NIPT(新型出生前診断)は、基本的には薬を服薬中でも検査は可能です。しかし、薬によっては一時的な休薬が必要になったり、妊娠や胎児に悪影響を及ぼしたりすることがあります。本記事では、薬がNIPTや妊婦・胎児に及ぼす影響などを解説します。
はじめに
NIPT(新型出生前診断)は、母親の採血だけで胎児の染色体異常の有無を診断できる検査です。
基本的には服薬中でも検査は可能ですが、ヘパリンは検査前に服用を中止していただく必要があります。
NIPT(新型出生前診断)自体には影響しない薬であっても、妊娠や胎児へ影響を及ぼすことがありますので、本記事では薬がNIPT(新型出生前診断)や妊娠に及ぼす影響などを解説します。
NIPT(出生前診断)とは
NIPT(新型出生前診断)とは、母体血清マーカー検査と同様、母親の採血液のみで赤ちゃんの先天性異常の可能性を判断するスクリーニング検査です。
出生前診断には母体血清マーカー検査・胎児ドック・羊水検査・絨毛検査といった検査もありますが、
- 母体血清マーカーや胎児ドックは胎児への侵襲が少ない一方、確定診断はできない
- 羊水検査と絨毛検査は、精度が高い一方、子宮に穿刺をするため胎児へのダメージが大きい
といった問題がありました。
NIPT(新型出生前診断)は採血だけで検査ができる上に、ダウン症の原因である21染色体に対する感度が99.9%など、非常に高い検査精度を誇ります。
安全かつ高確率で胎児の染色体異常の有無を知ることができるとして、注目されている検査です。
服薬中でもNIPT(出生前診断)は受けられる
NIPT(新型出生前診断)では、妊婦さんの血液中に含まれる赤ちゃんのDNA断片を解析し、染色体の異常などがないか調べます。
検査自体は採血だけなので、服薬中でもNIPT(新型出生前診断)は受けられます。
服薬がNIPT(新型出生前診断)にどんな影響を与えるか
服薬中でもNIPT(新型出生前診断)自体は受けられますが、薬によっては検査結果がエラーになることがあります。
しかし、検査前だけ薬を中断することで正確な検査が可能です。
薬によるNIPT(新型出生前診断)の注意点は後述しますので、NIPT(新型出生前診断)を受けようと考えている方は参考にしてみてください。
よくある薬の例とNIPT(出生前診断)前の注意点
NIPT(新型出生前診断)は採血だけで胎児の染色体異常を調べられるので、薬を服用していても検査自体は可能です。
ただし、薬によっては検査結果にエラーが生じたり、お腹の中の赤ちゃんに影響が出たりする場合もあります。
こちらでは、よくある薬を例に、NIPT(新型出生前診断)前の注意点を解説します。
ヘパリン
ヘパリンは、NIPT(新型出生前診断)前に一旦中止していただくか、使用前に検査する必要があります。
なぜならヘパリンは血清中のDNAを変化させる可能性が高いと言われており、ヘパリン注射をしている際にNIPT(新型出生前診断)を実施すると、高頻度でエラーとなるためです。
ヘパリンの半減期である4~6時間をもとに、少なくとも12時間、できれば48時間以上使用を中止していただいてからNIPT(新型出生前診断)を実施していただいています。
解熱鎮痛剤
解熱鎮痛剤はそれ自体がNIPT(新型出生前診断)に影響を及ぼすことはありませんが、まれにNIPT(新型出生前診断)の検査に影響が出る薬もあります。例えば、妊婦が服用できる解熱剤の代表的なものとして風邪薬等に含まれているアセトアミノフェンなどはNIPT(新型出生前診断)の検査に影響が出る場合がありますので、可能であれば検査前は服用せずに検査を受けてください。
また、種類によっては胎児に影響することが知られているので、注意が必要です。
解熱鎮痛剤に含まれるイブプロフェンという成分は、妊娠前期に1週間以上服用すると流産のリスクを高めたり、妊娠後期には分娩や新生児に影響を及ぼしたりすることが知られています。
イブプロフェンを含む非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、特に妊娠後期に胎児の動脈管を収縮する可能性があるため、服薬は避けましょう。
花粉症の薬
妊娠中は女性ホルモンの分泌が増加する影響で、循環血液量や体内貯留水分量が増加し、鼻粘膜の充血や腫れが起きやすくなります。
結果的に妊娠中の女性は鼻炎が起きやすく、花粉症などの症状も悪化しやすくなる傾向があります。
