ダウン症は、21番目の染色体が通常よりも1本多くなることから21トリソミーとも呼ばれます。新生児の染色体異常症では最も多いダウン症候群(21トリソミー)について、この記事で特徴や検査方法について医師が解説します。
この記事のまとめ
ダウン症候群(21トリソミー)は、21番目の染色体が通常より1本多くなることで現れる染色体異常症のひとつで、知的障害・身体的発達の遅れなどがあります。染色体の数の異常が遺伝する確率は非常に稀といえるので遺伝する可能性はほぼありません。また母親の出産時の年齢が上がるにつれダウン症の出生頻度も上がります。
ダウン症候群(21トリソミー)とは
現在日本でのダウン症の方は8万人、発症率は700人に1人といわれています。高齢出産だとダウン症の確率が高くなる、遺伝するなどといった情報もよく耳にするのではないでしょうか。 妊娠期間中どのくらいの時点で判明するのか、どういった特徴が見られるのか、またエコー写真からダウン症を見抜くことができるかなど詳しくご紹介しますので、参考にしていただければと思います。
そもそもダウン症とはどのような症状かご存知でしょうか?
ダウン症候群(21トリソミー)は、21番目の染色体が通常より1本多くなることで現れる染色体異常症のひとつで、知的障害・身体的発達の遅れなどがあります。
ダウン症、ダウン症候群という病名は、研究者のジョン・ラングドン・ダウン医師が19世紀後半に報告したことから名付けられました。
染色体とは細胞の中に存在し、DNAなどの遺伝子が詰まっています。
ヒトの染色体は常染色体1~22番各2本ずつと、性染色体2本の計46本あります。
この染色体が通常より1本多い染色体異常のことをトリソミーと言い、ダウン症は21番目の染色体が1本多いことから21トリソミーとも呼ばれます。
ダウン症候群(21トリソミー)は染色体の構造により、標準型・転座型・モザイク型の3種類に分けられます。
人の染色体は23対46本で、2本で対になっています。分離する際に何らかの原因で分離がうまくいかなかったり、通常では起こらない転座(染色体の一部が他の染色体の特定部位に移動し結合すること)により21番目の染色体が1本余分に増え3本(トリソミー)になることから『21トリソミー』とよばれます。
なお、18番トリソミーは95%が自然流産で生存率は1歳以上の生存率は5〜10%、13番トリソミーでは、臨床的に重症で半数が1か月以内で1年未満の生存となります。それ以外の染色体ではより重要な遺伝情報が多いため染色体異常となった場合ほとんどが早期に流産することが多いです。
ダウン症の種類
染色体の構造によって標準型、転座型、モザイク型が存在します。
標準型
全体の約95%*を占めます。父親由来の染色体と、母親由来の染色体の分離が上手くいかずに21番目の染色体が増えてしまうことが原因です。
標準型の場合、両親の染色体には問題がないことがほとんどです。
転座型
全体の約3%*と珍しいのが、この転座型です。標準型とは異なり、両親のどちらかの21番目の染色体の一部が他の染色体にくっついてしまっている(転座)状態のことを言います。
両親のどちらかが転座染色体を持っていることで起こると考えられています。
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モザイク型
約2%*の発症率と非常に珍しいのが、このモザイク型です。
染色体異常がある細胞と、正常な細胞が入り混じっていることからこの病名が付きました。
細胞の割合によっては、他のタイプよりもダウン症としての症状が軽くなる例もあります。
ダウン症(21トリソミー)は、0.1〜0.2%(約500〜1000人に1人)の割合で生まれ新生児のトリソミーの中でも最も多いことでも知られています。
ヒトの染色体構造の異常によって発症するので、ダウン症は他の哺乳類には見られません。
以前、海外のニュースでダウン症の特徴にあてはまる顔立ちの猫が注目されました。
猫にもごくまれに染色体異常を持って生まれてくる個体がいるようですが、ヒトのダウン症候群(21トリソミー)とは異なります。
