能なので、もし今、迷っているのであれば、電話だけでもしてみるとよいかもしれません。

非侵襲的出生前診断
新型出生前診断(NIPT)とは、「お母さんから採血した血液から胎児の、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、1...

まとめ

先天性疾患の家族への助成金についてまとめました。難病、小児慢性特定疾病問わず、先天性疾患は、長期に渡って治療を必要とするものです。支給までには、申請や審査があるので、多くの時間を必要とします。したがって、なるべく早く支給認定を受けるのが得策でしょう。「NIPT(新型出生前診断)で検査する」といった早め早めの行動が、首尾よい結果となるのです。

【参考文献】

みなさんは、難病や慢性疾患などの「医療費助成制度」が改正されたことをご存じでしょうか?これによって、今まで助成対象外だった人が医療費助成を受けられるようになりました。そこで今回は先天性疾患の助成制度について詳しく解説していきます。

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記事の監修者


伊藤 雅彦先生

伊藤 雅彦先生

元医療国際福祉大学教授、前医療創生大学柏リハビリ学院長、日本遺伝子診療学会・日本遺伝子学会会員、他

略歴

1974年防衛医大入学
1979年、豪州シドニー大学医学部小児科(ロイヤルアレクサンドリア小児病院)にエクスターン留学
1980年防衛医大卒業(第1期生)。防衛医大小児科学教室に入局
防衛医大病院、自衛隊中央病院、北海道立小児総合保健センター新生児科、国家公務員共済組合連合会三宿病院小児科で勤務
1989年米国ハーバード大学医学部リサーチフェロー、米国タフツ大学医学部クリニカルフェロー
1993年埼玉医科大学短期大学小児科学講師
1994年埼玉医科大学小児科学講師
1997年国際医療福祉大学小児科学助教授、山王病院小児科勤務
2006年国際医療福祉大学特任教授(小児科学)
2008年イーハトーブ病院(岩手労災病院)名誉院長
2009年医療法人社団心の絆・蓮田よつば病院理事長
2010年医療法人銀美会銀座美容外科クリニック理事長
2011年医療法人社団鶴癒会新川病院院長
2011年学校法人医療創生大学千葉・柏リハビリテーション学院長
2014年医療法人葵会新潟中央透析クリニック院長
2016年医療法人葵会新潟聖籠病院副院長
2017年医療法人福聚会東葛飾病院院長
2018年医療法人葵会AOI国際病院国際部長

資格

医学博士、介護支援専門員(ケアマネジャー)登録、日本アレルギー学会認定医、日本医師会認定産業医、日本小児科学会認定医、日本レーザー医学会専門医試験合格、日本小児アレルギー学会評議員、日本小児心身医学会評議員、日米医学医療交流財団評議員、日本インターネット医療協議会評議員、日本コンピュータサイエンス学会理事、ナイチンゲールスピリット連盟理事長、NPO防衛衛生キャリアネット理事長、法務省黒羽刑務所医務部顧問などを歴任あるいは活動中
1998年9月、第10回日本コンピュータサイエンス学会学術集会を神奈川県横浜市パシフィコ横浜で会頭として主催
2011年5月から6月にかけて、宮城県気仙沼市立本吉病院にボランティア診療支援

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