羊水検査とは
羊水検査とは妊娠16週ごろ(最終月経から計算して16週ごろ)に生まれてくる赤ちゃんに染色体異常や先天性代謝異常症などがないかどうかを確かめるために行う検査のうちの一つです。
超音波を使って胎児や胎盤の位置を確認しながらお腹に針を刺して羊水を採取してきて、その取ってきた羊水をもとに中の成分などから染色体分析、DNA分析、代謝産物の測定などを行って異常がないかを確かめます。お腹に針を刺して行う検査であるため、腕に針を刺してその血液のみで検査のできるNIPT(新型出生前診断)に比べるとやや侵襲性が高い検査ではあると思います。
しかしながら、NIPT(新型出生前診断)で確定診断をすることはできないため、陽性反応が出た場合は確定診断のため羊水検査が必要になってきます。これはどうしてかというと、生まれてくる赤ちゃんが本当は染色体異常がないのに誤って陽性になるのを避けるために行います。
羊水検査には下記のような種類があります。
- リアルタイムPCR
- エクソーム解析
- Gバンド法
- FISH法
- マイクロアレイ法
つまりマイクロアレイ法とは羊水検査の中に含まれていて、そのなかの分類ということです。マイクロアレイ法はこの3つの検査のなかでは一番最新で、染色体の細かい変化までみていくことができます。
マイクロアレイ法ってどういう検査なの?
マイクロアレイ検査は日本語に直訳すると細かい配列という意味です。
多数の染色体の変化を細かく見ることが可能で、先述の染色体分染法の100倍ほども微細な変化を見ることができると言われる分析法です。
価格はクリニックにより異なります。
これまで、染色体の異常はG分染法では 5~10Mbほどの変化がないと発見することができませんでした。今までは逆にシーケンス解析では Mb 単位の DNA 断片欠失の重複の検出は困難 だったということです。
FISH 法を用いることで 100kb 程度の欠失や転座などの確認も可能になったのですが、それは特定の領域に限られてしまっていました。
しかしながらマイクロアレイ解析の技術革新により、特異的なDNA領域であれば数10Kbほどのとても細かな量的不均衡が合併してしまっている染色体の異常についても検出することができるようになりました。
つまり通常の染色体分染法で検出できない、染色体のより微細な過剰や欠失を検出することが可能です。
では、未知の遺伝子を解析できるのかというと、答えはNOです。
現在はシーケンス解析では未知の遺伝子を検出できる次世代シーケンサーがありますが、マイクロアレイ法では既知の遺伝子のみ知ることができます。というのもこれはマイクロアレイ法の方法に違いがあるためです。
マイクロアレイ法ではチップの上に既知の遺伝子の変異した遺伝子の断片や標準の遺伝子の断片を載せることでどれくらい蛍光しているか、光の強さをみたり色の度合いを確認して、遺伝子に変異がないかどうかを検査します。
検査に必要な羊水の量は大体20から30mlで、検査の結果が出るまでにかかる日数は検体が検査会社に到着してからおよそ2週間前後です。
また、染色体分析とは分析の方法が違うので、マイクロアレイ法では基本的には均衡型相互転座や逆位を検出することはできないのです。
均衡型相互転座、逆位とは
では均衡型相互転座、逆位とはどういった状態のことを指すのでしょうか。
均衡型相互転座
均衡型相互転座とは400人に1人くらいに認められる転座のタイプのことで、不育症カップルの約5パーセントくらいで見られる転座のことです。
2本の異なった染色体に転座というものが起こってしまい、ちぎれてしまった断片同士が交換されてしまって起こる異常のことです。
2本の染色体が交差するとなりやすいといわれています。
多くの場合は遺伝の情報の位置が変わってしまっただけなので表現型の性質や見た目には変化が認められないことが多いのです。
逆位
逆位とは染色体の切断端を1つの染色体内で再結合が起こってしまい、染色体の分節の方向が2箇所の切断端に挟まれてしまって逆になってしまうことです。
しかしながらまれに例外的に転座や逆位に合わせて染色体にて微細な重複や欠失があった場合は検出することができます。
マイクロアレイ法の注意点
また、マイクロアレイ法は解像度未満の欠失や重複、遺伝子の転変異を見つけることは残念ながらできません。そのため、100パーセント疾患を検出できるわけではありません。そのため、マイクロアレイ法で異常が認められないからといって絶対に疾患がないとは言い切れません。
しかし、遺伝子全体や欠失や重複を検出するという点においては素晴らしい力を発揮します。検出力がとても良いため、極めてまれに正常人でもみられるような染色体の変化を検出することもあります。その場合はみられた染色体異常に病的意義があるかどうか調べるために、両親の検査をするよう推奨される場合もあります。
このような検査であるため、全ての人にこの検査を行うわけではなく、推奨される人を対象にマイクロアレイ法で羊水検査を行うことが多いです。それは超音波検査で生まれてくる赤ちゃんに異常がありそうだと医師から言われた場合、染色体分析をしても異常かどうかはっきりしない場合、マイクロアレイ法が適していると考えられる疾患をその赤ちゃんの家族が持っている場合です。
もしマイクロアレイ法で異常が見つかったらどうすればいいの?
まずはその検査してもらった病院で説明をしてもらってください。
マイクロアレイ法は微細な染色体の変化を察知する繊細な検査であるため、解釈が難しい場合も多々あります。可能であれば日本産婦人科学会専門医のいるようなクリニックで検査を受けることが理想的でしょう。
そして必要に応じて遺伝カウンセリングを受けていきましょう。遺伝カウンセリングとは遺伝に関わる悩みに対して医学的な情報でアドバイスをもらうことです。
まずはご家族が自分の意思で決定できるための土台作りが必要となってきます。
そのためには状況の把握、疾患についての理解が必要不可欠です。できれば検査を受ける前に検査で異常という結果が出たらどうするか、などまでを事前に家族でよく話し合っておくことが理想的でしょう。
最終的には赤ちゃんの今後を決めるのはご自身となってきます。
時間は無限にあるわけではなく、物事を決定するのにはタイムリミットがあるため検査をした後にいろいろと迷い、パニックに陥ってしまい自分の思うような選択ができなくなることを避けるためにも、まずは検査を受ける前に不安を少しでも取り除けるよう、自分で日頃からいろいろな情報収集をしておくことも大切だと思います。
ヒロクリニックNIPTのこちらのサイトは、他にもいろいろなコラムがあるため、ぜひ活用してみてください。
記事の監修者
非公開: 岡 博史先生.
NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業