なおチンパンジーの症例は1969年に米国で22トリソミーが報告され、2017年国内で2例目となる同症例が報告されています。大型類人猿の染色体は22番目の染色体がヒトの21番目の染色体に相当するためダウン症候群(21トリソミー)と確認されました。ヒトに最も近縁となるチンパンジーのダウン症候群(21トリソミー)については現在も研究がおこなわれています。
*出典:厚生労働省 – 21トリソミーのある方のくらし
ダウン症候群(21トリソミー)は染色体の数の異常
染色体の数の異常で最も多いとされるダウン症(21トリソミー)とは、21番目の染色体は正常であれば2本であるところ、3本となり、遺伝子が正しく機能しないことで生じる染色体の数の異常症です。
染色体の数の異常が遺伝する確率は非常に稀といえるでしょう。そのため発症の珍しくないダウン症候群(21トリソミー)ですが、遺伝する可能性はほぼありません。
しかし染色体の構造異常の場合、遺伝によるダウン症(21トリソミー)が稀にあるとされています。症状はなくても両親のどちらかが転座染色体を持っていることで、ダウン症(21トリソミー)を引き起こす可能性はゼロではないと言えるでしょう。
数的異常(染色体の数の異常)
- 本来2本セットの染色体が3本になるトリソミー(ダウン症)
- 本来2本セットの染色体が1本になるモノソミー
- それぞれの染色体が3本あり69本になるトリプロイディー/三倍体
構造異常(染色体の構造の異常)
- 染色体相互転座
- 染色体逆位
- 部分欠損
- 重複
- 環状染色体
- 同腕染色体 など
ダウン症候群(21トリソミー)が持つ特徴
ダウン症(21トリソミー)の症状や、身体的特徴には個人差があります。以下に挙げられた特徴は出産後ダウン症(21トリソミー)に多くみられる一般的な傾向となります。
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顔つき
共通の身体的特徴として、顔の中心部が成長しないのに対して顔の外側が成長することから、吊り上がった小さい目と低い鼻、頭が小さく広く扁平な顔立ちになる傾向があります。
出生時には診断がつきにくく、成長するにつれ以下のような特徴が現れます。
- 鼻が低い
- 舌が長く釣り上がった目
- 耳の位置が低い
- 耳が小さく丸い
- 首の後ろの皮膚が余っている(皮膚余剰)
- 全体的に平坦な顔貌
- 厚い唇と分厚い舌
- 頬が丸い
- あごが未発達
- 筋肉量の低下により身体がやわらかい
- 体は小柄
- 髪の毛がウェーブではなく直毛で薄い
これらの特徴以外にダウン症候群(21トリソミー)は筋肉が低緊張であるため、口が開きっぱなしとなる症状も多くみられます。
手と指
手は短く、横幅が広くなる傾向があります。
ダウン症の特徴とされるのは手のひらのシワです。手相で言う感情線や頭脳線のように、両側から真ん中に向かって2本の線があるのではなく、手の平を横切るようにまっすぐな1本のシワが見られます。
指に関しては小指の関節が1つ少なく、内側に曲がっていることが多いこともダウン症の特徴です。
また、足の親指と人差し指の間が広くなっているケースも見られます。
身長や筋力
ダウン症児(21トリソミー)は、特に小児は低身長であることが多いとされています。
筋肉量が少なく低緊張であることから、運動の発達がゆっくりとしておりハイハイ・歩行などを習得するために、健常児とくらべ時間を要する例もしばしば見られます。
また、肥満リスクも通常より高いとされています。
ダウン症候群(21トリソミー)の障害について
ダウン症(21トリソミー)は、21番染色体が1本過剰で3本あることにより引き起こされます。21番染色体は最も小さい常染色体であり、21番染色体のもつ遺伝情報は少ないとされています。そのため他の染色体異常と比べ、大きな心奇形をもって生まれてくることが比較的、少ない先天異常症です。
ダウン症(21トリソミー)の障害の程度は個人差があり、それぞれ異なります。多くの場合、ダウン症(21トリソミー)はIQの発達障害や運動発達の遅れ、また多種の合併症を引き起こすとされていますが、中にはハンディキャップを負うものの、健常者とともに社会的に活躍する方もいらっしゃいます。
ダウン症(21トリソミー)に対して、医学的な治療法は確率されていません。しかし、ダウン症児の能力を最大限に伸ばす「療育」といわれる支援があります。療育とは、医療と教育を並行におこなうことで、ダウン症による障害をもつ子供の自立を支えるアプローチといえるでしょう。
