概要
非ケトーシス型高グリシン血症(グリシン脳症)Glycine Encephalopathy (GLDC-related)は、グリシンというアミノ酸の濃度が異常に高いことを特徴とする遺伝性の代謝性疾患です。グリシンは、脳内で信号を伝達する化学伝達物質です。
疫学
発症に男女差はなく、我が国における発症頻度は50~100万出生に1人と推定されます。
発症率は約95,000分の1ですが、フィンランドやブリティッシュコロンビアなど特定の集団では発症率が高くなる可能性があります。
原因
原因遺伝子は複数知られております。(GLDC、AMT、GCSH、DLD)グリシン脳症の約60%は GLDC遺伝子の変異によって引き起こされます。約20%の症例がAMT遺伝子の変異が見られました。
症状
新生児期に発症した人の約85%、2週間から3か月の間に発症した人の約50%が重症型のGEと言われています。重症型では、発育が進まず、薬物療法ではコントロールが困難な発作を起こします。ほとんどの症例は、新生児期に発症し、症状は急速に悪化します。しかし、重症型は2週間から3か月の間に症状が出始めることもあります。
GE 患者の約 20%は、症状が軽い(減弱型)ことが知られています。このようなお子様では、発育にばらつきがあり、発作を起こすことがありますが、通常、薬物療法により容易にコントロールすることができます。新生児期に発症する人もいますが、生後3カ月を過ぎてから発症する人もいます。
治療
グリシン脳症(GLDC関連)の治療は、支持療法と対症療法です。発作抑制のための抗てんかん薬、嚥下障害のための胃瘻造設、胃食道逆流症の治療が必要となる場合があります。
安息香酸ナトリウムは、血漿中のグリシンレベルを下げるために使用されます。
予後
重度の乳幼児は、主要な発達段階(物を持つ、座る、ハイハイする、歩く、話すなど)が全く進まなくなります。ただし、笑顔や寝返りができるようになるお子様もいらっしゃいます。哺乳瓶での授乳やアイコンタクトなど、成長とともに失われる能力もあります。発作は生後1年に発症し、薬で治療することは非常に困難です。生後1年以内に死亡することがよくあります。
発達の進み具合は、減弱型では個人差があります。座ったり、歩いたり、コミュニケーションをとることができるようになる子もいます。コミュニケーションは非言語的(手話など)であることがほとんどです。大多数は中等度から重度の知的障害を有し、学校では特別支援学級に通います。これらの子供たちは運動障害や行動上の問題を起こすことがあります。発作を起こす患者は、通常、治療に反応します。患児は通常、1歳前に症状が出始めます。しかし、1歳を過ぎてから症状が現れた場合、知的障害は通常より軽度で、発作もまれです。
【参考文献】
- GARD – GGlycine encephalopathy
- Myriad Foresight® Carrier Screen – Glycine encephalopathy, GLDC-related