「妊娠安定期」とは、一般的に妊娠16週〜32週目が期間として知られています。この期間は妊婦さんの体調も安定しますが、油断せず注意点を守りながら暮らすことが大切です。この記事では、妊娠安定期の過ごし方や気をつけることを解説していきます。
この記事のまとめ
妊娠安定期とは、妊娠初期に比べて、つわりや倦怠感などの症状が安定している時期のことをいいます。妊娠安定期にはこまめな運動や赤ちゃんに使う用品などの準備、両親学級に参加するなどして過ごすのが良いでしょう。
妊娠安定期とは?
「妊娠安定期」とは、妊娠初期に比べて、つわりや倦怠感などの症状が安定している時期のことをいいます。
妊娠安定期に差し掛かると、胎盤が完成するためホルモンバランスも安定します。それに伴い体温も正常に戻っていくため、妊娠初期にあるだるさや熱っぽさも軽減する方が多いです。
妊娠初期には「初期流産」というリスクもありましたが、この時期になればそのリスクも減り、母子ともに安定します。
妊娠安定期はお腹の膨らみが目立つようになる
体調は人それぞれであるため、厳密に「妊娠安定期はいつからいつまで」と決まっているわけではありません。一般的には、妊娠16週〜32週目が妊娠安定期として知られています。
妊娠16週頃からは、徐々にお腹の膨らみが目立つようになります。これは、子宮が大人の頭ぐらいのサイズになり、ヘソの近くまで大きくなるためです。
ただ、妊娠16週くらいであれば、洋服を着ていればお腹の膨らみは意外と目立ちません。
お腹の膨らみがこのくらいになると「子宮底長」を測定できるようになります。この子宮底長を測定することで、子宮の頂点から恥骨の上部までの長さがわかります。
「妊娠中期」とは週数が異なる
妊娠安定期と似たような言葉に「妊娠中期」があります。この妊娠中期は、10か月の妊娠期間を以下のように分けた考え方です。
- 妊娠初期:13週6日まで
- 妊娠中期:14週0日〜27週6日
- 妊娠後期:28週以降
このように妊娠安定期とは週数が若干異なるため、混同しないように要注意です。
そもそも「妊娠安定期」という言葉は正式な医学用語ではありません。
妊娠安定期に突入すると胎動が始まるようになる
妊娠安定期に突入する16週くらいからは、胎動を感じるようになります。
もちろんこれも個人差はあります。
初産では20週くらいになって胎動が始まる方もいるようです。
この時期からはより赤ちゃんのことを意識できるようになります。
なるべくストレスを溜めずに過ごし、お腹を撫でたり話しかけたりするなどしてコミュニケーションを取るようにしましょう。
妊娠初期と妊娠安定期の症状の違いは?
妊娠初期には以下のような症状が起こります。
- つわり
- イライラする
- 月経とは別の出血
- 熱っぽさ
- 全身の倦怠感
- 眠気
- 腹痛
- 頻尿
- 胃のむかつき
妊娠をしているとこうした症状が頻繁に起こります。
月経が予定より1週間ほど遅れている上に体温も高いと、妊娠の可能性はさらに高いといえるのです。
こうした症状が続くと、つわりがひどくて食事ができなかったり、体調不良でイライラしてしまうなど心も体も不安定になります。
しかし妊娠安定期に突入すれば、これらの症状は比較的落ち着いてきます。
妊娠安定期に起こりうる症状とは?