ダウン症候群(21トリソミー)と発達障害
発達障害とは、発達障害者支援法において「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。
上記のことから発達障害にはさまざまな種類があり、症状は発達障害の種類によって異なります。言語もしくはIQの発達の遅れにより、他人とのコミュニケーションなどに問題が生じることも多くあります。なお、ダウン症(21トリソミー)は染色体異常による発達障害に分類されます。
ダウン症候群(21トリソミー)と知的障害/知的能力障害
知的障害とは一般的に18歳未満に生じ、「概念的領域(読み書き・数学・論理的思考など)」「社会的領域(対人関係・自己制御・社会的判断など)」「実用的領域(行動や金銭管理など)」といった3つの領域におけるIQおよび適応機能の両方に明らかな制約が見られることで特徴づけられる障害とされています。
ダウン症候群(21トリソミー)に見られる知的障害(知的能力障害)の程度には個人差があります。同年代と比べ、未熟なところがあったとしても、IQが51以上ある軽度の知的障害であればコミュニケーションが可能であり、ある程度の自立した生活を送ることができるでしょう。
またダウン症候群(21トリソミー)自体に重度・軽度の明確な区分はありませんが、知的障害と合併症リスクで判断する場合がほとんどです。
一般的に「知的障害(知的能力障害)が軽度」「合併症リスクが低い」ダウン症候群(21トリソミー)患者は軽度とされ、「知的障害(知的能力障害)」「合併症リスクが高い」ダウン症候群(21トリソミー)患者は重度とされています。
ダウン症候群(21トリソミー)のIQや精神発達への影響
ダウン症(21トリソミー)はIQや精神の発達にも影響を及ぼします。一般的な影響は以下の通りです。
ダウン症候群(21トリソミー)の言語発達やIQ
IQ(知能指数)は個人差があるため一概には言えませんが、通常の子供のIQを100とした場合、ダウン症候群(21トリソミー)の小児の平均値は50ほどだと考えられています。
成長・発達面としては、筋肉量の低下により発声がしづらいことから言語発達の遅れや積極性に欠けた様子、言語の発達がゆっくりで、言葉が不明瞭・抑揚のない話し方をすることも多く、また行動面では注意欠如や自閉的行動などが挙げられます。
- 注意欠如・多動症
- 自閉的行動(同じことを何度も繰り返すなど)
ダウン症候群(21トリソミー)は小児期から青年期の両方でうつ病リスクが高くなると考えられ、早い段階で教育等の介入をすることで個人の能力を上げることが期待できます。
ダウン症児の性格について
ダウン症児のIQ(知能指数)には個人差があるように、ダウン症児の性格もさまざまです。一般的にダウン症児の性格は「穏やか」「優しい」「頑固」などのイメージを多くもたれています。しかし、ダウン症児の性格形成は健常児と変わらず、母親および保護者の教育観や育児観、また生活環境などが大きく関わるため、一概にその性格を決めつけることはできないでしょう。
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ダウン症の公的支援制度と社会進出
ダウン症患者は、さまざまな支援サービスを利用することができます。支援サービスの内容は国・都道府県・市区町村など各自治体によって異なります。なお、ダウン症の障害の程度や、保護者の所得などによって一部の支援サービスが利用できない場合もあるため、お住まいの自治体に確認する必要があります。
公的支援以外でも福祉団体や支援企業、親の会なども多くあります。また、ファッション業界にモデルとして進出するダウン症患者も国内外で見られるようになりました。インターネットやSNSといった現在の情報社会において、ダウン症に対する認識は以前とくらべ変化しているといえるでしょう。
視覚と聴覚の認知処理
ダウン症(21トリソミー)の小児は言語能力の発達がゆっくりなのに比べ、視覚認知は得意な子も多いようです。
そのため、言葉を使うよりも、ジェスチャーや絵・写真を使った方がコミュニケーションをとりやすいこともあります。
