着床前診断(受精卵診断)と出生前診断の違いとメリットや問題点・費用について【医師監修】

着床前診断(受精卵診断)と出生前診断の違いとメリットや問題点・費用について 遺伝子 画像

着床前診断とは体外で人工的に受精させた受精卵(体外受精)の遺伝子を調べ、染色体異常の可能性が低い胚を選んで子宮に移植をおこなう医療行為のことです。この記事では医師監修のもと着床前診断についてと問題点、出生前診断との違いなどを解説いたします。

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この記事のまとめ

着床前診断は妊娠前(着床前)におこない、出生前診断は妊娠後(着床後)におこなう染色体検査となります。メリットとして遺伝性の疾患が遺伝する可能性の高い夫婦が健康的な妊娠・出産を迎えられる率が上がる、羊水検査や絨毛検査のような胎児への直接的な侵襲のリスクがないことが挙げられます。着床前診断は誰もが受けることができる検査ではないので、受けるためには日本産科婦人科学会への申請と承認が必要です。また費用は約50〜100万円と高額です。

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着床前診断(受精卵診断)とは

着床前診断とは、体外で人工的に受精させた受精卵の遺伝子検査をおこない、染色体異常の可能性が低い胚を選んで子宮に移植をおこなう医療行為のことです。出生前診断と間違えられることの多い検査ですが、着床前診断は妊娠前(着床前)におこない、出生前診断は妊娠後(着床後)におこなう染色体検査となります。

1990年に世界で初めての着床前診断による妊娠が報告され、日本では2004年に重篤な遺伝性疾患に対しての着床前診断が承認、実施されました。

2018年、着床前診断の臨床研究が終わり、着床前診断は医療行為として位置づけられ2022年には一部の不妊治療が保険適用となり、着床前診断も公的医療保険の適用範囲として導入が検討されています。

また出生前診断のひとつである、NIPT(新型出生前診断)についても、2021年3月厚生労働省によりNIPT(新型出生前診断)の在り方を検討する専門委員会が開かれました。国がNIPT(新型出生前診断)の実施施設や医療機関などの審査に関わるといった新たな認証制度の提案により、着床前診断とNIPT(新型出生前診断)を含めた出生前診断の実施施設は拡大されると見込まれています。

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着床前診断の目的と対象者

着床前診断の目的は不妊夫婦(カップル)の流産率の低下と妊娠継続率の向上です。ただし、すべての不妊夫婦(カップル)が着床前診断の対象ではありません。なお日本において着床前診断による男女の産み分けは禁止されています。

着床前診断は日本産科婦人科学会により、個別審査により対象者のみおこなうことができる医療行為となります。

  • 重篤な遺伝性疾患児を出産する可能性のある遺伝子変異ならびに染色体異常を保因する場合
  • 均衡型染色体構造異常に起因すると考えられる2回以上の習慣流産(反復流産を含む)

上記のいずれかの条件に該当し、夫婦の強い希望があり、夫婦間で合意が得られた場合でないと着床前診断は受けられません。また、着床前診断の対象となる重篤性とは「成人に達する以前に日常生活を著しく損なう状態が出現したり、生命の生存が危ぶまれる状況になる状態」が基準とされます。

しかし2021年、日本産科婦人科学会により重篤性の定義の変更案発表がなされました。

着床前診断の目的と対象者

これまでの着床前診断の「重篤性の定義」

成人に達する以前に日常生活を著しく損なう状態が出現したり、生命の生存が危ぶまれる状況になる状態」

これからの着床前診断の「重篤性の定義」修正案

「日常生活を強く損なう症状が出現したり、生存が危ぶまれる状況になる疾患で、現時点でそれを回避するために有効な治療法がないか、あるいは高度かつ侵襲度の高い治療を行う必要のある状態」(2021年2月時点)