妊娠安定期になると、上記のような初期症状は減ります。
ただし、それとは別で妊娠安定期ならではの症状が出てくるため要注意です。
- 貧血
- 便秘
- 腰痛
- 皮膚トラブル
- 動悸や息切れ
妊娠中は血液量に対して赤血球の数が少なくなります。
そのため貧血を起こしやすい状態ですので、緑黄色野菜や赤身のお肉、大豆、アサリなどを食べて鉄分を摂取しましょう。
ビタミンCも一緒に摂取すると効果的です。
腰痛に関しては、大きくなったお腹を支えるために腰を反ることで起こります。
なるべく腰を曲げずに背筋を意識して生活することがオススメです。
妊婦さんの体調によってはつわりのぶり返しもある
もちろん、上記の体調はあくまでも目安です。
妊娠安定期であっても流産のリスクが完全に0になるわけではありませんし、つわりのぶり返しが発生する妊婦さんもいます。
このあたりは個人差があるので、妊娠安定期に突入しても油断してはいけません。
不安なことや体調面で気がかりなことがあれば、遠慮せず産婦人科で相談しましょう。
妊娠安定期にお腹の張りを感じても慌てなくてOK
つわりのぶり返しが起こることもあるため、妊娠安定期であっても体調に気を遣う妊婦さんは多いでしょう。
ただし「お腹の張り」に関しては心配しなくても大丈夫です。
これも個人差がありますが、妊娠17週を迎えると、お腹に張りを感じることがあります。
これは子宮の収縮によって発生するものです。
生理現象と同じで自然と起こるものなので、心配する必要はありません。
お腹の張りを感じたら、横になっておくことで自然と治ります。
ただし、1時間に何回もの定期的なお腹の張りは切迫早流産の可能性もあるので、かかりつけの産婦人科に相談しましょう。
お腹の張りを事前に防ぐためには、以下の3点を守りましょう
- 過度な運動は控える
- ストレスを溜めない
- 体を温める
痛みや出血を伴うお腹の張りには要注意!
このように、基本的にお腹の張り自体は心配しすぎなくても大丈夫です。
ただし、お腹が張ったときに、痛みを感じたり性器から出血したりするのであれば要注意です。
痛みや出血を伴うお腹の張りは妊娠中期に起こることが多く、早産や常位胎盤早期剥離などの症状が発生している可能性があります。
この場合は速やかに病院で受診をしましょう。
NIPT(新型出生前診断)は妊娠安定期前に行おう!
NIPT(新型出生前診断)とは、妊婦さんから採取した血液を基に、赤ちゃんのダウン症リスクなどを調べる検査のことをいいます。
ヒロクリニックのNIPT(新型出生前診断)は、妊娠10週目〜から検査可能です。
染色体に異常が無いかを調べることで疾患リスクを事前に知ることができるため、妊婦さんの出産前の不安を取り除く目的で活用されています。
なぜこの週数なのかというと、検査結果を基に確定検査を行うこともあるためです。
確定検査を行う場合は、17週頃までが理想とされています。
NIPT(新型出生前診断)では妊婦さんの腕から血液を採取するため、流産などのリスクが無く安全に、かつ正確に染色体について検査できます。
このNIPT(新型出生前診断)で判明する疾患のリスク等は「絶対にこうなる」と確定できるものではありません。
あくまでも、疾患を抱えている可能性がどのくらいあるのか、ということを検査するものになります。
大切なのは、胎児が抱えている疾患リスクの高さについて知った上で「どのような準備をするのか?」ということです。
望まない結果が出てしまったら、家族と話し合う時間も必要でしょう。
必要に応じて準備もしなければなりません。
そうした事態に余裕を持って対処するためにも、NIPT(新型出生前診断)は妊娠安定期前の早い段階で行っておきましょう。
妊娠安定期の過ごし方について
妊娠安定期に突入すると、先ほども述べたように胎盤が完成し、赤ちゃんに十分な栄養が行き渡るようになります。
それに伴い、安定期は妊婦さんのつわりが治るなど体調も安定します。
そのため、徐々に普段の生活に戻すことができますが「安定期になったから流産のリスクが0になる」というわけではありません。
