遺伝子疾患の中で最も発症率の高いダウン症。50年ほど前まではダウン症の平均寿命は10歳といわれていましたが、医療の発展により現在では平均寿命は約60歳と大幅に延びています。その子の人生を支えるのは最後は兄弟、周囲の社会である可能性が高まってきています。
ダウン症の子供を育てる未来
ダウン症とは正式にはダウン症候群(21トリソミー)といいます。イギリスの医師であるジョン・ラングドン・ダウン氏によって発見されました。
ヒトの体細胞には通常22対の染色体が存在します。これを常染色体といい、1から22番までの番号がついています。このうち21番目の染色体が3本になってしまうことで発症するのが、21トリソミーと呼ばれるダウン症(ダウン症候群)です。染色体異常によって生じることから現在の医療では予防、治療をすることはできません。
ダウン症を含む染色体異常は多くの場合、流産や死産となり実際に生まれることができるのは2割ほどとされています。また、無事に生まれることができたとしても外見的な特徴や知的障害、筋力の発達の遅れ、さまざまな合併症などが生じるでしょう。しかし、それらの症状には個人差があり、軽度のダウン症であれば周囲のサポートのもと、就職や結婚など自立した生活を送ることも難しくないといわれています。
これらのことからダウン症として生まれた子供の症状や、それぞれの成長に合わせた治療やサポートを行うことが大切といえるでしょう。
ダウン症のおもな特徴と合併症
- 扁平な顔立ちとつり目
- 首の後ろの皮膚が余っている(皮膚余剰)
- 筋力の発達の遅れ、筋肉量が少なく肥満傾向
- 言語発達の遅れや自閉症
- 白内障や斜視
- 先天性心疾患
- 甲状腺機能障害
- 排尿機能障害
エコー検査で妊娠が確認できたらすぐにダウン症リスクがわかるNIPT(新型出生前診断)
これまでの出生前診断はエコー検査などの目視や、母体の腹部に穿刺を行う羊水検査などによるものでした。そのため診断精度や流産リスクなど、多くの問題が挙げられていました。しかし、遺伝子診断技術の向上により、現在では母体血液のみを使用した安全性の高いNIPT(新型出生前診断)が多く行われています。
NIPT(新型出生前診断)とは
NIPT(新型出生前診断)とは、母体血液中に含まれる胎児由来のDNA をもとに、胎児の染色体異常リスクを調べるスクリーニング検査のことです。
早期NIPT(新型出生前診断)はエコー検査で妊娠が確認できたらすぐに検査が可能です。早い段階で結果を知ることによって複数の選択肢を得ることができるため、結果を早く知りたいという強い要望があります。母体の採血のみで行われるため、胎児への直接的な侵襲(ダメージ)はないです。また、ダウン症の検査において感度・特異度ともに99・9%と、最高精度な出生前診断といえるでしょう。
NIPT(新型出生前診断)の現状
NIPT(新型出生前診断)を受ける方は年々増加傾向にあり、その要因のひとつとして、「高齢」が挙げられます。
ダウン症は21番目の常染色体に異常が生じて起こる、21トリソミーという先天性疾患です。エドワーズ症(18トリソミー)やパトウ症(13トリソミー)などの染色体異常と比べて、出生率・生存率が高いことが特徴とされています。また、ダウン症(21トリソミー)は約1000人にひとりの割合で起こり、35歳以上の高齢妊娠になるほど、胎児の染色体異常の割合は高くなる傾向にあります。
これらのことから、NIPT(新型出生前診断)の増加は、女性の社会進出がめざましい現代において、結婚年齢が上がり高齢妊娠・出産となることが影響しているといえるでしょう。
NIPT(新型出生前診断)の目的とは
NIPT(新型出生前診断)を受けて「染色体異常リスクあり」と診断され、その後、羊水検査によって先天性疾患が確定となった場合、中絶という道を選ぶ方も少なくありません。なお、陽性的中率とは、NIPT(新型出生前診断)を受けた結果「検査で陽性と判定され、確定診断を行なって実際に病気だった確率」のことを指します。
NIPT(新型出生前診断)を受ける方は年々増加傾向にあります。しかしNIPT(新型出生前診断)の結果、ダウン症と診断されたことで、親としてこの検査を受けてよかったのかと悩む方も少なくありません。
早期NIPT(新型出生前診断)は、染色体異常リスクを妊娠早期に知ることができる検査です。そして染色体異常は胎児の先天性疾患だけでなく、流産や早産など母体への健康リスクへも大きく影響するとされています。早期に胎児と母体の健康リスクを知ることで、妊娠中や出産後の環境づくりに備えることができるといえるでしょう。
NIPT(新型出生前診断)の目的は、一部の有識者の意見にある「命の選択」や「親のエゴ」などでは決してありません。「早期に事実を知り、胎児と母体に最善の備えを行うための検査」であることを覚えていてください。