これまでのように着床前診断実施の対象とする「成人までに」が削除されたことから今後、着床前診断実施の対象が広がることを意味するといえるでしょう。

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着床前診断のメリットとは

着床前診断のメリットはおもに以下の3つが挙げられます。

  • 遺伝性の疾患が遺伝する可能性の高い夫婦(カップル)が健康的な妊娠・出産を迎えられる率が向上する
  • 妊娠(着床前)におこなわれるため、母体の精神的・身体的な負担が軽減する傾向にある
  • 羊水検査や絨毛検査のような胎児への直接的な侵襲(ダメージ)リスクがない

胎児への遺伝性疾患の遺伝リスクを最小限に

着床前診断は着床前に胚の遺伝子検査をおこなうことで、遺伝性疾患を発症するリスクが低い胚を選択し子宮に移植する医療行為です。遺伝性疾患が胎児に遺伝する可能性の高い夫婦(カップル)が出産を諦めることなく、健康的な妊娠・出産を迎えられる確率を上げられることが着床前診断の最大のメリットといえるでしょう。

流産による母体の心身ダメージの軽減

2回流産が続くことを「反復流産」といい、3回以上の流産を「習慣流産」といいます。流産を繰り返してしまう場合、夫婦(カップル)のどちらかの染色体に原因があるとされ、有効な治療法は確立していません。また流産リスクは年齢とともに上昇し、そのおもな原因は胎児の染色体異常症にあります。

着床前診断は着床(妊娠)前に染色体異常とする胚の選別をおこなうため、染色体異常を原因とする流産リスクは減少するといえるでしょう。これらのことから、着床前診断は流産による母体の心身ダメージを軽減する傾向にあるといわれています。

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着床前診断の問題点

着床前診断は誰もが受けることができる検査ではありません。また、着床前診断の実施対象となった場合も、受ける前に知っておくべき問題点があります。

  • 日本産科婦人科学会に申請・承認が必要
  • 申請から承認まで約半年間を要する
  • 着床前診断で調べるのは特定の疾患のみであり診断は100%確実ではない

着床前診断には申請と承認が必要

臨床研究に基づく着床前診断の重要性と承認プロセス
着床前診断を受けるためには、日本産科婦人科学会への申請と承認が必要です。着床前診断は複数ある胚の中から、染色体異常のない胚を選び子宮へと移植をおこないます。異常のある胚は廃棄されるため、この選択が生命の選別や遺伝子的に優れているもののみを選ぶ、優生思想に繋がるのではと危惧する声も少なくありません。

これらのことから、着床前診断は日本産科婦人科学会が一例ずつ確認し、厳重に管理をおこなっているのです。また着床前診断は検査や複数回のカウンセリングなどがあるため、日本産科婦人科学会へ申請してから承認されるまでの目安は、約半年間かかるといわれています。

着床前診断は高度な医療技術と高い倫理観が求められる検査です。そのため着床前診断を実施できる機関は日本産科婦人科学会が認定した施設のみとなります。

着床前診断を受けるまでには、医療機関に相談してから期間がかかることを知っておきましょう。

着床前診断の結果は100%確実ではない

着床前診断は特定の重篤な遺伝性疾患を調べる検査です。そのため、対象とする疾患はなくとも、他の染色体異常症や先天的疾患もった胎児である可能性も少なくありません。また、着床前診断の診断結果も100%確実なものではないため、着床前診断により妊娠・出産を迎えたとしても、遺伝性疾患児が生まれる可能性があります。

着床前診断の問題点

着床前診断の流れ

着床前診断は、次の流れでおこなわれます。

  1. 一般検査
  2. 遺伝カウンセリング(複数回)
  3. 着床前診断①体外受精
  4. 着床前診断②遺伝学的検査
  5. 着床前診断③胚移植

1.一般検査

着床前診断をおこなっている日本産科婦人科学会認定の医療機関で、着床前診断の対象であるか問診や検査をおこないます。

2.遺伝カウンセリング

遺伝カウンセリングは、遺伝に関する不安や疑問などの対応や、科学的根拠に基づいた遺伝の情報などを提供するカウンセリングです。

着床前診断を実施する施設以外の第三者機関において、遺伝医療の専門家により複数回おこなわれます。遺伝カウンセリングはいわゆるセカンドオピニオンに該当するため、自費診療となり、施設ごとに費用が異なります。

