化学流産とは?流産の種類と原因について【医師監修】

化学流産

妊娠の早期に胎児が死亡してしまうことを流産といいます。約40%の確率で妊婦さんが流産を経験しているとされ、そのおもな原因は胎児の染色体異常です。本記事では化学流産や切迫流産、稽留流産など流産の種類や特徴・兆候についてを医師が解説します。

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はじめに

流産とは妊娠確定の後、妊娠の早い時期に胎児が亡くなってしまう状態のことです。流産の定義は「妊娠22週未満の妊娠の終結」とされ、妊娠12週未満を「早期流産」、12週以降22週未満を「後期流産」といいます。

流産には化学流産・切迫流産・稽留流産などの種類があり、それぞれ症状や処置が異なります。また、母体年齢が上がるほど流産の確率も上昇し、40歳以上の妊婦さんの場合、約半数が流産になるといわれています。

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化学流産(化学的流産)とは

化学流産(化学的流産)とは、妊娠検査薬にて妊娠反応が陽性となったにも関わらず、子宮の中に胎嚢が確認できない状態をいいます。化学流産は化学的流産、もしくは化学妊娠や生化学的妊娠と呼ばれることがありますが、いずれも同義語とされています。

※本記事においては「化学流産」表記とします

なお日本において化学流産は、流産の回数に含まれないと定義され、超音波検査(エコー検査)により、子宮内に胎嚢が確認された後の臨床的流産とは異なるといえるでしょう。

化学流産(化学的流産/化学妊娠/生化学的妊娠)

尿中もしくは血液の中に、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が検出され陽性となった後、超音波検査では胎嚢が認められず、妊娠終結をしてhCGが陰性となる状態。

臨床的妊娠

超音波検査により子宮内に胎嚢が認められた状態。

臨床的流産

超音波検査により子宮内に胎嚢が認められたのち、何らかの原因で胎児が死亡した状態。

切迫流産との違い

切迫流産とは妊娠22週未満の時期に起こり、「切迫」の文字が表すように流産が差し迫った状態のことです。腹痛や出血などが生じても胎児は子宮に残り生きていた(助かる)ケースは多々あります。これらのことから切迫流産は化学流産と異なり、妊娠継続の可能性があるといえるでしょう。

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その他の流産の種類

進行流産

出血をともない、子宮の内容物が体外に出てきている状態。子宮内容物がすべて排出された完全流産と、子宮内容物の一部が子宮内に残存する不全流産に分けられる。いずれも症状によって流産手術が検討される。

稽留流産

胎嚢の発育がない、もしくは胎児の死亡が確認されたが、子宮内に胎児が留まった状態。母体の自覚症状は少なく、診察時に流産が分かるケースもある。稽留流産は自然排出、また週数や状態によっては子宮内容物を除去する流産手術をおこなう。

感染症による流産

クラミジア・梅毒・ヘルペスなどの性感染症や、B型肝炎・サイトメガロウイルスの胎児感染により、母体と胎児が重篤な状態、もしくは胎児死亡が起こるケースがある。

化学流産となる確率

妊娠とは子宮内に胎嚢を確認、もしくは子宮外妊娠(異所性妊娠)のことを指します。これらのことから化学流産は妊娠回数にも、流産回数にもカウントされないと定義されています。

化学流産は妊娠を意識していない場合、生理や不正出血と考える方も少なくありません。そのため化学流産となる正確な確率は分からないといえるでしょう。

化学流産の症状

化学流産は多くの場合、症状がなく生理と考える方も少なくありません。化学流産による出血量は通常の生理ほど、もしくはやや多めの出血量とされています。まれにレバーのようなゼリー状の血の塊が排出されることがありますが、これらは子宮内にある分泌物であり胎芽ではありません。

妊娠や出産を希望し、妊娠検査薬が陽性となった場合に出血が見られた際は、すみやかに産婦人科を受診しましょう。

化学流産の前兆

化学流産であった場合、診断が下されるのは初めての超音波検査がおこなわれる妊娠4〜5週頃となります。化学流産は妊娠期間の中でも超初期に起こる流産です。通常、妊娠時に現れる吐き気や乳房、腹部の張りなどは見られず、化学流産の前兆は、ほぼないとされています。

化学流産と基礎体温

女性の基礎体温は、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌により生理前に高温期が続き、生理が始まると黄体ホルモン(プロゲステロン)分泌量の減少にともない、低体温期を迎えます。

しかし、妊娠することで黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌され続け、生理予定日が過ぎても基礎体温は下がりません。これらのことから、妊娠検査薬で陽性反応が出た後に低体温が続いた場合は、化学流産の可能性が高いといえるでしょう。

化学流産の原因

化学流産の原因は未だ解明されていません。しかし、妊娠早期の流産は胎児の染色体異常によるものが多く、化学流産も染色体異常が影響しているのではないか、といわれています。

