出生前診断とはダウン症(21トリソミー)など、胎児の染色体異常による先天性疾患リスクの有無を調べる検査です。本記事では低侵襲かつ高精度なスクリーニング検査とされるNIPT(新型出生前診断)についてと、羊水検査の違いを医師が解説します。
NIPT(新型出生前診断)とは
NIPT(新型出生前診断)とは、非侵襲的出生前遺伝学的検査/非侵襲性出生前遺伝学的検査とも呼ばれ、母体採血のみで検査をおこなう出生前診断のことです。一般的な健康診断での採血と同様に、お母さんの腕から注射器で血液を採取するため、赤ちゃんへの直接的な侵襲(ダメージ)はとても少ない検査方法とされています。
お母さんの血液には胎児のDNAが含まれています。NIPTは、そのDNAの断片から赤ちゃんの持つ染色体異常症や先天性疾患リスクの可能性を調べることが可能です。
従来の非確定的検査である母体血清マーカーやコンバインド検査は、妊娠11週以降で検査実施が可能とされていました。しかしヒロクリニックのNIPTの検査時期は、妊娠約6週(超音波検査で妊娠が確定したとき)より検査をおこなうことができ、これまでの出生前診断と比べ、妊娠初期に赤ちゃんの健康状態を検査することができるといえるでしょう。
NIPTはスクリーニング検査(非確定的検査)です。ダウン症(21トリソミー)・エドワーズ症(18トリソミー)・パトウ症(13トリソミー)などの染色体異常症のリスクを「陽性」「陰性」によって判定をおこないます。また、赤ちゃんの染色体異常症の他に性別を知ることも可能とされています。
なお他の出生前診断同様に、NIPTも保険適用外の検査です。NIPT施設によって検査費用や検査条件が異なるため、事前に費用や条件などを調べることが大切です。
NIPT(新型出生前診断)の精度
染色体検査の正確性を計る基準には、「感度」と「特異度」の2種類があります。
出産後に陽性であったお母さんのうち、検査で陽性が出ていた方の割合が「感度」です。また、出産後に陰性であったお母さんのうち、検査で陰性が出ていた方の割合が「特異度」となります。つまり、感度と特異度が高いほど、検査の精度も高くなるといえるでしょう。
NIPT(新型出生前診断)の検査精度はダウン症(21トリソミー)に関しては、感度・特異度99.9%と非常に高精度であるとされています。これらのことから母体血清マーカーなど、従来の血液による出生前診断と比較して、検査精度の高いNIPTは、赤ちゃんの異常染色体数をより正確に発見することができるのです。
しかし、NIPTはスクリーニング検査(非確定的検査)となります。そのため、赤ちゃんの染色体異常症などをより正確に調べるためには羊水検査などの確定検査が必要となります。
羊水検査とは
NIPT(新型出生前診断)は、赤ちゃんの染色体異常症の可能性を診断するスクリーニング検査(非確定的検査)です。そのため、NIPTの検査結果で陽性となり、染色体異常症の確定の検査結果を希望する場合は、確定検査である「羊水検査」を受ける必要があります。
羊水検査とはお母さんのお腹にエコー(超音波)をあてながら、注射針を用いて穿刺し羊水の吸引・採取をおこなう検査法です。10〜20mlほど採取した羊水には胎児細胞が含まれており、染色体や遺伝子異常症の有無を調べます。
羊水を採取する検査であることから、羊水検査をおこなうことができる時期は羊水が溜まる妊娠15〜16週となります。またNIPTと同様に保険適用のない自費診断となるため、医療機関によって費用は異なります。
羊水検査の検査方法
代表的な羊水検査の検査方法は、以下の3種類です。
<検査方法>
- G分染法
- FISH法
- マイクロアレイ法
①G分染法
G分染法はギムザ染色といわれる方法で、もっとも一般的な染色体検査となります。G分染法ではすべての染色体を染め、染色体の数や構造に異常がないかを検査します。染色体顕微鏡を使って検査をおこなうため、顕微鏡でも見えないごく小さな欠失やモザイクについては、発見できないことがあります。
②FISH法
FISH法は染色体の特定の細胞を蛍光染色で光らせ、異常がないかを検査する方法です。特定の染色体異常症を発見し、染色体の大きな欠失や重複の確定診断に用いられる方法であり、微細な欠失などについては、発見できないことがあります。培養操作が必要ないため、より早く結果が出るのも特徴です。
③マイクロアレイ法