※2018年より特定の遺伝子性疾患については遺伝学的検査は保険適用

3.着床前診断①体外受精

日本産科婦人科学会の承認を受けた後、着床前診断へ移行します。卵子と精子を採取し、体外受精をおこないます。体外受精の方法は2つあり、シャーレの中で採取した卵子に精子を振りかけ自然に受精させる体外受精と、顕微鏡で卵子を観察しながら精子を直接注入する顕微鏡受精があります。

4.着床前診断②遺伝学的検査

受精卵が細胞分裂した胚から細胞を取り出し、染色体や遺伝子の検査をおこないます。

5.着床前診断③胚移植

遺伝学的検査で染色体や遺伝子の異常が見つからず、異常がない可能性が高い胚を子宮へ移植します。

着床前診断は費用が高額

これまでの着床前診断はすべて自費治療となり、医療機関によって異なるものの約50〜100万円といわれています。自治体によっては助成金の利用が可能なケースもありますが、その負担は少なくありません。また、一度の着床前診断で望ましい結果となるとは限らず、再度、着床前診断が必要となる場合もあるでしょう。

しかし2018年、特定の遺伝性疾患に対しては遺伝学的検査に保険が適応となり、2022年の不妊治療の一部保険適用改正案の中に着床前診断が含まれることから、今後、着床前診断の費用が軽減されるかもしれません。

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着床前診断で調べることのできないリスクに備えてNIPT(新型出生前診断)

臨床研究に基づくリスク評価とNIPTの重要性
着床前診断で調べることができるのは特定の遺伝性疾患のみとされています。しかし染色体異常症や先天的疾患の種類と症状はさまざまです。これらのことから、着床前診断により妊娠成立となったとしても、その他の染色体異常を原因とする流産リスクは、決してゼロと言い切ることができません。

ヒロクリニックNIPTNIPT(新型出生前診断)は、全染色体異数性検査では1~22および性染色体すべての数の異常(異数性)を検査することができます。

ヒロクリニックNIPTは「お母さんとそのご家族が知る権利」を最も大切にするNIPT(新型出生前診断)施設です。妊婦さんの年齢やパートナー同伴などの規制はなく、誰もが妊娠10週0日より赤ちゃんの染色体異常症や先天的疾患リスクの可能性を検出することができます。

NIPT(新型出生前診断)は母体血液のみで検査をおこなうことができ、21トリソミー(ダウン症候群)であれば感度・特異度ともに99.9%と高精度な出生前診断といえるでしょう。

ヒロクリニックNIPTでは、1つの染色体異常症リスクを調べる単体検査から、すべての染色体を調べる全染色体異数性検査まで、さまざまなNIPT(新型出生前診断)プランをご用意しております。

着床前診断を希望するものの申請や承認が難しいお母さんや、赤ちゃんの染色体異常症や先天的疾患に不安のあるお母さんは、ぜひ一度ヒロクリニックNIPTNIPT(新型出生前診断)についてをご相談ください。NIPT(新型出生前診断)に精通し、経験豊富な医師が真摯にお答えいたします。
臨床研究に基づく最新情報とアフターサポートで、安心して検査を受けるお手伝いをさせていただきます。

(ヒロクリニックでは、お客様の同意を得た上で臨床研究データとして活用しております。)

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【参考文献】

着床前診断とは体外で人工的に受精させた受精卵(体外受精)の遺伝子を調べ、染色体異常の可能性が低い胚を選んで子宮に移植をおこなう医療行為のことです。この記事では医師監修のもと着床前診断についてと問題点、出生前診断との違いなどを解説いたします。

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記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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