ダウン症の子育てと費用やサポート
ダウン症はさまざまな合併症が生じる疾患です。ダウン症そのものの治療法は解明されていませんが、医療の発展にともない、ダウン症の方の寿命は飛躍的に延びたといえるでしょう。しかし、ダウン症による合併症の中には重篤な疾患も少なくありません。その一つには心臓病です。血管奇形や弁膜症異常が見受けられるケースが3分の一ぐらいあり、多くの人が生後間もなく心臓血管外科の手術を受けることになります。
ダウン症の子供をもつ保護者の方の多くが「親である自分たちがいなくなったら、子供はどうなるのだろう」「大人になった時に社会のルールを理解できるのだろうか」「合併症を起こした場合の余命を考えたくもない」と不安に感じることでしょう。
何より合併症の通院や療育には、大変な経済負担がかかります。症状によって異なるダウン症の子供を育てるために、どれほどの費用が必要なのかを予測することは、とても困難です。
ダウン症の子供の親になるために、最も大切なことは「ダウン症についての正しい知識」です。NIPT(新型出生前診断)によって、ダウン症の陽性リスクの診断を受けた際は、認定遺伝カウンセラーによるカウンセリングを受ける保護者の方も多くいらっしゃいます。また、ダウン症の乳児から成人に成長する間、行政からさまざまなサポートを受けることができます。
意外と知られていないのですが、ダウン症患者の平均寿命は60歳といわれています。人生の後半になると両親だけでは支えきれなくなり、兄弟や姉妹がフォローすることになります。またその子の人生を支えている社会がサポートすることになると思います。
ダウン症の子供に必要な費用について
ダウン症は合併症が起こりやすく、出産直後から成長過程、成人後も注意が必要です。そのため、通院や治療のための費用を工面することが大変というイメージが強く持たれています。一方、ダウン症の子供を育てるにあたって、さまざまな行政のサポートを受けることができます。
- 特別児童扶養手当
- 障害児福祉手当
- 小児慢性疾患医療助成制度
これらの助成金を受けられるほか、「療育手帳」や「身体障害者手帳」など、障害や疾患のある方が、さまざまな制度を活用するためのサポートもあります。各自治体によって助成内容は異なることから、産前にしっかりと調べ、申請の準備を行っておくと良いでしょう。
ダウン症の子供の成長について
ダウン症は成長スピードがとてもゆっくりで、ハイハイしたり歩いたりという運動も遅いのが特徴です。これは筋肉の発達がゆるやかなため、通常は4か月前後で首がすわり、1歳前後で歩くという過程も少し後になりますが、ゆっくり成長していきます。しかし、ダウン症の程度によっては保育園に通うことも可能だったり、早期療育によって著しい発達を見せたりと、QOLを高めてあげることはじゅうぶんに可能です。また、筋肉の発達を促したり、言葉をかけるコミュニケーションを積極的に行うことで、成長のスピードアップを図ることが可能なこともわかっています。
ダウン症の子供の健康管理について
ダウン症は、重い合併症が起こることも少なくありません。出生時にすぐわかるものもあれば、合併症の中には成人してから発症するものもあります。
- 甲状腺機能異常症
- 高脂血症
- 難聴
- 肥満
- アルツハイマー病など
こうした合併症を完全に防ぐことはできません。また、ダウン症の子供は自身の体調変化をうまく伝えられず、周囲が病気の進行に気づかないケースも少なくありません。体調変化に気づいた際、迅速に適切な処置を行うことができるよう、ダウン症の症状に合わせて医師と連携をとることが大切です。
ダウン症の赤ちゃんを迎えるために生まれる前からできること
待ち望んだ赤ちゃんを最も良い環境で迎えたい気持ちは、健常児でもダウン症児でも変わることはないでしょう。
ヒロクリニックNIPTのNIPT(新型出生前診断)はエコー検査で妊娠を確認済みならどなたでも受けていただくことが可能です。早期に赤ちゃんの染色体異常リスクを知ることで、家族や行政のサポートなど具体的な環境作りと、ダウン症に対する心がまえができることでしょう。
ヒロクリニックNIPTが何より大切にするのは「妊婦さんとご家族の知る権利」です。ダウン症や、その他の染色体異常による先天性疾患について、わからないことがありましたら何でもご相談ください。幸せな将来のために、最善の対処法を一緒に考えましょう。
遺伝子疾患の中で最も発症率の高いダウン症。50年ほど前まではダウン症の平均寿命は10歳といわれていましたが、医療の発展により現在では平均寿命は約60歳と大幅に延びています。その子の人生を支えるのは最後は兄弟、周囲の社会である可能性が高まってきています。
記事の監修者
岡 博史先生
NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業