この記事のまとめ
妊娠・出産後に赤ちゃんが何らかの理由で入院するときに治療する場所がNICUです。本記事ではNICUの特徴や費用を紹介します。
生まれたばかりの赤ちゃんが入院するNICUとは
NICUは、「Neonatal Intensive Care Unit」の略で、新生児集中治療室のことです。新生児集中治療室は、早産児や低出生体重児、心臓に病気のある赤ちゃん、呼吸が自分でうまくできない赤ちゃんなど、何らかの疾患のある新生児を集中的に管理・治療する集中治療室です。
NICUでは、新生児の治療を専門とする医師や看護師が24時間体制で赤ちゃんたちを見守っています。赤ちゃんの呼吸や心拍、体温をチェックするために、様々な機械が揃っているのが特徴です。何らかの問題を抱えてNICUに入院する赤ちゃんは、さらにトラブルや病気を引き起こしやすい可能性があるため、担当医だけではなく小児外科や脳神経外科、耳鼻科、眼科、心臓外科など多方面の医師が赤ちゃんをサポートします。
ママの子宮代わりになる保育器
NICUに入院した赤ちゃんは、保育器の中で育っていきます。保育器の役割は、体温や湿度調節、感染予防などです。生まれたばかりの赤ちゃんは、自分で体温を調節する力が低い上に、皮下脂肪が少ないため、自分の体温を一定に保つことが難しいです。自分の体温よりも低い室温の場所にいると、身体が冷えないように多くのエネルギーを使ったり、病気にかかりやすくなったりしてしまいます。保育器の中は、赤ちゃんの皮膚の温度が36〜36.5度に保たれるよう調節し、赤ちゃんが快適に過ごせる環境を整えています。
また、生まれたばかりの赤ちゃんは、免疫機能が整っていないため、保育器を利用して様々な菌から守ってあげることが必要です。
赤ちゃんの命をつなぐ様々な機械
NICU内には、入院した赤ちゃんが無事に退院できるよう、様々な機械が備わっています。
人工呼吸器
人工呼吸器は、赤ちゃんが自分でうまく呼吸ができないときに用いられる機器です。口からチューブを挿し込み、赤ちゃんの呼吸を助けます。呼吸にかかわる筋肉が弱い赤ちゃんでも呼吸が楽にできるようサポートする役割があります。
点滴ライン
点滴ラインは、血圧測定や採血、赤ちゃんが必要とする水分や薬を入れるための通り道です。目的に合わせて、手足の血管や、おへその血管にチューブを入れます。糖やアミノ酸、ミネラル、ビタミン、脂肪、電解質などの必要な栄養素を点滴で入れることもあります。
各種モニター
NICUには、赤ちゃんの状態をいつでも確認できるよう様々なモニターが設置されています。主な装置は以下の通りです。
- パルスオキシメーター:血液中の酸素飽和度と脈拍を測定して確認する
- 呼吸・心拍モニタ:心拍数・呼吸数・呼吸の深度を観察する
- 体温計:皮膚表面から体温を測定して確認する
- 換気モニター・カプノメーター:赤ちゃんの呼吸の様子を観察して人工呼吸器が適切に作動しているか確認する
- 経皮酸素炭酸ガス分圧モニター:皮膚にセンサーを貼って血液中の酸素や炭酸ガスの濃度の変化を採血せずに観察する
- 観血的血圧モニター:動脈に点滴ラインを入れて血圧を測定する
- 非観血的血圧モニター:一定時間ごとに血圧を測定して確認する
何か変化があったとき瞬時に対応できるよう、測定は連続的に行われています。
NICUでは何ができる?
NICUは、生まれてきた赤ちゃんが無事育つよう支援してくれる場所です。ここでは、具体的にどのようなサポートをしているか紹介します。
感染対策
NICUは、赤ちゃんを感染による病気や疾患から守るためにバイオクリーンルームと呼ばれる環境が整っています。部屋の中の気圧を外より高くすることで、外からゴミやホコリが侵入するのを防ぐ仕組みです。また、赤ちゃんに触れるものは滅菌と消毒がされており、医師や看護師が赤ちゃんに触れるときは、手洗いをしたり手袋をしたりします。
ディベロップメンタルケア
赤ちゃんは、ママの子宮にいる間は暗くて静かな時間を過ごしています。そのため、生まれたばかりの赤ちゃんは、明るくてたくさんの音がする外の世界にびっくりしているでしょう。赤ちゃんが明るい光にしっかり反応できるようになるのは、在胎週数で32~33週以降ごろ、耳が聞こえ始めるのは約28週といわれています。予定より早く生まれてきた赤ちゃんは、過剰な光や音がストレスになってしまい、眠れなくなったり余計なエネルギーを消費したりしてしまいます。
そのため、NICUでは日中も照明の明るさを調節したり、保育器にカバーをかけるなど、できるだけ暗く静かな環境を用意したりします。
ポジショニング
赤ちゃんがママの子宮にいるときは、羊水の中で背中を丸めて、手足を折り曲げた姿勢で過ごしています。赤ちゃんにとって安定している体勢のため、生まれてからもこの姿勢で過ごさせてあげる必要があります。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんは筋力が弱く、羊水から出た状態では同じような姿勢を保てません。そのため、看護師が赤ちゃんをリネンで包み込み、子宮の中にいたときと同じ姿勢を維持できるようにしてくれます。
NICUとGCUの違い
NICUは、生まれたばかりの赤ちゃんを24時間体制でモニタリングし、高度な治療を提供する場所です。一方、GCUはNICUでサポートを受け、安定してきた赤ちゃんが引き続き治療を受けるための場所です。NICUでの急性期の治療を終えた赤ちゃんが移動してきたり、生まれてからすぐGCUに入る赤ちゃんがいたりします。GCUでは、赤ちゃんが退院したあとに、家族が育児を安心して進められるよう、退院に向けて育児環境の提供や育児指導をします。主な育児指導は、授乳やおむつ交換、沐浴、在宅人工呼吸器の管理、内服薬の管理、気管切開チューブの交換、ミルクの注入などです。看護師や薬剤師、臨床工学技士などの専門家がサポートしてくれます。