合併症・疾患のリスク
ダウン症(21トリソミー)は身体的・IQ的特徴だけでなく、合併症や疾患のリスクも指摘されています。
心疾患
ダウン症(21トリソミー)のある小児の中で、約半数が心疾患(心臓に起こる病気の総称)のリスクがあります。
心臓を4つの部屋に仕切る壁がきちんと形成されていないことによる、心内膜床欠損や心室中隔欠損症という疾患が発生する例が多いとされています。
消化器関係
ダウン症(21トリソミー)は十二指腸閉鎖、鎖肛(直腸肛門奇形)などの消化器疾患を持つことも多く、赤ちゃんの症状によっては生まれてすぐの手術が必要なケースもあります。
また、筋肉が低緊張であるため、摂食機能の発達がゆっくりだったり、上あごが小さいことから食べ物を咀嚼するのが不得意な小児も少なくないようです。
その他の合併症・疾患
その他にも、以下の合併症や疾患が現れることがあります。
- 軽中度の知的障害
- 感覚器(難聴、斜視、白内障など)
- 内分泌(糖尿病、肥満、甲状腺機能の低下・亢進など)
- 青年期以降にストレスによるうつ、早期退行
- 40歳以降からアルツハイマー病が高確率で起きる
- 難聴/中耳炎/閉塞性の無呼吸
- 白内障/斜視
- 排尿機能障害
- 甲状腺機能障害
- 脱臼
- けいれん
他にも、糖尿病や白血病のリスクが高くなることも分かっています。
ダウン症候群(21トリソミー)に多く見られる死因
かつてはダウン症(21トリソミー)は短命とされていました。しかし医療技術の向上にともない、合併症の治療が可能となりその寿命は大幅に延び、現在のダウン症の平均寿命は60歳前後といわれています。
ダウン症(21トリソミー)に多く見られる死因は、心疾患や白血病、脳卒中などが多く挙げられます。
ダウン症(21トリソミー)の生まれてすぐの死因は、おもに先天性奇形・肺炎・感染症・心疾患などが多く、成人(20歳以降)は脳卒中などの脳血管疾患が多くを占めるとされています。
これらのことから、ダウン症(21トリソミー)の健康維持には合併症の早期発見と、早期治療が重要と言えるでしょう。
ダウン症候群(21トリソミー)が遺伝する確率は?
染色体異常症は多く見られ、珍しい病気ではありません。ヒト染色体は46本あり、父と母それぞれから23本ずつ受け継がれています。染色体異常症には染色体の数に異常が生じるタイプと、染色体の構造に異常が生じるタイプとに分かれます。
両親からのダウン症候群(21トリソミー)遺伝の可能性
前述のように染色体は父由来が23本、母由来が23本で合わせて46本となります。この46本の染色体を維持するため、受精前の精子・卵子はそれぞれ23本ずつの染色体となる必要があるのです。しかし精子と卵子が23本に分かれる際に、何らかの異常により21番の染色体が2本一緒に精子および卵子に入ってしまうケースがあり、これを「染色体不分離」と言い、この状態の精子や卵子が受精することで、ダウン症(21トリソミー)が生じます。
ダウン症(21トリソミー)は、遺伝子の異常によって引き起こる病気です。また、染色体不分離を原因とする場合は、もし両親の遺伝子に何らかの異常があったとしても子供に遺伝するわけではありません。これらのことから、ダウン症は精子や卵子といった生殖細胞の成長過程で起こる突然変異とも言えるでしょう。なお、染色体不分離は母体年齢が高いことが関係するとされています。
母体年齢が上昇するとともに卵子の質も低下するとされ、染色体不分離が起こりやすく35歳以上の高齢妊娠・高齢出産であるほど、ダウン症(21トリソミー)などの染色体異常症の胎児である可能性の確率はあがると言われています。また、ダウン症(21トリソミー)発症の確率は、出産経験の有無は関係ありません。
これらのことから、両親からのダウン症(21トリソミー)の遺伝の可能性は非常に低いとされます。両親に遺伝子異常がない場合でも、ある一定の確率でダウン症(21トリソミー)の子供が生まれる可能性があると言えるでしょう。
ただし、転座型のダウン症(21トリソミー)は、両親のどちらかが転座染色体を持っていることで引き起こる可能性もゼロではありません。
転座型とは遺伝によるダウン症候群(21トリソミー)
