アルギニノコハク酸リアーゼ欠乏症

アルギニノコハク酸リアーゼ欠乏症アルギニノコハク酸リアーゼ欠乏症

概要

尿素サイクルの三段階目の酵素がアルギニノコハク酸合成酵素(ASS)であり、シトルリンとアスパラギン酸からアルギニノコハク酸を合成します。ASS欠損症では高アンモニア血症とともに、血中シトルリンが高値となるためシトルリン血症I型(CTLN1)とも呼称されます。

疫学

53万人に1人との報告がある。

原因

ASS遺伝子の機能喪失型変異に起因します。日本人症例ではIVS6-2A>G、c.910C>T (p.R304W)変異の頻度が高いです。血中シトルリンが高値であることが特徴的ですが、シトルリン自体の臨床症状への関与は小さいと考えられています。

ASL遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

症状

新生児例は興奮性亢進、嗜眠、哺乳不良、多呼吸、嘔吐などが生後数日以内に出現し、けいれん、後弓反張、昏睡などをきたします。小児期例では反復性嘔吐、けいれんなどを呈します。女性成人例においては、妊娠中あるいは分娩後に高アンモニア血症による意識障害で発症することもあります。拡大新生児マススクリーニングの対象疾患であり、近年では極軽症例(血中シトルリンの上昇が極軽度であり、高アンモニア血症を認めない)も発見されています。

診断

(1)臨床症状・家族歴
①嘔気、嘔吐、意識障害、痙攣など非特異的な臨床症状
②新生児期における同胞の突然死

(2)検査データ
①血中アンモニア高値、新生児>120 μmol/L(200 μg/dL)、乳児期以降>60 μmol/L(100 μg/dL)以上
②アニオンギャップ:正常(<20)
③血糖:正常範囲(新生児期>40 mg/dL)

(3)特異的検査
①血中アミノ酸分析(シトルリン高値、アルギニン低値)、尿アミノ酸分析(シトルリン排泄増加。アルギニノコハク酸は認められない*)、尿有機酸分析(オロト酸排泄増加)
②酵素活性あるいは遺伝子解析における異常(1)のうち1項目かつ(2)の①を含めた2項目以上を満たす場合、尿素サイクル異常症が疑われ、確定診断のための検査を行います。診断の根拠となる(3)①もしくは②を認めるときASS欠損症と確定診断とします。

治療

代謝異常時の高アンモニア血症の迅速なコントロールと,、高アンモニア血症の再発および長期合併症を予防するための長期管理が必要です。
急性の高アンモニア血症エピソードでは、経口タンパク質摂取を中止し、経口摂取に脂質および/またはブドウ糖の静脈内投与を補充し, 窒素捕捉療法を静脈内投与で行います。
アンモニアレベルが正常化しない場合は、血液透析が次のステップとなります。
タンパク質の食事制限とアルギニンの食事補給が長期管理の柱であるこれらの措置に反応しない患者には、経口窒素除去療法を考慮します。
同所的肝移植(OLT)は、従来の内科的治療に抵抗性の高アンモニア血症の再発または代謝性悪化のある患者においてのみ検討します。

【参考文献】

難病情報センター – アルギニノコハク酸リアーゼ欠乏症