赤ちゃんが生まれたあと入院する確率
赤ちゃんが生まれたあと、NICUに入院する確率を紹介します。日本で生まれた赤ちゃんのうち、4%ほどがNICUに入院するといわれています。4%とは、25人に1人の確率です。保育園や小学校の1クラスの中で、1人はNICUに入院した経験があるほどの割合といえます。意外にもNICUへの入院経験のある乳幼児が多いとわかるでしょう。
赤ちゃんが生まれたあと入院する理由
生まれたばかりの赤ちゃんがNICUに入院する理由は様々です。
- 早産(在胎週数37週未満 特に34週未満)の場合
- 低出生体重児の場合(特に1500g未満)
そのほかにも、以下のような症状がある場合は、入院や治療が必要となるケースが多いようです。
- 先天性心疾患の疑いがある
- 重症感染症の疑いがある
- 呼吸障害がある
- 心不全症状がある
- 重度または多発性の奇形がある
- 黄疸がみられ集中的な治療が必要である
- 外科的手術が必要である
- ミルクの飲みが悪かったり吐いたりする
生まれたばかりの赤ちゃんは、様々な理由によってNICUへ入院しています。
NICU入院にかかる費用
赤ちゃんが生まれてすぐにNICUに入院となれば、不安や心配は大きくなるでしょう。それと同時に気にしなければならないのが入院にかかる費用です。NICUでは、保育器や点滴、人工呼吸器などを利用するため、医療費が高額になるのではと不安に感じている方もいます。しかし、保険適用や医療費の助成制度を利用することで、実際に支払う金額を数万円程度に抑えることが可能です。例えば、活用できる制度としては、未熟児療育医療制度、こども医療費助成制度、高額医療費支給制度などがあります。自治体独自の助成制度も設けられているケースもあります。
なお多くのケースで、以下の支出は制度の対象外で自費となります。
- ミルク代
- おむつ代、
- 搾乳機械のレンタル代
- 搾乳したものを保存しておくためのパック代
- 家族が面会するための通院費
日用品を負担なく購入できるようにするためにも、医療費の面では様々な制度を活用しましょう。
産後に赤ちゃんが入院になったらママとは離れる?
赤ちゃんに何らかのトラブルが発生しNICUへ入院となったら、ママは赤ちゃんと同じNICUでは過ごせません。ママは一般的な病棟に移され、ほかの患者さんと同様に入院生活を送るケースが多いでしょう。赤ちゃんとママが別々の場所で入院になったとしても、赤ちゃんへの面会は行えるため、入院時に産院で確認するとよいでしょう。
赤ちゃんが退院できるまでの期間はどれくらい?
赤ちゃんが退院できるまでの期間は、赤ちゃんの症状や現在の状態などによって異なります。そのため、期間よりも赤ちゃんの体調をみて確認します。合併症の心配がない、呼吸が安定している、ママが直接授乳できる、ママの精神状態が安定しているなどを確認して、退院が可能かを総合的に判断するようです。
退院後に赤ちゃんのお世話をするのが不安です
NICUに入院した赤ちゃんを自宅で育てるのに不安を感じるママや家族もいます。多くの病院では、育児や医療ケアで両親や家族が心身ともに疲弊してしまわないよう、退院前に育児指導を行っています。また、地域によっては小児の訪問診療を実施している病院も増えてきているため、訪問医や訪問看護師に、状況を相談するのもよいでしょう。家族だけで頑張りすぎず、周りの専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
まとめ
NICUは、生まれたばかりの赤ちゃんに何らかの疾患のある場合に集中的に管理・治療を行い、問題なく育つよう支援してくれる場所です。様々な機器を用いて赤ちゃんの健康を守ります。また、NICUには先天性心疾患や染色体異常など複数の疾患を持つ子どもも入院しているでしょう。染色体異常は、出産前の妊娠中の段階でも検査が可能です。NIPT(新型出生前診断)では、ママの血液から赤ちゃんの染色体異常を調べられるため、事前に様々な不安を取り除いておきたいと考えている方におすすめの検査です。
【参考文献】
Q&A
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Q育休は会社で制度が定められていなくても取得できますか?育児休業は、法律で定められている制度のため、会社の就業規則で定められていなくとも、申し出により取得が可能です。育児休業の取得は、労働者が請求できる権利の一つであるため、就業規則で定められていないからと諦めずに、上司へ取得の申請を依頼しましょう。
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Q契約社員でも育休制度は利用できますか?契約社員でも、申請時点で子どもが1歳6カ月になる日までに、労働契約の期間が満了することが明らかになっていなければ、育児休業制度の取得が可能です。ただし、入社1年未満の場合や申し出の日から1年以内に雇用関係が解消されると明らかになっている場合、1週間の所定労働日数が2日以下の場合などは、対象外となる可能性があるため注意しましょう。
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Q上司に育休の取得を認めてもらえませんでした育児休業は法律によって定められている制度で、労働者には請求の権利があります。そのため、原則企業は取得を拒否したり、制限したりできません。もし、上司から断られたり、渋られたりした場合は、人事労務担当者に相談しましょう。また、企業内で対応してもらえない場合は、都道府県労働局雇用環境・均等部に相談するのも一つの手段です。