ほとんどのダウン症(21トリソミー)は生殖過程で起こる染色体の突然変異であり、遺伝とは無関係とされています。しかし、ダウン症(21トリソミー)の中には、遺伝による転座型ダウン症がまれに存在します。
転座型ダウン症とは3本ある21番染色体のうち1本が、他の染色体にくっつくことで引き起こります。転座染色体は父か母のいずれかに由来するものであり、両親ともに症状が現れない場合(保因者)であっても転座染色体をもつ場合があります。
両親のどちらかが転座染色体の保因者であると、母体年齢とは無関係で胎児がダウン症(21トリソミー)である確率はやや高くなるでしょう。
親族からのダウン症候群(21トリソミー)遺伝の可能性
患者さまから寄せられる質問のなかで「ダウン症の親族がいるが遺伝の可能性は?」と、血縁者によるダウン症候群(21トリソミー)の遺伝を心配する声は少なくありません。
結婚を考える男女が両家のどちらかにダウン症(21トリソミー)の方がいるため、結婚を迷われる(もしくは反対される)ケースも多く聞かれます。しかし、ダウン症(21トリソミー)は染色体の数の異常により起こる病気です。そのため転座型を除き、両親からの遺伝でダウン症(21トリソミー)となる可能性は、極めて低いとされています。
これらのことから親族(親戚)の中にダウン症(21トリソミー)の方がいた場合も、それが遺伝される可能性はとても低いでしょう。
いとこがダウン症候群(21トリソミー)の場合に起こる遺伝の可能性
患者さまの中で、「自身と同じ年齢のいとこがダウン症であり遺伝が不安」という声も少なくありませんが、ダウン症(21トリソミー)は染色体の数の異常によって引き起こる病気です。
親族(親戚)・いとこなど、遺伝を原因とするダウン症(21トリソミー)の発症の可能性はありません。
兄弟でダウン症候群(21トリソミー)になる可能性
母体の高年齢の影響もありますが第一子がダウン症(21トリソミー)であった場合、転座型のみならず標準型でも次子の染色体異常症の発症率は、やや高くなるとの報告があります。これらのことから、兄弟ともにダウン症となるケースはゼロではありません。また、第一子がダウン症(21トリソミー)であることから、NIPT(新型出生前診断)をおこなう方も少なくありません。
高齢出産とダウン症の関係とは
高齢出産とは35歳を過ぎて赤ちゃんを産むことを指します。
女性が一生のうちに作り出す卵子は生まれた時からすでに卵巣内にあり、月に1回選ばれた卵子が排卵されます。卵子が卵巣の中にある期間が長ければ長いほど卵子の老化も起こり、遺伝子情報を作り出す染色体やDNAなどにダメージが与えられ細胞分裂をする力も低下し、染色体異常が現れるということが原因の一つとされています。
そのためダウン症児の確率も20歳で1667分の1、30歳で952分の1、35歳で385分の1、40歳で106分の1、45歳で30分の1と、年齢とともに上昇します。
また女性だけではなく男性も40歳を過ぎると染色体異常の精子が増え始めるといわれています。射精のたびに数百万個の新しい精子が作られますが、その過程において遺伝コードにエラーを生じやすく、染色体異常が現れるといわれています。
ダウン症候群(21トリソミー)と出産年齢
ダウン症候群(21トリソミー)の出生頻度は、下表のように母親の出産時の年齢と関係することが分かっています。
出産時の母年齢 ダウン症の出生頻度 20 1,667人に1人 25 1,250人に1人 30 952人に1人 31 909人に1人 32 769人に1人 33 625人に1人 34 500人に1人 35 385人に1人 36 294人に1人 37 227人に1人 38 175人に1人 39 137人に1人 40 106人に1人 41 82人に1人 42 64人に1人 43 50人に1人 44 38人に1人 45 30人に1人 46 23人に1人 47 18人に1人 48 14人に1人 49 11人に1人 引用元: 厚生労働省「不妊に悩む方への特定治療支援事業等の あり方に関する検討会 」報告書 参考資料より 14.女性の年齢と子どもの染色体異常の頻度
高齢出産によりダウン症(21トリソミー)の出生頻度が上がる原因は、母体の加齢に伴い卵子形成の過程で染色体分離が正常におこなわれないためとされています。しかし、ダウン症(21トリソミー)発症のメカニズムは、すべてが解明されておらず、未だ研究途中であるといえるでしょう。
