表皮水疱症

表皮水疱症表皮水疱症

概要

主として先天的素因により、日常生活で外力の加わる部位に水疱が反復して生ずることを主な臨床症状とする一群の疾患です。本症は、遺伝形式、臨床症状並びに電顕所見に基づき30以上の亜型に細分されるが、各亜型間に共通する特徴をまとめることにより、7型、4型又は3型に大別されます。これらの分類法のうち、5大病型、すなわち、①単純型、②接合部型、③優性栄養障害型④劣性栄養障害型、及び⑤キンドラー症候群に分ける方法が最新の分類です。

疫学

世界的に10~20万人の人口にひとりの割合で患者さんがおられます。人口が約1億人の日本国内には、約500~1000人の患者さんがおられると予想されます。

原因

一般に、単純型と優性栄養障害型は常染色体優性遺伝、接合部型と劣性栄養障害型、キンドラー症候群は常染色体劣性遺伝形式をとります。単純型の水疱はトノフィラメントの異常に起因する基底細胞やヘミデスモゾームの脆弱化に基づいています。前者は、ケラチン5、14遺伝子、後者はプレクチン遺伝子異常に起因します。プレクチン遺伝子の変異で、幽門閉鎖や筋ジストロフィーを合併することがあります。接合部型は、重症なヘルリッツ型と比較的軽症な非ヘルリッツ型に大別されます。ヘルリッツ型は、ラミニン332(以前はラミニン5と呼ばれる)の遺伝子の変異が原因です。一方、非ヘルリッツ型の水疱は、その原因として17型コラーゲン、ラミニン332の遺伝子変異が同定されています。また、α6やβ4遺伝子の変異で、幽門閉鎖を合併することがあります。栄養障害型は、優性型も劣性型も、係留線維の構成成分である7型コラーゲンの遺伝子変異で生じます。キンドラー症候群はキンドリン1の遺伝子変異で生じます。

COL7A1遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

症状

一般に、四肢末梢や大関節部などの外力を受けやすい部位に、軽微な外力により水疱やびらんを生じます。水疱・びらん自体は、比較的速やかに治癒し、治癒後、瘢痕も皮膚萎縮も残さないものもあるが、難治性で治癒後に瘢痕を残すものもあります。合併症としては、皮膚悪性腫瘍、食道狭窄、幽門狭窄、栄養不良、貧血(主に鉄欠乏性)、関節拘縮、成長発育遅延などがあり、特に重症型において問題になることが多いです。

診断

患者さんの皮膚の症状、異常のあるタンパクを特別に同定することができる免疫組織学的検査、通常の顕微鏡よりもさらに細かく観察することができる電子顕微鏡的検査により病型を診断しています。 さらに将来的に出生前診断が必要となり得る病型などでは遺伝子検査も行うことがあります。

治療

現段階では根治療法はなく、対症療法のみです。その対症療法も病型により異なるので、まず正確な病型診断が必須不可欠です。最新の知見として、劣性重症汎発型の栄養障害型表皮水疱症において、骨髄移植を行い、皮疹の改善を認めたという報告がなされています。
また、本症は病型によっては種々の合併症を発生することにより、病状が増悪し、患者の日常生活を著しく制限することがあるので、各種合併症に対する処置も必要になります。さらに、本症は難治の遺伝性疾患であるため、家系内患者の再発の予防にも配慮する必要があります。

【参考文献】

難病情報センター – 表皮水疱症