PROP1関連複合下垂体ホルモン欠損症

PROP1関連複合下垂体ホルモン欠損症PROP1関連複合下垂体ホルモン欠損症

概要

PROP1関連複合下垂体ホルモン欠損症(CPHD)は成長ホルモン(GH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、ゴナドトロピンである黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)、プロラクチン(PRL)、そして時に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が欠乏します。多くの患者は乳児期から小児期(9か月から8歳)にかけて成長障害で気づきます。甲状腺機能低下症は通常軽度で乳児期後期から小児期に発症します。罹患患者は二次性徴を欠くか遅延し、性機能発達は不完全で不妊を伴います。男性では陰茎、精巣は小さくなります。女性患者の一部では初潮をみるが、その後はホルモン補充療法が必要になります。ACTH欠損は低頻度で、あったとしても通常思春期から成人になって発症します。

疫学

令和2年度の医療受給者証保持数は18,653人です。しかし原因やホルモンの種類が多岐にわたることもあり、実際の患者数は、もっと多いと考えられます。

原因

汎ないし部分型下垂体機能低下症では、脳・下垂体領域の器質的疾患、特に腫瘍(下垂体腫瘍、頭蓋咽頭腫、胚細胞腫瘍など)、炎症性疾患(肉芽腫性疾患としてサルコイドーシス、ランゲルハンス組織球症、IgG4関連疾患など、自己免疫性炎症性疾患としてリンパ球性下垂体炎など)、外傷・手術によるものが最も多いです。分娩時大出血に伴う下垂体壊死(シーハン症候群)の頻度は低下している。一方、単独欠損症はGHやACTHに多く、前者では出産時の児のトラブル(骨盤位分娩など)が、後者では自己免疫機序の関与が示唆されています。まれに遺伝性異常に起因する例があり、PIT1(TSH、GH、PRL複合欠損)、PROP1(TSH、GH、PRL、LH、FSH複合欠損)、TPIT(ATCH)、GH、SHOX、GRHR(GH)などが知られている。カルマン(Kallmann)症候群の原因遺伝子であるKAL1などの視床下部遺伝子異常はLH、FSH欠損による先天性性腺機能低下症の原因となります。また、分泌亢進症に関しては、腺腫、上位の視床下部における調節機能異常などが挙げられます。

PROP1遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

症状

欠損あるいは過剰となるホルモンの種類により多彩な症状を呈します。

診断

GH,TSH,LH,FSH,PRL,ACTHの分泌不全の検査によりPROP1関連CPHDの診断が確定します。PROP1はCPHDに関連する唯一の遺伝子です。AG3反復配列が2反復となる欠失が高頻度に認められ、この部分に的を絞った分子遺伝学的検査が臨床的に利用可能です。この欠失は家族性CPHDの55%、散発例の12%に認められます。

【参考文献】

難病情報センター – PROP1関連複合下垂体ホルモン欠損症