妊娠初期はもちろん出産を目前に控え、待望の赤ちゃんと会える喜びと同時に、不安を感じる妊婦さんも多いことでしょう。この記事では出産の「おしるし」や、破水・陣痛などの兆候と、それらの対策についてを医師が説明いたします。
この記事のまとめ
おしるしとは医学用語では産徴と呼ばれ、出産の開始前に見られる血性のおりもの状の粘液のことです。破水は羊水と胎児を包む膜が破れ、膣から羊水が流れ出ることを呼びます。通常は陣痛前に破水が起こりますが、前期破水といい陣痛が始まる前に破水することもあります。陣痛は赤ちゃんを母体から押し出すために、子宮が収縮することで起こります。子宮の収縮が規則的に1時間に6回以上になると陣痛と認められ、出産へと進みます。
はじめに
妊娠が確定した日から喜びと同時に、赤ちゃんを無事に出産できるかどうか、不安な日々を過ごす妊婦さんがほとんどでしょう。とくに初めての妊娠であれば、妊娠初期から出産の兆候、陣痛や破水についてを書籍やインターネットなどで調べる方が多くいらっしゃいます。
出産を迎える前には一般的に「おしるし」と呼ばれる出産サインや、破水・陣痛が起こります。「おしるし」「破水」「陣痛」が起こる順番や、それぞれの特徴と対策を事前に知ることで出産に向けて心の準備ができるでしょう。
出産前の妊婦に起こること
出産前の妊婦さんに起こることは、おもに「おしるし」「破水」「陣痛」が挙げられます。
これらの出産サインや、起こるタイミングの有無や順番には個人差があります。しかし、一般的な特徴や、対策・処置を事前に知ることで突然の出産サインにも落ち着いた行動をとり、出産に臨むことができるでしょう。
「おしるし」とは
おしるしとは医学用語では産徴(さんちょう)と呼ばれ、出産の開始前に見られる血性のおりもの状の粘液のことです。
出産が近づくと、子宮頸管が徐々に広がっていきます。その際、子宮壁から卵膜が剥がれ、少量の出血が起こり、これに粘液が混ざったものを一般的に「おしるし」と呼びます。
おしるしは全ての妊婦さんに起こるとは限りません。おしるしに気づかない、または、おしるしがない状態で出産に進むケースも見られます。
いずれも、おしるしが起こると、数日〜数週間以内の出産となることも少なくありません。おしるしが確認できた際は焦らず、出産や入院に向けての準備を行ないましょう。
おしるしの色や量
おしるしの色や量には個人差があり、色は粘液に血液が混じった薄い赤から茶褐色などさまざまです。量は下着に少量つく程度から、生理時のような量のおしるしとなることも少なくありません。
万が一、生理2日目以上の出血量や、粘性ではなく水のようなおしるしの場合は病院へ連絡をしましょう。
おしるしが来た時の対策
通常、おしるしが起こってもすぐに破水や陣痛に進むことはありません。出産までの時間はあるため、慌てることなく生理用ナプキンで手当を行ないましょう。また出産予定が近くなり、いつ、おしるしが起こるか分からない時期であれば、事前にナプキンを装着することで清潔を保つことができるでしょう。
おしるしの出血が多い・長く続く
おしるしの出血量が多い、もしくは出血が長く続く場合は、卵膜だけでなく胎盤が剥がれている可能性も考えられます。また、お腹が張る・強い痛みがある際は、すぐにかかりつけの病院へ相談して、診察を受けましょう。
破水とは
羊水と胎児を包む膜(卵膜)が破れ、膣から羊水が流れ出ることを破水と呼びます。なお、破水自体に痛みはないとされています。
通常は陣痛前に破水が起こりますが、前期破水といい陣痛が始まる前に破水することも少なくありません。陣痛前に破水が始まった際はすぐに、かかりつけの病院や助産師に連絡をして指示に従いましょう。
破水の量は個人差がある
破水は卵膜の破れた部位や、破れ方によって羊水の流出量が異なります。そのため、一度に大量の破水となるケースがある一方、チョロチョロと少しずつ羊水が流出することも少なくありません。
破水したらどうする?適切な処置とは
羊水を満たす卵膜が破れ、羊水が流出すると胎児の感染リスクが上昇します。通常、破水してしばらくすると陣痛が始まるため、お産用パッドや清潔なタオルなどで処置を行ない、すぐに病院へ連絡しましょう。
破水の際は徒歩での移動は避け、タクシーや車の手配をしましょう。なお入浴やシャワーは、細菌などの感染のおそれがあるため厳禁となります。