引き続き、体調には十分気をつけながら過ごすことが必要です。
具体的には、以下のような過ごし方を心がけましょう。
こまめに運動を行う
妊娠安定期中は、こまめな運動を心がけましょう。
妊娠安定期に入ると、かかりつけの産婦人科医や助産師さんなどから「あまり体重を増やさないように運動してください」「体を動かすように」などの指示が出る人も多いです。
確かに妊娠安定期になると、ほとんどの妊婦さんの体調は安定します。
そのため、体調が安定している間に、出産前の体力作りや体重維持のための運動はしておくべきです。
ただし、妊娠安定期に入ったからといって流産の危険がなくなるわけではありません。
人によっては体調不調が続く人もいます。
妊婦さんの中にはマタニティライフを楽しめる人も多いですが、その時期には個人差があります。そのため、体調が悪いときなどに無理して運動する必要はありません。
なるべくゆったりと過ごすようにしてください。
もし運動できる状態なのであれば、以下を活用して体を動かしてみましょう。
- ウォーキング
- マタニティスイミング
- マタニティヨガ
ヨガに関しては、自治体の保健所などが主体となってイベントを実施していることもあります。
とくに妊娠中は、妊婦さんの体重が増加しやすいです。
過度に増加してしまうと、以下の病気にかかるリスクがあるため十分気をつけましょう。
- 妊娠糖尿病
- 妊娠高血圧症候群
もちろん、先ほども説明した通り妊婦さんの体調が最優先です。
過度な運動をしてはいけません。
切迫早産などの兆候がある方は、必ず医師の指示に従いながら運動をしましょう。
赤ちゃんを迎える準備をする
妊娠安定期であれば体をある程度動かせるため、赤ちゃんに使う用品などの準備をしておきましょう。
出産が近づくと体調的に動くのが難しいため、この時期に準備をしておくことが大切です。
具体的には以下の準備をしておきましょう。
- 赤ちゃんの洋服
- ベッドやベビーバス
- (無痛分娩を希望する場合など)相応の出産施設がある病院を探す
- 出産にかかる補助金を調べる
- 保育園の見学
両親学級に参加する
「両親学級」とは、自治体によって胎児の両親向けに開催されている教室のことをいいます。
この両親学級では、以下のことを教えてもらえます。
- 妊婦さんの過ごし方
- 妊婦さんが普段気をつけること
- 出産の進め方
- 赤ちゃんのお世話の仕方
- マタニティヨガ(スイミング)体験
産婦人科医や助産師と直接話せるため、妊婦さんが抱える不安や悩みなどをしっかり解消しておきましょう。
両親学級によっては、妊婦さんのお腹の重さを体験できる「妊娠ジャケット」も着用できます。
妊婦さんと同じ経験を積むことで、パートナーとの絆もより深まるでしょう。
マタニティフォトを撮影する
妊娠は、人生の中でなかなか体験できない期間です。
だからこそ、体の変化をパートナーと一緒に撮影しておくことで、思い出に残しておくのも良いでしょう。
撮影のときも、妊婦さんの体調には十分気を使います。
出産が近づく前に、妊娠安定期に撮影しておくと安心です。
家族と相談しておく
出産にあたり、一度里帰りをして実家の両親に子育てを手伝ってもらうという方もいるでしょう。
その場合は、どのくらいの間里帰りをするのかなどを家族を話し合っておきます。
もし里帰りをするのであれば、実家周辺にどのような医療体制が整っているかを確認することが必須です。
先ほども述べた通り、妊娠安定期だからといって「必ず体調が万全である」とは限りません。容態が急変することもあります。
そうした不測の事態に備えることが欠かせません。
必要に応じて、かかりつけの医者に紹介状なども書いてもらいましょう。
出産に関して妊婦さんに特筆すべき事項があれば、きちんと引き継いでおくことが大切です。
また、先ほどのNIPT(新型出生前診断)で望まない結果が出てしまった場合、家族でどのように対応するかも話し合う必要があります。
妊娠安定期中の妊婦さんが気をつけることは?