ダウン症候群(21トリソミー)の検査方法
ダウン症候群(21トリソミー)の診断は、出生前と出生後で検査方法が異なります。
エコーからわかる特徴とは
エコー検査とは
エコー(超音波)検査とは胎児がどのくらい成長しているか、異常はないかを調べる検査で、一般的に妊娠10~14週ごろ(初期超音波検査)、妊娠18~20週ごろ(中期超音波検査)、妊娠27~29週ごろ(後期超音波検査)に行われます。
検査方法としては経膣超音波検査(プローブを膣内に挿入)と経腹超音波検査(プローブをお腹の表面にあてる)があり、初期は経膣、ある程度赤ちゃんが大きくなると経腹で検査を行います。
X線などのように被ばくや注射などで妊婦さんの体を傷付けることもなく検査できることが特徴で、体の断面を写し出し骨や内臓などの状態を観察する2Dエコー、2Dの情報をコンピューターで再構築して着色し、立体的な画像として見せる3Dエコー、3Dエコーを動く画像として見せる4Dエコー、白黒の2Dエコーの血液の流れをカラーで写し出し心臓やへその緒の血流状態を見るカラー超音波があります。
エコー検査に見られるダウン症の特徴
検査時にダウン症の胎児に見られる代表的な特徴として、以下のものがあります。
NT(胎児項部浮腫)・・・胎児の首の後ろにリンパ液が溜まった状態で黒いスペースが見えることがあり、スペースが厚ければ厚いほど(目安は3.0mm以上)NTが厚くない赤ちゃんに比べてダウン症の確率または心疾患のリスクが高くなるとされています。
トリソミーやその他の異常がある胎児では正常胎児に比べてNTが大きくなる傾向がありますが、NTはどの正常な胎児にも見られるものであり、通常より厚くても正常染色体の場合もあったり見えなくても染色体異常の場合があります。
またNTは胎児が横を向いていたり角度によって変わりやすい値のため、2回以上測って最も大きい値を染色体異常のリスク計算に使います。
鼻の骨・・・鼻の骨が見えない胎児は、正常染色体では1~3%、ダウン症では60%に鼻の骨の欠損または低形成が見られます。
静脈管血流・・・へその緒から赤ちゃんのお腹に入り、心臓にまでの血管の途中の流れを計測し、逆流していないかを確認します。正常染色体胎児では3%、ダウン症児では65%に逆流が見られます。
三尖弁血流・・・赤ちゃんの心臓の右心房から右心室に通る血液を計測し、逆流していないかを確認します。正常染色体胎児では1%、ダウン症では55%に逆流が見られます。
手足の長さ・・・ダウン症は合併症として四肢短縮が起きる可能性があります。染色体異常により、体幹に比べて手足の長さが短いという特徴があるため、エコー写真で見られる可能性があります。
また検査時期ですが、11週以前の場合胎児が小さすぎたり臓器が超音波で観察できるほど発達していなく異常を見逃す可能性があるため、医師と相談しながら適切な時期に検査することをお勧めします。
これらの検査値を総合して染色体に異常がないかの可能性を出すことはできますが、超音波検査は確定検査ではないためこれだけでダウン症と確定することはできません。羊水検査などにより確定する必要があります。
羊水検査は妊娠16~17週ごろに行うことが多く、2週間ほどで結果が出るため妊娠20週目くらいまでにはダウン症であるかどうか判明します。
エコー検査により、ダウン症の判明はできませんが可能性の判断をすることができます。
検査は必須ではありませんが、万が一妊娠を続けない場合、母体保護法により妊娠22週未満(21週6日)までに手術を受けないといけないという法律もあります。
もしダウン症だったらどうするかの不安を少しでも軽減するために専門の医師に相談し、決められた週数以内に検査を受けることをお勧めします。
出生前検査(出生前診断)とは
出生前検査(出生前診断)とは、母体のお腹にいる胎児の染色体異常による先天性疾患を調べる検査となります。検査法によっては流産リスクもあるため、各検査法をよく知ることが大切です。
クアトロテスト
クアトロテスト(またはクアトロ検査)は血液検査の一種です。母親の血液中にある、4種類のマーカーを測定します。
- β−hCG
- 非抱合型エストリオール
- インヒビン
- αフェトプロテイン
