概要
アルストレーム症候群(Alstrom Syndrome)は、網膜の錐体-桿体ジストロフィー、難聴、肥満、2型糖尿病、インスリン抵抗性および高インスリン血症、拡張型心筋症(DCM)、進行性の肝機能障害・腎機能障害を特徴とする、まれな多系統疾患です。
疫学
アルストレーム症候群の有病率は、欧米の場合100万人に1人とされています。世界的には、950人以上の症例が確認されています。
原因
アルストレーム症候群は、繊毛の形成と維持、細胞周期の調節、また細胞内輸送においての役割があるとされるALMS1遺伝子(2p13.1)の変異によって発症します。遺伝子検査で確認される疾患ですが、出生前診断以前に、家族でALMS1の変異が同定されている場合には、出生前診断をすすめます。 また、アルストレーム症候群は常染色体劣性形式の遺伝子疾患のため、遺伝カウンセリングが推奨されます。
症状
発症年齢や臨床的特徴、重症度は家系間、また家系内によって大きく異なります。
錐体-桿体ジストロフィー
生後数週間以内に発症します。これは進行性の眼病変であり、通常、20歳ごろまでに失明に至ります。
難聴
ほとんどの患者で、軽度から中等度の両側感音難聴が生じ、ゆるやかに進行します。
拡張型心筋症
乳児期または青年期に約2/3の患者において発症します。
肥満、2型糖尿病、インスリン抵抗性および高インスリン血症
早期の特徴として、過食を伴う肥満や、2型糖尿病、インスリン抵抗性および高インスリン血症がみられます。
肝機能障害
小児期に脂肪肝を伴って始まり、一部の症例では、門脈圧亢進症、肝硬変および肝不全が生じることもあります。
特異顔貌
薄毛、早発性の前頭部脱毛、深く窪んだ眼、丸い顔と厚い耳がみられ、ほとんどの患児で広く、厚く、平坦な特徴的な足と、短く太い指趾がみられます。
腎症
緩徐進行性の腎症から末期腎不全に進行することがあります。
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その他にも、しばしば再発性中耳炎、慢性呼吸器疾患、高トリグリセリド血症、肺高血圧症がみられ、また男性での性腺機能低下症と女性でのアンドロゲン過剰の症例も報告されています。
知能は、ほとんどの患者が正常ですが、知能発達および精神運動発達の障害を示唆している報告もあります。
治療
心不全の主な治療方法は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、β遮断薬、利尿薬、およびジゴキシンを用います。
糖尿病には低脂肪低糖食、運動、メトホルミン、チアゾリジン系薬剤、インクレチンアナログ、およびSGLT2阻害薬で管理します。これは2/3の症例で有益とされています。
腎疾患のある患者では、ACE阻害薬を用います。また、数例で腎移植が成功しています。
現在では、新薬が臨床試験に入っており、その中には抗線維化および抗炎症特性を有する化合物であるPBI-4050や、セトメラノチド(アルストレーム症候群を含む、まれな型の遺伝性肥満における過食の治療のための薬)があります。
予後
アルストレーム症候群の患者は寿命が短くなることがあります。しかし早期の診断および治療により、進行を遅らせて寿命とQOLを向上させることが可能です。
【参考文献】
- orpha.net – Alstrom症候群