破水か尿漏れかわからないとき
臨月に入ると、子宮が膀胱を圧迫するため尿漏れに悩む妊婦さんも少なくありません。そのため破水か尿漏れかの判断がつかず、破水と気づくことが遅れてしまうケースがあります。
破水(羊水)と尿の違いはおもに「におい」です。羊水は無臭もしくは、やや生臭いにおいとされています。一方、尿の場合はアンモニア臭となります。慌てずに、トイレで確認してみましょう。
また破水の場合、尿のように自分の意思で止めることはできません。自分でコントロールできるかどうかも破水と尿漏れの判断基準となります。
前期破水と早期破水に注意
破水は通常、陣痛が始まる前後に起こります。陣痛前に起こる破水を「前期破水」といい、前期破水が起こったタイミングで病院へ向かう妊婦さんがほとんどでしょう。
一方、「早期破水」とは、陣痛開始から子宮口が全開大するまでに破水することです。
破水により、胎児を守る羊水が減少することで膣の常在菌や、菌の侵入により感染症を引き起こすことも少なくありません。また前期破水・早期破水ともにリスクがあるため、破水が起こった際はすぐに病院へ連絡、診察を受けることが大切です。
●前期破水によるリスク
- 胎児および母体(子宮)への感染症
- 胎向と胎位の異常
- 常位胎盤早期剥離
●早期前期破水によるリスク(早産となり未熟児での出産)
- 胎児および母体(子宮)への感染症
- 呼吸器障害
- 脳内出血(脳性麻痺)
- 死亡
陣痛とは
陣痛は赤ちゃんを母体から押し出すために、子宮が収縮することで起こります。子宮の収縮が規則的に1時間に6回以上(間隔が10分以内)になると陣痛と認められ、出産へと進みます。
陣痛かもしれないと思ったらどうする?
出産を間近に控えた妊婦さんが、お腹に痛みを感じた場合まず陣痛を疑い、どうするのかと悩むことでしょう。
陣痛には「前駆陣痛(ぜんくじんつう)」と呼ばれるものがあり、妊娠中期〜後期に始まることが多いとされています。陣痛は規則的に痛みが起こりますが、前駆陣痛の場合、お腹の張りや痛みの強弱が不規則に起こります。
前駆陣痛は1日に数回起こることもあり、また本格的な陣痛へと繋がる日数も個人差があります。いずれも妊婦さんによって異なるため痛みの間隔や強弱などを記録し、不安であればかかりつけの病院へ相談するとよいでしょう。
おしるし・破水・陣痛の順番
おしるし・陣痛・破水の順番には個人差があります。一般的には「おしるし→破水→陣痛」または「おしるし→陣痛→破水」という順で起きることが多いとされていますが、あくまでも目安です。
破水よりも先に陣痛が来た、おしるしがなく、いきなり破水や陣痛が始まったという場合もあります。おしるしや破水の量、陣痛の程度もかなりの個人差があるので、どのような順番で来ても対応できるように心構えをしておくと良いでしょう。
病院に行くタイミング
妊娠後期や臨月の場合、どのタイミングで病院に行けば良いかわからないと不安に思う妊婦さんも多いでしょう。
おしるし
おしるしが始まっただけであれば、病院へ行く必要はないでしょう。正常なおしるしであれば、すぐに破水や陣痛に進行することはありません。
破水
破水が起きた際はすぐに病院へいきましょう。羊水の流出は胎児の感染症や、常位胎盤早期剥離などのリスクが上昇します。
陣痛
痛みが不規則な前駆陣痛であれば緊急に病院へ向かう必要はないでしょう。規則的な痛みが始まると陣痛の可能性が高く、出産が近いため病院へ連絡し、指示を仰ぎましょう。
早めの準備で安心して出産を
妊娠後期には破水や突然の入院に備え、必要なものをあらかじめ用意しておくと良いでしょう。なお、病院によってはタオルなどの持ち込みを禁止する場合があるため、入院時に持参するものを事前に確認することが大切です。
用意するもの
出産前や出産時に必要なものは以下の4点がおもに挙げられます。
- タオル
- 大きめのシートやビニール袋
- 生理用ナプキンや大人用おむつ、お産用パッドなど
- 車やタクシーなどの移動手段
タオル
破水時などに突然、清潔なタオルが必要となる場合があります。また、入院の際にタオルの持ち込みが可能な病院であれば、さまざまな用途に使えるため、大小のサイズを余裕をもった枚数で用意しましょう。
大きめのシートやビニール袋