クアトロテストは保険適用外とされますが、比較的安価な費用で受けられるのが特徴です。しかし精度は80%とそれほど高くなく、偽陽性が出る確率が5%であることも指摘されています。
NIPT(新型出生前診断)
NIPT(新型出生前診断)は、母体血液のみで検査がおこなわれます。胎児への直接的な侵襲(ダメージ)は、ほとんどないとされ、ダウン症候群(21トリソミー)に関しては感度・特異度ともに99.9%と高精度な検査法とされています。
一部のNIPT施設では、NIPT(新型出生前診断)を受けるために年齢制限などの条件を設けているところもあるため、事前に自身の条件と合うか調べる必要があります。
クアトロテストおよびNIPT(新型出生前診断)は、胎児の染色体異常による先天性疾患リスクの可能性を検出するスクリーニング検査(非確定的検査)です。確定診断のためには羊水検査がおこなわれます。
羊水検査
血液検査でダウン症の可能性が指摘された場合、確定診断のためには羊水検査が必要です。羊水検査は妊娠15〜16週目よりおこなうことが可能とされる検査です。
超音波検査により、胎児の位置と羊水の状態を調べながら母体腹部に注射針を穿刺し、羊水の採取をおこないます。その後、羊水に含まれている胎児の細胞から染色体を調べます。
細胞を培養して判定するため、結果が分かるまでは数週間かかるとされています。また、血液検査と比較すると母体への負担があるため、0.1〜0.3%(1,000人に1〜3人)の割合で流産する可能性がありますが、自然流産の確率と比べると特別リスクが高まるというわけではありません。
NIPT(新型出生前診断)は、遺伝子の量から染色体の数や全染色体領域部分欠失疾患をみる検査ですが、羊水検査は染色体そのものを羊水からみる検査です。
出生後のダウン症候群(21番染色体トリソミー)検査
出生前に染色体異常症に関する検査を受けなかった・結果が判明しなかった場合は、新生児の顔つきや身体的特徴を見たり、血液検査などによりダウン症の診断をおこないます。
ダウン症との診断を受けた場合は、新生児のもつ疾患や合併症など定期的に検査をおこない、症状の悪化を少しでも抑えることが重要といえるでしょう。
ヒロクリニックNIPTはダウン症候群(21番染色体トリソミー)単体検査も可能
NIPT(新型出生前診断)とは、妊娠約6週目(妊娠が超音波検査で確認されたとき)よりおこなうことができる出生前診断です。お母さんの血液を採取するだけの検査であることから、赤ちゃんへの直接的な侵襲(ダメージ)はないとされています。
ヒロクリニックNIPTは、染色体単体のNIPT(新型出生前診断)もおこなっております。そのため、ダウン症(21番染色体トリソミー)のみの、染色体異常による先天性疾患リスクを調べることが可能です。
また他のNIPT施設で双子のNIPT(新型出生前診断)を断られた妊婦さんも、ヒロクリニックNIPTにぜひ一度ご相談ください。ヒロクリニックNIPTでは双子やバニシングツインの場合もNIPT(新型出生前診断)を受け付けております。
NIPT(新型出生前診断)は、血液検査だけでおこなうことが可能とされています。しかし検査施設を選ぶ際は、NIPT(新型出生前診断)や染色体異常についてを、しっかり説明できる医師が在籍するかどうかが重要です。
ヒロクリニックNIPTは、全国に検査施設を設け、NIPT(新型出生前診断)に精通した日本産科婦人科学会専門医および出生前コンサルト小児科医、臨床遺伝専門医が在籍しています。染色体異常やダウン症について分からないこと、万が一、陽性であった場合、確定検査への移行についてなど、ご不安なことは何でもご相談ください。
ヒロクリニックNIPTのNIPT(新型出生前診断)で、少しでも早く胎児の健康状態を知り、健やかな妊娠期間と出産を迎えましょう。NIPT(新型出生前診断)やダウン症(21トリソミー)について詳しく知りたい方は、ヒロクリニックNIPTスタッフまで、お気軽にお問い合わせください。
【参考文献】
- 厚生労働省 – 21トリソミーのある方のくらし
- MSDマニュアル – ダウン症候群(21トリソミー)
- 発達なび – ダウン症とは?症状や具体的な特徴、生活の様子など
- mofmo – 猫もダウン症になる?!ダウン症の特徴を持つ猫とはいったい?
