概要
ミトコンドリア機能が障害され、臨床症状が出現する病態を総称しています。ミトコンドリアはエネルギー産生に加えて、活性酸素産生、アポトーシス、カルシウムイオンの貯蔵、感染防御などにも関わっているため、ミトコンドリア病ではこれらの生物学的機能が変化している可能性があります。しかし、現在のところ、ミトコンドリア病における機能異常の主体はエネルギー産生低下と考えられており、そのエネルギー代謝障害による病態が基本です。
疫学
イギリスやフィンランドの統計では、10万人に9〜16人という報告があります。しかしミトコンドリア病は症状が多彩で、軽い症状の方もたくさんいると予想され、すべての患者さんがきちんと診断されている状況ではありません。これらの数字よりもっと多い可能性があり、全体像がまだ見えていないと言ってもいいかもしれません。
原因
ミトコンドリア病の病因は、核DNA上の遺伝子の変異の場合とミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常の場合があります。核DNA上の遺伝子は、既に200近い遺伝子の変異が同定されています。一方、環状のmtDNA上には、欠失/重複、点変異(質的変化)とともに、通常一細胞内に数千個存在しているmtDNAの量が減少しても(量的変化)病気の原因となります。既にmtDNA上に100個を超える病的点変異が同定されています。
症状
代表的なミトコンドリア病の病型は、主に特徴的な中枢神経症状を基準に診断しているが、実際はこれらを合併して持つ症例や中枢神経症状がない症例も多数存在しています。代表的な臓器症状は、以下に示すようなものになります。これらを組み合わせて持っている患者は、ミトコンドリア病が疑われ診断に至ることが多いですが、単一の臓器症状しかみえない患者では、なかなか疑うことすら難しく、確定診断に至るまで時間を要することがまれではありません。
診断
血液検査、髄液検査を行い、乳酸値の測定を行います。 また、神経放射線科と協力し、頭部MRI、MRS検査を行い、ミトコンドリア病の可能性について検討します。 これらの検査は患者さんが安静である必要があるため、患者さんの年齢や発達段階に応じて、小児神経科医立ち合いのもと、鎮静薬・麻酔薬を用いて検査を行います。
対症的治療(低γグロブリン血症に対するγグロブリン補充、感染時の抗菌薬投与、誤嚥防止など)。欧米ではDNA損傷の軽減を目的として、抗酸化薬のトライアルが行われています。
–>【参考文献】
難病情報センター – ミトコンドリア