また化学流産は、自然妊娠でも体外受精でも起こる可能性があり、35歳以上の高齢妊娠女性に多く見られる流産です。

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化学流産と子宮外妊娠の違い

化学流産と同じように妊娠検査薬が陽性反応となったにも関わらず、超音波検査において胎嚢が見られない状態に子宮外妊娠が挙げられます。子宮外妊娠とは異所性妊娠とも呼ばれるように、卵管など子宮内以外の部位に受精卵が着床する症状です。

受精卵は子宮内以外では成長することができないため、妊娠継続は不可能です。また、子宮外妊娠は自覚症状がない場合もあり、胎芽や胎嚢が大きくなることで卵管破裂などを引き起こします。子宮外妊娠は化学流産と異なり、母体の生命の危険をともなうことも少なくありません。

これらのことから、妊娠検査薬で陽性反応が認められた際は、必ず産婦人科で診察を受けることが大切です。

妊娠検査薬

化学流産と診断されたら

化学流産は、自然妊娠でも体外受精でも起こる可能性があります。なかでも高齢出産とされる35歳以上の妊婦さんに多く見られる流産です。しかし、いずれの流産リスクも母体年齢とともに上昇するため、30代以降に妊娠・出産を予定している場合は注意が必要です。

化学流産後は

化学流産後は妊娠継続とならなかった受精卵が、出血とともに排出されます。そのため、化学流産は妊娠検査薬を使用しなかった場合、生理と考え流産に気づかない妊婦さんも少なくありません。

化学流産は受精卵の消失です。出血をともなう自然な排出となるため、異常が見られない際は治療をおこなう必要はないでしょう。

妊娠検査薬はいつまで陽性?

化学流産を気にするあまり、妊娠検査薬で繰り返し陽性反応を確認する妊婦さんも少なくありません。一度、妊娠検査薬で陽性反応となった場合も、化学流産を起こすと妊娠検査薬は陰性反応となります。

化学流産後の妊娠

化学流産を起こしても、その後の妊娠への影響は少ないとされています。化学流産後は次の生理が来ることで、妊娠可能な状態に戻るといえるでしょう。

しかし、母体年齢の上昇や副流煙を含む喫煙行為などにより、流産リスクは上がることから注意が必要です。

不育症

不育症とは、妊娠をしても流産および死産を繰り返すことにより、赤ちゃんをもつことができない病態のことです。既往流産2回を反復流産、3回以上を習慣流産といいます。また、不育症の多くは、胎児の染色体異常によるものとされています。

しかし、流産しやすい不育症と診断されても妊娠する可能性は高く、子宮形態異常などが認められない場合は、次回の妊娠予後は比較的良好といわれています。

LIFE

流産リスクを早期に知るNIPT(新型出生前診断)とは

化学流産以外にも流産にはさまざまな種類があり、その原因すべては未だ解明されていません。しかし、多くの流産は胎児の染色体異常が引き起こすとされています。これらのことから健やかな妊娠期間を過ごすためには、流産リスクを早期に知ることが大切といえるでしょう。

ヒロクリニックNIPTによるNIPT(新型出生前診断)は、エコー検査で妊娠が確認できたらすぐに検査が可能なスクリーニング検査です。母体の腕から採血のみでおこなうため、胎児への直接的な侵襲(ダメージ)はありません。

NIPT(新型出生前診断)は、従来の血液による出生前診断と比較しても、ダウン症候群(21トリソミー)エドワーズ症候群(18トリソミー)パトウ症候群(13トリソミー)に関して、感度・特異度ともに99.9%ときわめて高い検査精度とされています。

胎児の染色体異常による流産リスク、またNIPT(新型出生前診断)について、分からないことや不安なことはヒロクリニックNIPTへご相談ください。NIPT(新型出生前診断)に精通した医師やスタッフが丁寧にご説明いたします。

非侵襲的出生前診断
新型出生前診断(NIPT)とは、「お母さんから採血した血液から胎児の、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、1...

【参考文献】

Q&A
よくある質問

化学流産についてのよくある質問です。

  • Q
    化学流産の症状があった後、妊娠継続している可能性は?
    産婦人科での検査により化学流産と診断された場合は、妊娠継続している可能性は低いといえるでしょう。しかし、化学流産の1ヶ月後に再び妊娠・出産を迎えたケースも少なくありません。
  • Q
    化学流産しやすい人の特徴はある?
    化学流産の原因は未だすべてが解明されていません。しかし、多くは胎児の染色体異常によるものとされています。35歳以上の高齢妊娠の場合、化学流産のリスクが高いとされています。妊娠検査薬で陽性反応が認められた際は、産婦人科での診察・検査を必ず受けましょう。
  • Q
    化学流産となった場合、手術は必要?
    化学流産は妊娠中の流産と異なるため、特別な治療や手術は必要とされません。また化学流産との診断が下されても、次回の生理が来たら妊娠も可能です。

妊娠の早期に胎児が死亡してしまうことを流産といいます。約40%の確率で妊婦さんが流産を経験しているとされ、そのおもな原因は胎児の染色体異常です。本記事では化学流産や切迫流産、稽留流産など流産の種類や特徴・兆候についてを医師が解説します。

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記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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