フランスの出産事情(前編)~妊婦検診と出生前診断【医師監修】

フランスの出産事情(前編)~妊婦検診と出生前診断

先進国でも出生率の高いフランスでの出産事情をご紹介します。フランスの妊娠、出生前検査や出産の費用などのお金にまつわることについても触れています。

知っておくことでできる準備があります
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フランスの出産事情

先進国の少子化に歯止めが掛からないと言われていますが、今回は子どもを産みたいと思うための重要な要素の一つと言われている妊婦検診、出産費用についてフランスの状況を解説していきます。

フランスと日本の出生率

フランスの出生率は先進国の中でトップであり合計特殊出生率は日本の1.36%に比べフランスは1.84%(2020年)です。出生率トップの背景として、充実した社会保障や子ども手当の充実、産後の社会復帰のしやすさがあります。

妊娠に気づいたら…フランスと日本との違いは?

妊娠の兆候がみられたらフランスでも日本と同様、薬局などで購入できる簡易妊娠検査にて判定します。その後、陽性反応が出たら産婦人科医の予約を入れます。フランスの専門医は完全予約制なので予約してから受診まで多くの場合2週間程度待たなければなりません。

フランスの出産事情

フランスの妊婦検診

妊婦検診は問題ない妊婦に関しては月1回です。異常のある妊婦さんに関しては検診日が指定されます。

超音波検査は日本では検診の度に行われますが、フランスでは16週、26週、36週の3回が医療保険適応になっています。医師と施設を選べば自費にて毎月超音波検査を受けるという選択肢もあります。血糖検査などの採血、尿検査は毎月実施されます。

意外かもしれませんが、産婦人科の開業医では超音波機器を持っていない医師も半分程度あります。かかりつけ医制度のフランスでは日本とシステムが異なり、立派なクリニックや病院を持たずにマンションの一部屋やシェアオフィスを診察所にしている医師が多いためです。診療所では医師一人で診療のすべてを行い秘書さえいないこともよくあります。また医療分業制のため、超音波や採血検査は日本のように医師の診療所では行えず、医師から出された処方箋を持って近くの検査施設、採血検査施設へ出向き実施します。

フランスの出生前診断

フランスで主に行われている出生前検査です。

  • 母体血清マーカー
  • 超音波検査、胎児の頸部の厚さ測定(NT) 
  • クアトロテスト 
  • NIPT(新型出生前診断) 
  • 羊水検査
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母体血清マーカー

母体血清マーカーは採血でダウン症などの染色体異常を検査します。

超音波検査

超音波検査では胎児の大きさや羊水量、心疾患や奇形、胎児頸部の厚さ(NT)を調べます。胎児頸部の厚さを調べる理由として、厚みが強いと染色体異常のリスクがあると言われているためです。

クアトロテスト(クアトロ検査)

妊婦の年齢、母体血清マーカー、胎児の頸部の厚さ測定(NT)を組み合わせて胎児異常の確率を出す検査です。

NIPT(新型出生前診断) 

NIPT(新型出生前診断)も母体血清マーカー同様、採血検査で行う検査です。特徴としては胎児の染色体異常を感度96.5%、特異度99.9%という高い精度で行えます。

羊水検査

お腹に針を刺して羊水を採取します。採取した羊水を検査して染色体の異常を調べます。確定診断として使われます。

フランスの出産事情

フランスの分娩方法

全体の80%近くの妊婦さんが硬膜外麻酔による無痛分娩を選んでいます。自然分娩を選択した妊婦さんは水中分娩や自分の好きなスタイルで出産ができる施設もあるようです。麻酔科医の許可があれば自然分娩を選んでいても途中で無痛分娩に切り替えることもできます。

出産ですが、問題がない妊婦にはほぼすべて助産師が対応します。妊婦検診の外来も助産師が対応することが多く、妊婦さんによっては妊娠中、出産中に産婦人科医に合った回数は数えるほどということがあるようです。助産師は出産時に赤ちゃんを取り上げることはもちろんのこと、会陰部傷の縫合まで行います。またビタミン剤や痛みどめなどある種類の薬に限っては助産師が処方することができます。

フランスで出産時の入院は?

