概要
難尿中にメチルグルタコン酸の排泄を来す疾患を総じてメチルグルタコン酸尿症と呼称されており、異質性が高く、現在5つの疾患群に大別されています。メチルグルタコン酸尿症I型は、メチルグルタコニルCoAヒドラターゼ欠損症を指します。メチルグルタコニルCoAヒドラターゼはロイシン代謝の5段階目に位置し、I型は常染色体劣性遺伝性の有機酸代謝異常症です。II型はBarth症候群、III型はCosteff症候群にあたります(それぞれX連鎖性劣性遺伝、常染色体劣性遺伝)。尿中にメチルグルタコン酸の排泄を認めながら、I、II、III型にあたらないものがIV型とされ、種々のミトコンドリア呼吸鎖異常症がIV型として報告されています。最近、拡張型心筋症と小脳失調を伴う疾患群(DCMA症候群)がV型と呼称されるようになりました(IV型、V型はミトコンドリア病として扱われています。)。
疫学
1,000 人に 1 人かいずれもきわめて稀で、I型の報告は20例に満たず、わが国では2例が確認されているのみです。
原因
I型はAUH遺伝子の変異、II型はTAZ遺伝子、III型はOPA3遺伝子の変異が原因です。この2つはミトコンドリアタンパクをコードする遺伝子であり、ミトコンドリア機能異常で尿中にメチルグルタコン酸が排泄される機序は不明です。
症状
①I型・小児期に非特異的神経症状で発症する。発語の遅れ程度のものから急性脳症、重度の精神運動発達遅滞に至る例まで報告されており、小児期における病像は一定しません。
・近年、成人で緩徐に進行する白質脳症を呈するI型症例が報告されました。認知症、小脳失調、視神経萎縮などを症状としています。
②II型・心筋症:多くの症例で心不全症状が乳幼児期までに顕在化し、心内膜線維弾性変化や緻密化障害を認めます。乳幼児期死亡の主因の1つです。心悸亢進程度の症状しかみられない軽症例もあります。
・周期性好中球減少:軽度から重度までみられ、新生児期には致死性の細菌感染が生じることもあります。
・骨格筋ミオパチー:近位筋を中心とした軽度から中程度の筋力低下
・低身長:-3SD~-2SD
③ III型・両側視神経萎縮:乳児期から認められます。眼振や斜視を伴うことがあります。
・舞踏病様運動、痙縮、失調:小児期後期から認められます。車いすの使用を要するようになる例もあります。
・一部に軽度の認知障害が認められ、成人期以降についても、上記のような各症状に対する対症療法が必要となります。
診断
I型、II型、III型ともDefiniteを対象とします。
治療
ミトコンドリア病の治療法は現在いろいろなものが開発されつつあります。カルニチンが有効という報告もあるが、逆に良くないという報告もあります。
症状軽減のための治療法、神経症状抑制剤や強心剤、心臓移植なども治療法の一つで、白血球減少には増量させる薬などが有効です。
治療の選択は、年齢、症状の種類などにより人それぞれであるため、主治医とよく相談して決定することが必要です。
【参考文献】
難病情報センター – メチルグルタコン酸尿症