花粉症の薬を服用している場合、薬自体はNIPT(新型出生前診断)に影響を及ぼしません。
しかし、鼻づまりや花粉症の薬に含まれるナファゾリン塩酸塩や、テトラヒドロゾリン塩酸塩といった血管収縮薬は、子宮収縮の作用も持つことが分かっています。
服用の際は主治医に相談するようにしましょう。
市販の風邪薬
市販の風邪薬は抗生剤や抗ウイルス剤のような特効薬ではなく、熱や鼻水、咳などに対する対症療法薬となります。
これらの服用はNIPT(新型出生前診断)自体には影響を及ぼしませんが、まれにNIPT(新型出生前診断)の検査に影響が出る薬もあります。
前述の通り、解熱鎮痛剤のNSAIDsや、ナファゾリン塩酸塩・テトラヒドロゾリン塩酸塩といった血管収縮薬などが、胎児に影響を及ぼす可能性があります。
市販薬の服用時には必ず添付文書に目を通して、妊婦の使用可否を確認することが大切です。
不安な場合は主治医にも相談してみましょう。
漢方
漢方の服用は、NIPT(新型出生前診断)には影響を及ぼす可能性は低いです。
ただし、漢方は植物から作られているため安全性が高いというイメージがありますが、中には流産を誘発する漢方薬もあります。
大黄、ボウショウ、ケンゴシを含む漢方製剤は流産を誘発すると言われているため、使用しないようにしましょう。
漢方は成分が一定でなかったり、どういった成分が身体にどれぐらい吸収されるかといったデータが揃っていなかったりして、判断が難しい薬でもあります。
必ずしも安全とは言えないため、使用の際は主治医と相談することが大切です。
胃薬
胃薬を使用していても、NIPT(新型出生前診断)には影響を及ぼす可能性は低いです。
正露丸や百草丸といった薬は成分に関するデータがないため評価が難しいものの、昔から使用されてきたことを考えれば、胎児への影響はほとんどないと言えます。
胎児に影響がある胃薬は、消化性潰瘍治療薬のミソプロストールです。
NSAIDsの長期使用で胃潰瘍になった場合に処方される薬で、胎児の奇形リスクを高めたり、子宮収縮作用によって流産を引き起こしたりすることが分かっています。
その他治療中の持病がある場合
持病の治療のために薬を服用している場合も、NIPT(新型出生前診断)自体は受けていただけます。
ただし、薬が妊娠や胎児に影響を与える可能性はありますので、主治医への確認が必要です。
例えば抗てんかん薬や乾癬・角化症治療薬は胎児の奇形リスクを高めたり、血圧を下げる降圧薬は胎児低血圧や顔面奇形などのリスクを高めたりします。
主治医とよく相談した上で、薬の継続について判断するようにしましょう。
妊娠中の薬の自己判断はNG
薬は、種類によっては妊娠や胎児に影響を及ぼす可能性があります。
しかし、だからといって自己判断で薬を止めることはかえって危険です。
例えば抗けいれん薬や抗甲状腺薬は胎児の奇形性を高めると言われていますが、自己判断で止めてしまうと持病が悪化して、妊娠の維持自体が難しくなる可能性もあります。
薬によっては必ずしも中止しなくても、量をコントロールすることで母親と胎児の双方を守ることが可能です。
妊娠が発覚したら、必ず主治医に相談して薬の量を決定しましょう。
胎児が危険に晒される可能性も
前述の通り、薬を自己判断で止めたり継続したりすることはリスクを高めます。
薬によっては、服用によって胎児の奇形などのリスクを高めたり、急な断薬によって母子ともに危険な状態になったりする可能性もあるのです。
赤ちゃんを守るためにも、薬については必ず主治医の指示のもとコントロールするようにしましょう。
まとめ
NIPT(新型出生前診断)は母親の採血のみで実施できる検査なので、基本的に薬を飲んでいても検査が可能です。
ただし、ヘパリンは検査結果をエラーにする可能性を高めるため、ヒロクリニックNIPTでは検査前の服用中止をお願いしています。
その他の薬はNIPT(新型出生前診断)自体に与える影響は少ないものの、薬によっては妊娠や胎児へ影響を及ぼします。
薬の継続や中止については、必ず主治医へ相談するようにしましょう。
NIPT(新型出生前診断)は、基本的には薬を服薬中でも検査は可能です。しかし、薬によっては一時的な休薬が必要になったり、妊娠や胎児に悪影響を及ぼしたりすることがあります。本記事では、薬がNIPTや妊婦・胎児に及ぼす影響などを解説します。
記事の監修者
岡 博史先生
NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業