嚢胞性線維症

嚢胞性線維症嚢胞性線維症

概要

嚢胞性線維症(Cystic Fibrosis)は、消化管や気道における、非常に粘り気のある分泌液の蓄積を特徴とする遺伝性疾患です。

この障害の最も一般的な兆候と症状には、呼吸器系への進行性の損傷と慢性消化器系の問題が含まれます。障害の特徴とその重症度は、患者によって異なります。

疫学

嚢胞性線維症は、米国の白人集団によく見られる遺伝性疾患です。日本人ではきわめて稀な疾患であり、日本での発症頻度は、1人/1870000人と推計されています。

原因

CFTR遺伝子の変異は嚢胞性線維症を引き起こします。CFTR遺伝子は、塩化物イオンの細胞内外への輸送チャネルを作成するための指示を出します。塩化物イオンの流れは、組織内の水の動きを制御しており、薄くて粘度の低い組織液の生成に必要です。

CFTR遺伝子の変異は、塩化物チャネルの機能を破壊し、細胞膜を通過する水と塩化物イオンの流れを調節することを妨げます。その結果、肺や膵臓、およびその他の臓器の通路に並ぶ細胞に、異常な粘着性のある分泌液を生成します。この分泌液は気道やさまざまな管を詰まらせます。

CFTR遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

症状

嚢胞性線維症の人では、異常にべたつく粘液を生成します。この異常な粘液は気道を詰まらせる可能性があり、呼吸や肺の深刻な細菌感染をもたらします。これらの感染症では、慢性的な咳、喘鳴、および炎症が現れ、時間が経つにつれて、粘液の蓄積と感染は、肺の線維症と嚢胞の形成を含む永続的な肺の損傷をもたらします。

嚢胞性線維症のほとんどの人は、消化器系の問題も抱えています。嚢胞性線維症の人では、粘液が膵臓に損傷を与え、インスリンや消化酵素を産生する能力を損なうことがよくあります。消化に問題があると、下痢、栄養失調、発育不全、体重減少につながる可能性があります。青年期~成人期でのインスリンの不足が、嚢胞性線維症関連糖尿病(CFRDM)を引き起こす可能性があります。

治療

膵外分泌不全に対しては、膵酵素製剤および脂溶性ビタミン(A,D,E,K)の補充療法が行われます。呼吸器症状に対しては、べたつく痰を喀出するために、肺理学療法を行います。気道感染症、特に緑膿菌感染に対してはアミノグリコシド抗菌薬の投与が行われ、また抗菌作用と抗炎症作用を期待してマクロライド抗菌薬の長期投与が行われます。

予後

死亡年齢は15~20歳が典型的であるとされていますが、現在では成人に達する症例も多くなりました。

【参考文献】