カルニチンパルミトイル基転移酵II欠損症

カルニチンパルミトイル基転移酵II欠損症カルニチンパルミトイル基転移酵II欠損症

概要

カルニチンパルミトイル基転移酵素II(CPTII)欠損症は長鎖脂肪酸酸化の経路の障害です。3つの臨床型、致死性新生児型、重症乳児肝心筋型、筋型に大別されます。筋型は一般に軽症であり、乳児から成人期にかけ発症が起こります。致死性新生児型、重症乳児肝心筋型はケトン性低血糖を伴う肝不全、心筋症、痙攣をきたし、早期の死亡に至るような重篤な多臓器の障害を呈します。筋型は運動誘発性の筋痛、筋力低下が特徴であり、ときにミオグロビン尿を伴います。筋型CPTII欠損症は骨格筋を障害する脂肪代謝疾患の代表的なものであり、遺伝性のミオグロビン尿症の原因として最も頻度が高いです。女性より男性に症状がでやすいです。

疫学

本邦でのCPT2欠損症は約260,000出生に対して1例の頻度と推測されています。

原因

CPT2遺伝子(1p32.3に局在)の異常に基づきCPT2活性が低下し、アシルカルニチンから遊離カルニチンへの転換が障害されることによって起こります。筋型のS113L変異は約60%を占める高頻度変異です。F352C変異は熱不安定型の日本人に特異的な多型として報告され、高熱時に重症化する急性脳症との関連が指摘されています(本疾患とは区別して考えます)。

CPT2遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

症状

新生児発症型はけいれん、意識障害、呼吸障害、心不全などで急性発症し、著しい低血糖や高アンモニア血症、肝逸脱酵素の上昇、高CK血症、心筋症などをきたし、致死率が高いです。伝導障害や上室性頻拍などの不整脈が初発症状としてみとめられることも多いです。先天奇形(小頭症、外表奇形、嚢胞性異形成腎)などが認められることがあります。 乳幼児発症型は、感染や長時間の飢餓を契機に急性発症し、急性増悪を繰り返すこともあります。急性期の症状は、筋力低下、急性脳症様/Reye様症候群様発作、突然死などです。 遅発型は、主に年長児、学童あるいは成人以降に、間欠的な横紋筋融解症、筋痛などの症状を呈します。

診断

タンデム質量計による血清・血漿のアシルカルニチンの分析が、スクリーニング検査として最初になされます。確定診断は一般にCPT活性の低下を以ってなされています。CPTII欠損症の原因として唯一知られているCPT2遺伝子解析も非侵襲的で迅速かつ特異的な方法です。これらの検査は臨床レベルで利用できます。

治療

急性期は長鎖脂肪酸の利用障害によるエネルギークライシスとミトコンドリアの2次的機能障害が中心であるため、これらを改善させる治療が必要です。輸液や各種ビタミン剤の投与、カルニチンの投与(20-30mg/kg/day)、高アンモニア血症があればアルギニン、フェニル酪酸ナトリウム、安息香酸ナトリウムなどの投与を行います。安定期には食事間隔の指導(年齢に応じた空腹許容時間の厳守)、シックデイにおける早期治療介入、高炭水化物(総カロリーの70%程度)、低脂肪食(総カロリーの20%以下)などの栄養療法を行います。中鎖脂肪酸はミトコンドリア内への輸送は障害されないため、中鎖トリグリセリド(MCT)オイル、MCTパウダーやMCT強化乳の摂取が推奨されます。

【参考文献】

難病情報センター – カルニチンパルミトイル基転移酵II欠損症