「妊娠中に子宮頸がんが見つかったらどうすればいいの?」「赤ちゃんに影響はある?」と不安に思っている方に向けて、この記事では子宮頸がんが見つかったときの治療法や赤ちゃんへの影響などについて詳しく解説します。
はじめに
「妊娠中に子宮頸がんが見つかったのだけど、どうしたらいいの?」
「このまま妊娠を続けて大丈夫?赤ちゃんに問題はない?」
妊娠中に子宮頸がんの検査で異常が出ると、赤ちゃんのことはもちろんですが、自分の体のことも不安になるものです。このまま妊娠を続けていいのか、出産後に治療をすれば問題ないのかいろいろな不安を抱えることかと思います。
今回は、妊娠中に子宮頸がんが見つかったらどのように対処すべきなのか、赤ちゃんへ何か影響はあるのかなどについて詳しく解説します。
子宮頸がんとは
子宮頸がんは、子宮の下部にある筒状の部分である子宮頸部にできるがんのことです。子宮の入り口近くにできるため、妊婦健診でよく発見されます。
比較的治療を行いやすいため、早期に発見できれば予後がよいがんとして知られていますが、転移することもあるので注意しなければなりません。発症のピークは、30歳代後半といわれています。
子宮頸がんの分類
子宮頸がんの発生の過程は、「子宮頸部異形成」「上皮内がん」「浸潤がん」の3つに分類されます。
子宮頸部異形成とは、がんになる前の段階のことです。超初期の段階である軽度異形成から子宮頸がんに移行する手前である高度異形成まであり、前がん病変とも呼ばれます。がんではないため、悪性ではないものの、通常の細胞とは違う形をしているため観察が必要です。
上皮内がんは、子宮頸部の表面のみにがんがある状態を指します。
浸潤がんは、周囲にある組織までがんが入り込んだ状態です。
子宮頸がんの原因
子宮頸がんの原因は、多くがヒトパピローマウイルス(HPV)への感染だといわれています。ヒトパピローマウイルスは感染することが珍しいウイルスではありません。性交渉のある女性のうち、50%以上の方が生涯のうちに感染するといわれています。
誰でも感染する可能性はあるということです。しかし、感染したからといって必ずしも子宮頸がんを発症するわけではありません。90%以上の方は感染しても免疫機能が働くため、ヒトパピローマウイルスから体を守ることができます。残りの10%では感染した状態が続き、そのなかの一部の方が子宮頸部異形成の状態になってしまうのです。
妊娠初期の子宮頸がんの検査
妊娠初期に子宮頸がんの検査をする方法には、おもに次の3つがあります。
細胞診
細胞診とは、子宮頸部を専用のヘラやブラシでこすって細胞を採取し、顕微鏡で検査する方法のことです。採取した細胞をガラス板に固定し、色素で染めた後に顕微鏡で観察します。
細胞診で異常が見つかった場合は精密検査となりますが、ここで異常が見つかってもすべてががんと診断されるわけではありません。あくまで細胞診は「子宮頸がんの可能性がある」かどうかを判別するものであり、がんを確定するものではないのです。
ハイリスクHPV検査
ハイリスクHPV検査では、子宮頸がんの発症と深く関わっているヒトパピローマウイルスに感染しているかどうかを調べます。ヒトパピローマウイルスには、100種類以上もの型がありますが、すべてのウイルスに子宮頸がんを発症させる高いリスクがあるわけではありません。
とくにリスクが高いといわれている16型や18型、39型などを含めた13種類のヒトパピローマウイルスの感染がわかるのがハイリスクHPV検査です。
コルポスコープ組織診
コルポスコープ(コルポスコピー)組織診は、細胞診で異常があった際に行われます。コルポスコープと呼ばれる拡大鏡を使い、子宮頸部を詳しく確認していく検査です。異常が見つかった場合は、コルポスコープを使って組織を取り生検を行います。
これらの検査のほか、がんがどれくらい広がっているかを見る内診や直腸診、超音波検査やCT検査などがあわせて行われることもあるでしょう。
いずれの検査も、赤ちゃんの異常を見るというよりは母体の状況をチェックするものです。もし、赤ちゃんの健康状態が気になるようでしたら、妊娠初期から受けられるNIPT(新型出生前診断)を検討してみてください。こちらはダウン症などの染色体異常を調べる検査となっております。ヒロクリニックNIPTでは、エコー検査で妊娠が確認できたらすぐにNIPT(新型出生前診断)を受けられます。
妊娠中に子宮頸がんが見つかったらどうする?