- メディカルノート – ダウン症とは?ダウン症の原因から経過まで
- 小児慢性特定疾病情報センター – ダウン(Down)症候群 概要
- 日本小児神経学会 – 染色体異常は遺伝するのでしょうか。
Q&A
-
Qダウン症とは何ですか?ダウン症候群(21トリソミー)は、21番目の染色体が通常より1本多いことによって引き起こされる遺伝子疾患です。これにより知的障害や身体的な発達の遅れが見られることが多いです。ダウン症の発症率は700人に1人とされています。
-
Qダウン症の特徴は何ですか?ダウン症の特徴には、顔の平坦な輪郭、小さい耳、鼻が低い、吊り上がった目、筋肉の低緊張などがあります。また、手のひらに一本の横線が見られることが多く、手や指が短い傾向があります。
-
Q高齢出産とダウン症のリスクは関係がありますか?母体の年齢が高くなるとダウン症のリスクは増加します。例えば、35歳の女性では385人に1人の確率でダウン症の子供が生まれるとされています。このリスクは年齢とともに上昇します。
ダウン症は、21番目の染色体が通常よりも1本多くなることから21トリソミーとも呼ばれます。新生児の染色体異常症では最も多いダウン症候群(21トリソミー)について、この記事で特徴や検査方法について医師が解説します。
記事の監修者
伊藤 雅彦先生
元医療国際福祉大学教授、前医療創生大学柏リハビリ学院長、日本遺伝子診療学会・日本遺伝子学会会員、他
略歴
1974年防衛医大入学
1979年、豪州シドニー大学医学部小児科(ロイヤルアレクサンドリア小児病院)にエクスターン留学
1980年防衛医大卒業(第1期生)。防衛医大小児科学教室に入局
防衛医大病院、自衛隊中央病院、北海道立小児総合保健センター新生児科、国家公務員共済組合連合会三宿病院小児科で勤務
1989年米国ハーバード大学医学部リサーチフェロー、米国タフツ大学医学部クリニカルフェロー
1993年埼玉医科大学短期大学小児科学講師
1994年埼玉医科大学小児科学講師
1997年国際医療福祉大学小児科学助教授、山王病院小児科勤務
2006年国際医療福祉大学特任教授(小児科学)
2008年イーハトーブ病院(岩手労災病院)名誉院長
2009年医療法人社団心の絆・蓮田よつば病院理事長
2010年医療法人銀美会銀座美容外科クリニック理事長
2011年医療法人社団鶴癒会新川病院院長
2011年学校法人医療創生大学千葉・柏リハビリテーション学院長
2014年医療法人葵会新潟中央透析クリニック院長
2016年医療法人葵会新潟聖籠病院副院長
2017年医療法人福聚会東葛飾病院院長
2018年医療法人葵会AOI国際病院国際部長
資格
医学博士、介護支援専門員(ケアマネジャー)登録、日本アレルギー学会認定医、日本医師会認定産業医、日本小児科学会認定医、日本レーザー医学会専門医試験合格、日本小児アレルギー学会評議員、日本小児心身医学会評議員、日米医学医療交流財団評議員、日本インターネット医療協議会評議員、日本コンピュータサイエンス学会理事、ナイチンゲールスピリット連盟理事長、NPO防衛衛生キャリアネット理事長、法務省黒羽刑務所医務部顧問などを歴任あるいは活動中
1998年9月、第10回日本コンピュータサイエンス学会学術集会を神奈川県横浜市パシフィコ横浜で会頭として主催
2011年5月から6月にかけて、宮城県気仙沼市立本吉病院にボランティア診療支援