入院のタイミングは全く日本と同様に陣痛が10分から5分間隔の間に来院です。予定日を過ぎても陣痛が来なければ入院して陣痛促進のための処置を行います。入院期間は日本よりやや短く通常、初産婦は4泊5日、経産婦は2泊3日です。

フランスの多くの施設では生まれた瞬間からお母さんと赤ちゃんは一度も離れません。母子ともに産後2時間の観察時間を経ると、自室に戻り赤ちゃんとの生活が始まり、昼夜問わずの授乳が始まります。

施設によりますが、日本では母体の回復を目的に出産直後や夜間は赤ちゃんを新生児室に預け粉ミルクを与えるところが多いようです。しかしフランスでは健児に対しての新生児室はなく、どうしても子供をみれないという希望や、お母さんの健康状態が不安定でない限りは赤ちゃんを預かることはないようです。

フランスでの産後ケアは?

退院後は2回ほど赤ちゃんとお母さんを看るために助産師が自宅訪問する指示書がでます。助産師が自宅に訪れ赤ちゃんの健康状態、体重測定、お母さんの傷のチェック、母乳の状態、赤ちゃんの生活環境をチェックしに来ます。その後は保健所で赤ちゃんの体重測定、お母さんの悩み相談などに1週間に1度およそ1か月間通います。

産後1か月後には日本と同様、産婦人科医の診察があり、傷のチェック、家族計画の相談を行います。家族計画の相談では経口避妊薬の処方やIUD(子宮内避妊具)の挿入などの処置を受けられます。フランスでは経口避妊薬やIUDなどの避妊に対する処置も保険適応ですので多くの女性(およそ70%)が経口避妊薬やIUDなどで女性主体の避妊を行っています。

1か月検診では赤ちゃんは産婦人科医でなく小児科医の受診をします。日本では生まれたばかりの赤ちゃんから1か月までは産婦人科医が検診を行いますが、フランスでは生まれた直後から赤ちゃんは小児科医が診察することになっています。

もう一つ産後ケアの中に組み込まれていることは、助産師による骨盤底筋体操が100%保険適応で行われるということです。出産によってダメージを受けた骨盤底筋群のトレーニングのため、骨盤底筋体操が産後ケアの指示書で出ます。任意での受診ですが、尿漏れ改善目的や将来の尿漏れ防止、体型を整えることを目的に多くのお母さんが通っています。

フランスでの産後ケア

フランスで出産にかかる費用は?

フランスの医療保険制度は?

フランスは日本と同様に国民医療保険制度があります。日本では基本3割負担ですが、フランスでは治療によって負担率が異なります。また雇用主は社員に民間保険を支払う義務があり、多くの人が民間保険にも加入しています。加入している民間保険の種類によっては国民医療保険でカバーできなかったものを民間保険でカバーしてくれることがあります。

フランスで不妊治療、妊婦検診、出産にかかる費用は?

日本では不妊治療はやっと保険適応になりそうですが、妊娠、出産の費用は出産一時金が給付されるものの保険は適応外で検診、出産費用は家計の負担になることがあると思います。

フランスでは不妊治療は回数に限りがありますが保険が適応され、妊娠、出産の費用も保険適応されます。妊娠初期から妊娠5か月までは診療所で産婦人科医による妊婦検診で負担額が3割、その後妊娠6か月以降は出産予定の病院で検診となり、公立病院であればすべて無料になります。その後の入院費、無痛分娩費も公立では無料です。そして高所得者でなければ更に産後に出産一時金が給付されます。

フランスの出生前検査の費用は? 

  • 母体血清マーカー   ・・・・ 無料(医療保険適応)
  • 超音波検査    ・・・ およそ3000円(医療保険3割負担)
  • クアトロテスト    ・・・ 無料(医療保険適応)
  • NIPT(新型出生前診断)   ・・・無料(医療保険適応時)自費5万円(390€)
  • 羊水検査       ・・・無料(医療保険適応時)自費5万-11万(400-900€)

※2021年3月現在 1€=129円

おわりに

日本とフランスでの出産の違いには様々ありますが、どちらにもいい点があるように思います。

お母さんと赤ちゃんが安全で安心した妊娠期を過ごし出産に望むことは、どこの国においてもとても大切だと言えるでしょう。

先進国でも出生率の高いフランスでの出産事情をご紹介します。フランスの妊娠、出生前検査や出産の費用などのお金にまつわることについても触れています。

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記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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