本記事では、妊娠中に食べても良いお寿司のネタと控えるべきネタについて解説します。さらに、妊娠中のお寿司の食べ方の注意点や、よくある質問にも回答します。妊娠中の方や、これから妊娠を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
はじめに
お寿司は、日本を代表する食文化であり、妊娠中の方も楽しみたい食べ物の一つです。しかし、妊娠中は胎児の発育や健康に影響を及ぼすため、食品に関する注意が必要ですね。
特に、生の魚介類を使用するお寿司は、食中毒や水銀摂取のリスクがあります。本記事では、妊娠中の方がお寿司を食べる際に注意すべき点や、食べて良いネタ・控えるべきネタについて解説します。
妊娠中のお寿司で注意すること
お寿司は、生の魚介類を使用しているため、食中毒の危険性があります。食中毒は、胎児の発育に悪影響を与える可能性があるため、起こさないように注意することが望ましいです。
生の魚介類ネタによる食中毒の危険について
食中毒の原因となる細菌やウイルスは、鮮度や衛生状態が悪い場合に繁殖するため、飲食店の衛生管理が十分であるかを確認することが大切です。
生イカ(リステリア菌について)
生イカに含まれるリステリア菌は、妊婦が感染すると胎児に影響を及ぼすことがあります。感染すると、流産や早産、新生児の重度障害などが発生する可能性があるため、生イカの摂取は控えるべきです。
二枚貝(ノロウイルスについて)
二枚貝は、ノロウイルスの感染源として知られています。ノロウイルスは、嘔吐や下痢などの症状を引き起こすウイルスで、妊娠中の方が感染すると、胎児にも影響が及ぶことがあります。
ノロウイルスを死滅させるためには、中心温度85~90°Cで90秒以上の加熱が必要です。したがって、二枚貝は十分に加熱処理したものを食べるようにしましょう。
サバ、イワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマ、アジなど(アニサキスについて)
アニサキスは、サバ、イワシ、カツオ、サケ、イカ、サンマ、アジなどの魚介類に寄生する回虫の一種です。アニサキスに感染すると、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などの症状が現れることがあります。さらに、アレルギー反応を引き起こし、重度のアナフィラキシーショックを引き起こす可能性もあります。そのため、これらの魚介類の生食は控えるべきです。
生の魚介類や調理する過程での二次汚染による食中毒(腸炎ビブリオについて)
腸炎ビブリオは、海産物から感染する細菌で、生の魚介類や調理する過程での二次汚染によって食中毒を引き起こすことがあります。感染すると、下痢、腹痛、嘔吐、発熱などの症状が現れることがあります。生の魚介類や調理する過程での二次汚染を防ぐために、食材の新鮮さや調理時の衛生管理に十分に注意することが大切です。
水銀摂取のリスク
水銀は、環境中に広く存在しており、主に鉱山や工場からの排出によって水や土壌に放出されます。水銀は食物連鎖の中で蓄積されることが知られており、魚介類に含まれることが多いです。とくに、大型の肉食魚に多く含まれることがあります。
水銀は中枢神経系に影響を及ぼすため、摂取しすぎると健康に影響を与える可能性があります。胎児や乳幼児の場合、特に影響が大きいとされています。水銀を多く含む魚介類を妊娠中や授乳期の女性が摂取すると、胎児や乳幼児の神経発達に悪影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
水銀を多く含む魚介類
水銀を多く含む魚介類は、大型で食物連鎖の上位に位置する鯨、マグロ、カジキマグロ、サメや、深海魚のキンメダイ、クロムツなどが挙げられます。
妊婦さんは、マグロ類、サメ類、深海魚類などの水銀濃度が高い水産物を主菜とする食事の頻度を週1回以内(週におおむね80g程度以下)にすることをおすすめします。
栄養バランスの偏り
妊娠中は、胎児の発育に必要な栄養素を適切に摂取することが重要です。
お寿司は炭水化物とタンパク質に栄養素が偏りがちなので、副菜で野菜などを摂るようにし、バランスの良い食事になるよう心掛ける必要があります。
野菜不足・食物繊維不足
お寿司のみの献立では、野菜、食物繊維が不足してしまいます。わかめなどの海藻の味噌汁を添えたり、野菜サラダなどを一緒に食べるようにしましょう。
妊娠中は便秘になりやすいため、食物繊維を積極的に摂取することが重要です。
ビタミンAの摂りすぎに注意
ビタミンAは胎児の発育に必要な栄養素ですが、摂りすぎには注意が必要です。寿司ネタの中では、アナゴやウナギに特に多く含まれているため、過剰摂取にならないように気をつける必要があります。
ビタミンAの過剰摂取は、胎児の発育異常や先天性奇形の原因となることがあるため、適量を摂取するようにしましょう。
糖質・塩分の摂りすぎに注意