マイクロアレイは日本語に直訳すると細かい配列、という意味となります。多数の染色体の微細な変化を観察することが可能で、G分染法やFISH法の100倍ほども高精度な検査法とされています。
羊水検査の精度
羊水検査とは、羊水に含まれる胎児細胞の検査をおこなう確定検査とされます。その精度は非常に高く、ほぼ100%といわれますが、羊水検査によって染色体が正常と診断された胎児がダウン症(21トリソミー)であるケースも稀に見られます。
ダウン症(21トリソミー)の染色体異常症は、標準型(トリソミー型)が約94%・転座型が約5%、モザイク型が約1%に分類されています。この中のモザイク型とは正常と異常の両方の細胞が確認されることですが、細胞培養の過程で正常細胞のみ増えてくる場合や、両方の細胞が増えても正常な細胞しか検出されなかった場合には、出生後初めて染色体モザイク児であることが判明する場合があります。つまりこのような場合には、羊水検査で正常と診断されても、生まれてからダウン症(21トリソミー)と診断されることがあります。
NIPT(新型出生前診断)と羊水検査の違い
NIPT(新型出生前診断)と羊水検査には、大きく分けて次の3つの違いがあります。
<NIPT(新型出生前診断)と羊水検査の違い>
- 検査可能な時期
- 検査可能な疾患の種類
- 流産や死産につながるリスクの確率
違い①検査可能な時期
NIPT(新型出生前診断)は妊娠約6週(超音波検査で妊娠が確定したとき)以降から検査をおこなうことができます。一方、羊水検査は羊水採取によって行われるため、羊水の量が十分に溜まる妊娠15〜16週以降でないと受けることができません。そのため、NIPTの結果が陽性の場合、確定診断の希望者は妊娠15〜16週以降に、羊水検査を受ける必要があります。
昨今、胎児に侵襲(ダメージ)を及ぼすリスクの少ないNIPTは、羊水検査を受ける前のリスクの少ないスクリーニング検査(非確定的検査)として活用されています。
違い②流産や死産につながるリスク
羊水検査は母体の腹部から注射針を穿刺し、羊水を採取することで胎児細胞の検査をおこないます。そのため、穿刺による感染症や出血、羊水の漏出などにより流産や死産などのリスクはゼロではありません。なお、羊水検査による流産・死産の確率は1/300とされています。
※絨毛検査の流産・死産リスクは1/100
一方、NIPTは母体からの採血のみでおこなわれる検査です。そのため、胎児への直接的な侵襲(ダメージ)は、非常に少ないとされています。
NIPT(新型出生前診断)は胎児と母体の健康のために
NIPT(新型出生前診断)は、胎児の染色体異常症による先天性疾患リスクを早期に知ることができます。また、胎児の染色体異常症は流産の原因のひとつでもあるため、お母さんの健康を守るための検査ともいえるでしょう。NIPTはこれまでの出生前診断と比べ胎児への侵襲(ダメージ)が少なく、高精度なスクリーニング検査(非確定的検査)とされています。
ヒロクリニックNIPTでは「お母さんとそのご家族が知る権利」を尊重するNIPT施設です。NIPTに精通した医師やスタッフのサポートはもちろん、染色体の単体検査から、すべての染色体の検査まで、さまざまな検査プランやオプションをご用意しております
また、ヒロクリニックNIPTは羊水検査を必要とする方の費用負担を軽減するために、提携検査機関主催の羊水検査サポートをご案内しております。事前に羊水検査サポート料金3,300円(税込み)のお支払いで最大20万円までの羊水検査の補助を受けることができます。詳しくは「羊水検査について」をご参照ください。
「NIPTや羊水検査は、いつから受けたほうがいいか」「NIPTを受けるための条件について知りたい」ヒロクリニックNIPTはこのようなお問い合わせを多くいただきます。NIPTについて分からないことがあればヒロクリニックNIPTまで、どんな些細なことでもご相談ください。お母さんにもっとも最適なNIPTプランを一緒に考えましょう。
出生前診断とはダウン症(21トリソミー)など、胎児の染色体異常による先天性疾患リスクの有無を調べる検査です。本記事では低侵襲かつ高精度なスクリーニング検査とされるNIPT(新型出生前診断)についてと、羊水検査の違いを医師が解説します。
記事の監修者
岡 博史先生
NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業