タクシーなどで病院へ向かう際、破水で車内を濡らしてしまうことも考えられます。大きめのシートやビニール袋などを身体の下に敷くことで、汚れを防ぐことができます。
生理用ナプキンや大人用おむつ・お産用パッド
おしるしや破水の際に生理用ナプキンや、大人用おむつが役立ちます。また、お産用パッドなどもあるため、事前に用意しておくと良いでしょう。
とくに破水は突然起こることもあるため、出産予定日が近づいたら吸収性の高いナプキンやパッドをあらかじめ装着しておくと安心です。
車やタクシーなどの移動手段
突然の破水や陣痛に備え、車やタクシーなど病院までの移動手段の確保を行ないましょう。破水や陣痛が起きた際、自身で運転することは難しいため、旦那さまやパートナー、ご家族などに運転を頼みましょう。
出産する病院が遠方であり、長距離の移動に不安がある場合は陣痛タクシー(マタニティタクシー)などを検討すると良いでしょう。陣痛タクシーとは、出産予定日や送迎先住所などを事前登録することで、迅速に出産する病院へ向かうことができるサービスです。タクシー会社によって予約方法や料金などが異なるため、あらかじめ調べておくことが大切です。
元気な赤ちゃんを迎えるために
妊娠や出産は喜びと同時に、さまざまな不安を抱える妊婦さんも多いことでしょう。また、赤ちゃんの性別や健康状態についてを一刻も早く知りたい気持ちは当然のことです。
NIPT(新型出生前診断)は、エコー検査で妊娠を確認後すぐに赤ちゃんの性別や先天性疾患リスクの有無を調べることが可能とされています。
赤ちゃんの染色体異常は、早産流産を引き起こす可能性も少なくありません。NIPT( 新型出生前診断)は、さまざまなリスクを事前に知り、健やかな妊娠期間を過ごすための検査ともいえるでしょう。
健やかな妊娠と出産のために行うNIPT(新型出生前診断)
NIPT(新型出生前診断)とは、お母さんから約10mlの採血を行うだけの検査です。羊水検査・絨毛検査と異なり、母体への穿刺や経膣による組織採取の必要はありません。
これらのことから、NIPT(新型出生前診断)は胎児へ直接的な侵襲(ダメージ)がないため、流産などのリスクは非常に少ないとされています。
NIPT(新型出生前診断)でわかること
NIPT(新型出生前診断)では、赤ちゃんの染色体異常リスクの可能性を知ることができます。
NIPT(新型出生前診断)は、染色体異常の中で最も多いとされるダウン症候群(21トリソミー)に関しては、感度・特異度ともに99.9%と高精度に検出を行うことが可能です。
また、NIPT(新型出生前診断)では、性染色体により赤ちゃんの性別の判定を行うこともできます。通常、性別はエコー検査により妊娠18〜20週から判定されますが、NIPT(新型出生前診断)ではエコー検査で妊娠を確認後すぐに判定が可能です。
NIPT(新型出生前診断)はいつまで受けられる?
NIPT(新型出生前診断)は、エコー検査で妊娠を確認後すぐに受けることができます。10週目以降でも検査を行うことは可能ですが、スクリーニング検査であるNIPT(新型出生前診断)の後、確定的検査(羊水検査)を検討する場合は、16週目までに行うのが望ましいとされています。
まとめ
出産前の兆候には、おしるし・破水・陣痛があります。これらは個人差があるため、おしるしの有無や破水・陣痛の時期や状態はさまざまです。しかし特徴や対処法を知り、事前に準備を行うことで安心して出産の日を迎えることができるでしょう。
またNIPT(新型出生前診断)により、お腹の赤ちゃんの健康リスクを早期に知ることも健やかな妊娠・出産を迎えるための事前準備のひとつと言えます。
NIPT(新型出生前診断)や、染色体異常による先天性疾患などについて疑問がある場合は、ヒロクリニックNIPTにご相談ください。経験豊富な医師とスタッフが丁寧にサポートいたします。
妊娠初期はもちろん出産を目前に控え、待望の赤ちゃんと会える喜びと同時に、不安を感じる妊婦さんも多いことでしょう。この記事では出産の「おしるし」や、破水・陣痛などの兆候と、それらの対策についてを医師が説明いたします。
記事の監修者
岡 博史先生
NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業