妊娠中に子宮頸がんが見つかることは意外と珍しいものではありません。原則として、妊娠初期の検診で子宮頸がんの検査を行うことになっているためです。もし見つかった場合は、経過を見ながら妊娠期間を過ごすか、状況に応じて手術が行われます。
経過観察
緊急性がない場合、もしくは妊娠の継続を優先させたい場合は手術せずに経過観察を行います。ただし、妊娠を継続したいという強い希望があったとしても、母体の命に関わると医師が判断した場合は手術となることもあるでしょう。
当然、妊娠を継続すれば治療が遅れるため、ステージ分類によっては命に関わることもあります。医師としっかり相談し、最善の選択をすることが大切です。
手術療法
子宮頸がんの初期の手術療法は、円錐切除術やレーザー蒸散術によって子宮頸がんの病巣を取り除くものです。がんがどれくらい広がっているのか、どこまで深く病巣が進んでいるのかによって、出産後の手術でも問題ないケースがあります。
しかし、場合によっては一刻を争うこともあるため、妊娠の継続を断念しなければなりません。つらい選択となることもありますが、医師とよく相談し後悔のない選択をしましょう。
円錐切除術
子宮頸部の一部をレーザーやメスを使って円錐状に取り除く手術です。初期の子宮頸がんの場合に適応となります。子宮は摘出せずそのまま残しておくため、妊孕性(にんようせい)を保ったまま子宮頸がんの治療が可能です。治療後も妊娠を望む方に向いているといえるでしょう。
ただし、子宮頸管が短くなるため、早産や流産のリスクを高める可能性があるともいわれています。
レーザー蒸散術
レーザー蒸散術は、子宮頸部異形成の患者さんのうち、中等度異形成と高度異形成の方を対象に行われる手術です。
厳密には子宮頸がんではなく、子宮頸がんの前段階の状態を治療していく方法を指します。患部にレーザーを当てて、蒸散させる治療です。子宮頸管には影響しないため、早産や流産のリスクは変わらないといわれています。
子宮頸がんが赤ちゃんへ及ぼす影響
子宮頸がんは、赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があると考えられます。羊水を通して子宮頸がんの細胞が赤ちゃんに吸い込まれ、出産後にがんを発症した例が報告されているのです。つまり、母親の子宮頸がんが子供に移行する可能性があります。
ただし、子宮頸がんがあると赤ちゃんに必ずなにかしらの影響が出るというわけではありません。何も影響がないケースも多くあります。
妊娠中の子宮頸がんワクチン
妊娠中に子宮頸がんワクチンを打った場合の安全性については、まだ確立されていません。
問題がないというデータもありますが、厚生労働省は妊娠中の方が打つ場合、「健康状態や体質などを担当の医師にしっかり伝え、予防接種の必要性、リスク、効果について十分な説明を受け、よく理解した上で接種を受けてください」としています。
そのため、妊娠前に子宮頸がんワクチンを打ち終わっておくことが理想です。
まとめ
妊娠中に子宮頸がんが見つかったら、状態に応じてそのまま経過観察を行いながら妊娠を継続するか、もしくは妊娠の継続をやめて治療を優先するかを決める必要があります。子宮頸がんのステージや広がり方、深さなどを考慮して判断しなければなりません。
子宮頸がんが赤ちゃんに大きな影響を与えることはめったにないものの、一部でがんが移行したという例も報告されています。妊娠中に子宮頸がんが見つかるとさまざまな不安に押しつぶされそうになると思いますが、信頼できる医師とよく相談し、後悔のない選択をしていきましょう。
【参考文献】
- 公益社団法人 日本産科婦人科学会 – 子宮頸がん
- 厚生労働省 – ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~
- 国立がん研究センター – 母親の子宮頸がんが子どもに移行する現象を発見
- 厚生労働省 – HPVワクチンに関するQ&A
Q&A
よくある質問
妊娠中の子宮頸がんでよくある質問をいくつかまとめました。参考にしてみてください。
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Q子宮頸がんは出産することで治る?出産しても子宮頸がんが自然に治ることはありません。
人によっては子宮頸部異形成から子宮頸がんに進行することもあるため、適切な治療が必要です。 -
Q産後に子宮頸がんになりやすいって本当?産後だから子宮頸がんになりやすいということはありません。
ただし、妊娠・出産の経験が多い方はヒトパピローマウイルスに感染する機会も多いといえます。タイミングによっては、産後に子宮頸がんが見つかるケースもあるでしょう。
ぜひ産後も子宮頸がん検診を受けましょう。
「妊娠中に子宮頸がんが見つかったらどうすればいいの?」「赤ちゃんに影響はある?」と不安に思っている方に向けて、この記事では子宮頸がんが見つかったときの治療法や赤ちゃんへの影響などについて詳しく解説します。
記事の監修者
岡 博史先生
NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業