概要
オーメン症候群(Omenn Syndrome) は、免疫系の遺伝性疾患(免疫不全症)です。Omennによって1965年に報告されました。
オーメオーメン症候群は、免疫系の遺伝性疾患(免疫不全症)です。オーメン症候群は、重症複合免疫不全症(SCID)のいくつかの型の1つで、細菌、ウイルス、および真菌からの免疫防御が事実上不可能となる疾患群です。
疫学
全体として、重症複合免疫不全症(SCID)の様々な形態は、75,000から100,000人の新生児のうち1人が罹患すると推定されていますが、オーメン症候群の正確な有病率は不明です。
日本では、2008年に行われた全国調査で4例報告されています。
原因
免疫系の機能に関与するいくつかの遺伝子に変異があると、オーメン症候群を引き起こすことがありますが最も頻度の高い原因は、RAG1およびRAG2遺伝子の変異です。これらの遺伝子は、B細胞とT細胞と呼ばれる2種類のリンパ球で活性化されるタンパク質を作るための命令を提供します。感染症と戦うために、B細胞とT細胞は外敵を認識するための特別なタンパク質を表面に持っています。これらのタンパク質は、様々な物質を認識できるように、互いに多少異なっている必要があります。RAG1およびRAG2タンパク質は、これらの細胞の表面に存在するタンパク質の多様性を高めるのに役に立ちます。
オーメン症候群の原因となるRAG1およびRAG2遺伝子の変異は、それぞれのタンパク質の機能を激減させます。その結果、B細胞やT細胞の表面にあるタンパク質の多様性が著しく制限され、細胞が外敵を認識し、感染症と戦う能力が損なわれてしまうのです。B細胞やT細胞の異常により、オーメン症候群の感染症が頻発した生命を脅かすことになります。
リンパ球の機能低下は、B細胞の数の減少につながります。T細胞は、ほんの数個の機能的な前駆細胞に由来するため、非常によく似ていますが、その数は通常、正常です。この異常なT細胞は、体内の細胞や組織を攻撃するため、オーメン症候群の自己免疫機能を担っているのです。
症状
SCIDの患者は、非常に深刻な、あるいは生命を脅かす可能性のある感染症を繰り返し、持続する傾向があります。オーメン症候群の乳児は、通常、肺炎と慢性の下痢が見られます。
免疫不全に加えて、オーメン症候群の子供たちは、免疫系が自分自身の組織や臓器を攻撃する自己免疫症を発症します。この異常な免疫反応により、非常に赤い皮膚(紅皮症)、脱毛症、肝臓や脾臓の肥大(肝脾腫)などが引き起こされることがあります。さらに、罹患者は、リンパ球と呼ばれる感染と戦う白血球を産生する組織の肥大を認めます。この組織には、胸骨の後ろにある胸腺や、全身にあるリンパ節が含まれます。
診断
劣性遺伝疾患の人の両親は、それぞれ変異した遺伝子のコピーを1つずつ持っていますが、通常、この疾患の徴候や症状を示すことはありません。
この疾患は劣性遺伝疾患で、各細胞にある遺伝子の両方のコピーに変異があることを意味します。
RAG1、RAG2などの遺伝子解析で遺伝子異常を確認し、確定診断を行います。
治療
一時的には免疫抑制薬が有効です。現在唯一の根治的治療法は造血幹細胞移植ですが、早期に行う必要があります。早期に行わなかった場合の予後は良くありません。
予後
免疫機能を回復させる治療を行わなければ、通常1歳か2歳までしか生きることができません。
【参考文献】
- MedlinePlus Genetics – Omenn syndrome
- 小児慢性特定疾病情報センター – オーメン(Omenn)症候群