概要
ペルオキシソーム病は細胞内ペルオキシソームに局在する酵素・タンパクの単独欠損症と、それらのタンパクをペルオキシソームに局在させるために必要なPEXタンパクの遺伝子異常症(ペルオキシソーム形成異常症)の2つに分けられます。これらの遺伝子異常により様々なペルオキシソーム代謝系が障害され、中枢神経系を中心に対象となる臓器に障害を来して多岐にわたる臨床像を呈します。これまでに最も頻度の高い副腎白質ジストロフィーや、最も重篤かつペルオキシソーム病の極型であるツェルベーガー症候群など15の疾患に分類されています。ここでは既に指定難病の対象となっている副腎白質ジストロフィーを除いたペルオキシソーム病を対象とします。
疫学
ペルオキシソーム形成異常症はこれまで国内で60人以上が診断されていて、恐らく数十万人に1人程度と考えられています。また、副腎白質ジストロフィーを除く他のペルオキシソーム病の中では、β酸化系酵素欠損症が10数人、 原発性 高シュウ酸尿症1型やアカタラセミア(高原氏病)も日本人症例が報告されていますが、実態は不明です。一方、レフサム病は北欧や英国に多く、日本人症例の報告はこれまでありません。
原因
ペルオキシソームには極長鎖脂肪酸のβ酸化やフィタン酸α酸化、プラスマローゲン合成系、過酸化水素分解系、グリオキシル酸解毒系など生体に必要な多くの代謝系の酵素・タンパクが存在しています。それら酵素・タンパクの単独遺伝子異常症では、これまで10個の疾患と原因遺伝子が解明されており、それぞれの遺伝子異常に起因する様々な代謝障害と多岐にわたる臨床像を呈しています。一方、それらのタンパクのペルオキシソームへの輸送に関わるPEX遺伝子異常によるペルオキシソーム形成異常症では、これまで13個の原因となるPEX遺伝子が知られており、臨床的にはペルオキシソーム代謝機能全般の障害により重篤な症状を来す最重症のツェルベーガー症候群から、より軽症の臨床型まで存在しています。
症状
ペルオキシソーム病の極型であるツェルベーガー症候群では、出生直後からの筋緊張低下や異常顔貌を呈し、脳肝腎など全身に重篤な障害をきたします。ペルオキシソーム病に共通する症状は認めませんが、疾患ごとに発達障害から神経障害(けいれん、知能障害など)、視覚、聴覚の異常から肝臓、腎臓、骨など全身に様々な症状がみられます。発症時期や臨床経過も疾患ごとに異なり、同じ疾患でも症状や重症度には幅があります。
治療
多くのペルオキシソーム病では根治療法としての治療法は確立しておらず、対症療法が中心となっています。その中でもレフサム病でのフィタン酸制限食や、原発性高シュウ酸尿症での肝移植や腎移植、無カタラーゼ血症での口腔内衛生管理が治療法として挙げられています。いずれにしても稀少疾患であるペルオキシソーム病の治療の第一歩は、できるだけ早期に正確に診断することです。
【参考文献】
難病情報センター – D-二頭酵素(DBP)欠損症