妊娠安定期の妊婦さんはリフレッシュの仕方だけでなく、その期間で注意すべきことも意識する必要があります。
妊娠安定期で気をつけるべき点をいくつか紹介します。
旅行などの遠出には十分気をつける
妊娠安定期であれば、旅行に行っても問題ありません。
ただし、長時間の移動となるため配慮が欠かせません。
例えば、妊娠中は血液凝固系が亢進するため血栓ができやすいです。
そのため、こまめに休憩を取ることが必須です。
車や電車での移動では座りっぱなしになりやすいため、意図的に体を動かすなどして、なるべく血栓ができないようにします。
飛行機の場合、航空会社によっては搭乗のための医師の診断書が必要です。
必ず確認しておきましょう。
そのほか、万が一に備えて以下を準備すると良いでしょう。
- 母子手帳
- 医師から処方された薬
- 健康保険証
性生活をする際は妊婦さんの体調を最優先にする
妊娠安定期であれば、性生活を営んでも問題ありません。
妊娠中はお腹が大きくなるため、お腹を圧迫しないように気をつけましょう。
もしも性生活の最中にお腹の張りを感じたり出血したりする場合は、必ずその場で行為を止め、必要に応じて医師の診察を受けてください。
単なるお腹の張りなら大丈夫ですが、ずっと続くようであれば診療する必要があります。
また、切迫早産の可能性があるときは、絶対に性生活を営んではいけません。
妊娠中は妊婦さんの免疫力が低下しているため、コンドームも必ず装着します。
もし万が一、コンドームを着けずに性生活を営み胎児が感染症になった場合、取り返しがつきません。
このように、普段の性生活以上に、妊婦さんの体調に対する気遣いが絶対に必要です。
妊婦さんは、気持ちが乗らないときや体調が優れないときは無理せずに断りましょう。
パートナー側は、そうした妊婦さんの気持ちや体調を汲み取り、無理をさせないようにします。
念の為入院準備をしておく
妊娠安定期であっても、突然体調を崩す可能性もあります。
そのため、念のため入院準備をしておきましょう。
主に以下を準備しておくと安心です。
- 母子手帳
- 産後用ショーツ(産褥ショーツ)
- お産用パッド(産褥ナプキン)
- 授乳用ブラジャー
- タオル・バスタオル
- ティッシュ
- 洗顔用品
- スリッパ
- コンタクト・眼鏡
- スマホ・充電器
- 退院着(母子)
飲酒とタバコは絶対にやらない
妊婦さんにとって、アルコールとタバコは天敵です。
例えば、妊娠中に飲酒をすると「胎児性アルコール症候群」にかかる可能性が高まってしまいます。
さらに、低体重状態で産まれてきたりADHDになったりするなど、あらゆるリスクがあります。
タバコに関しても同様です。
早産や胎盤異常、早期破水、低体重、子宮外妊娠など飲酒と同様にさまざまなリスクを高めてしまいます。
健康な赤ちゃんと産むためにも、妊娠中の飲酒及びタバコは絶対にやめましょう。
人混みを避けて生活する
人混みに紛れると、時期によっては感染症などのリスクが高まります。
妊娠中は母体の体調を万全にしなければなりません。
そのため、そうしたリスクのある人混みはなるべく避けましょう。
人混みに関しては、感染症だけでなく先ほどご説明したタバコの副流煙のリスクも高いです。
意図せず胎児を危険に晒さないためにも、外出の際が手洗いやうがい、マスクの着用を心がけましょう。
まとめ
この記事では、妊娠安定期が具体的にいつからいつまでなのか、期間中に気をつけることは何かについて解説していきました。
妊娠安定期に突入すると、妊婦さんの体調も安定してきます。
しかしそれに油断せず、パートナーにも協力してもらいながら、ストレスを軽減させて過ごすことが何よりも大切です。
産後はかなり忙しくなるため、妊娠安定期の間にできる準備を済ませておき、万全の状態で赤ちゃんと対面できるようにしておきましょう。
【参考サイト】
- Omron Q&A – 妊娠何ヵ月から安定期に入るのでしょうか。
「妊娠安定期」とは、一般的に妊娠16週〜32週目が期間として知られています。この期間は妊婦さんの体調も安定しますが、油断せず注意点を守りながら暮らすことが大切です。この記事では、妊娠安定期の過ごし方や気をつけることを解説していきます。
記事の監修者
白男川 邦彦先生
ヒロクリニック名古屋駅前院 院長
日本産科婦人科学会専門医
産婦人科専門医として40年近くにわたる豊富な経験を持ち、多くの妊婦さんとかかわる。
現在はヒロクリニック名古屋駅前院の院長としてNIPTの検査担当医を行う一方、全国のヒロクリニック各院からのオンラインで妊婦さんの相談にも乗っている。
経歴
1982年 愛知医科大学付属病院
1987年 鹿児島大学附属病院 産婦人科
1993年 白男川クリニック 院長
2011年 かば記念病院
2019年 岡本石井病院
2020年 ヒロクリニック名古屋駅前院 院長