酢飯は、寿司酢が混ぜ込まれていることにより通常の米飯に比べて多くの糖質と塩分が含まれています。また、お寿司には醤油をつけて食べる事が多いので、塩分過多になりがちです。
糖質・塩分の過剰摂取は、妊娠中の体重増加や妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病などのリスクを引き起こすことがありますので、注意が必要です。
お寿司だけではない注意したい生もの
妊娠中には、お寿司以外の生ものでも注意が必要です。ナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモン、馬刺、生卵など、生の状態で摂取する食物には、サルモネラ菌やリステリア菌、ウイルス、寄生虫のトキソプラズマなどの病原が含まれている可能性があります。これらの病原は、胎児の成長に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。
トキソプラズマは、特に注意が必要な病原の一つです。猫、猫の糞尿などから感染することが有名ですが、生の肉、特に豚肉、ラム肉、牛肉などから感染することもあります。
トキソプラズマに胎児が感染した場合の症状としては、死産、流産、水頭症、脈絡膜炎による視力障害、脳内石灰化、精神運動機能障害などが知られています。出生時に無症状であっても、その後成人となるまでの間に症状が現れる可能性があります。
妊娠中にどうしてもお寿司が食べたいときは
妊娠中にお寿司を食べたい場合は、寿司ネタの種類を選ぶことで、安全に食べることができます。
妊娠中に食べても良いお寿司のネタ
以下のようなお寿司のネタは、妊娠中でも安全に食べることができます。
- かにやえび、タコ、ツナマヨなどの加熱された魚介類
- アボカドやカッパ巻き、納豆巻き、かんぴょう巻きなどの野菜のネタ
- 加熱された肉のネタ、玉子焼きなど
加熱されているといっても、衛生管理がしっかりされていて、新鮮であることが重要です。食べる前によく見て、異常がないことを確認してから食べましょう。
妊娠中に控えるべきお寿司のネタ
基本的に妊婦さんは生ものの摂取を避けるべきですが、特に妊娠中に控えるべきお寿司のネタとしては以下が挙げられます。
- 大トロや中トロ:大トロや中トロはマグロの脂肪部分であり、これにはメチル水銀が含まれているため、妊婦は避けるようにしましょう。
- イカ:生のイカには食中毒の原因となるリステリア菌や、アニサキスなどの寄生虫が含まれていることがあります。
- 生カキなどの二枚貝・ウニ:海水中の微生物プランクトンを食べて生育するため、海水中に含まれる細菌やウイルスを体内に蓄積することがあるため、食中毒の原因となることがあります。
まとめ
妊娠中には、食中毒のリスクを考慮して生ものを控えることが推奨されますが、加熱調理したものなどの安全に食べられるネタを選ぶことで、お寿司を楽しむことができます。
ただし、食べる前に必ず衛生状態を確認しましょう。また、妊娠中にはかかりつけの産婦人科医と相談し、栄養面も考慮した食事を心がけることが大切です。
胎児の健康状態はNIPT(新型出生前診断)で検査
NIPT(新型出生前診断)とは非侵襲的出生前遺伝学的検査とも呼ばれる出生前診断のことです。
”非侵襲”とあるように胎児への直接的な侵襲(ダメージ)はなく、母体血のみで赤ちゃんの染色体異常症リスク評価をおこなうスクリーニング検査となります。なお、NIPTはダウン症に関して感度・特異度ともに高精度な検査とされています。
ヒロクリニックNIPTはエコー検査で妊娠が確認できたら検査が受けられます。より健やかな妊娠期間と出産を迎えるために、受検を検討してみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
- 厚生労働省 – これからママになるあなたへ(リステリア注意喚起リーフレット)
Q&A
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Q妊娠中のお寿司、週に何回ならOK?妊婦さんは、水銀値が高い魚の摂取に注意が必要です。クロマグロやメバチマグロ、キンメダイなどの水銀値が高い魚は、1週間に80gまでに制限することが望ましいとされています。
一般的にお寿司一貫あたりのネタの量は15g程度ですから、マグロやキンメダイのお寿司の場合は、1週間に2~5貫程度が適量でしょう。 -
Q火が通っているアナゴやウナギだったら食べても大丈夫?妊婦のビタミンAの1日の摂取量は600μg程度とされていますが、アナゴは100gあたり890μg、ウナギの蒲焼きは100gあたり1500μg程度のビタミンAを含みます。
ビタミンAを摂りすぎると赤ちゃんの器官形成異常が起こる可能性が高くなるため、適度に食べるように心がけましょう。火が通っているアナゴやウナギであっても、食べ過ぎには注意が必要です。
本記事では、妊娠中に食べても良いお寿司のネタと控えるべきネタについて解説します。さらに、妊娠中のお寿司の食べ方の注意点や、よくある質問にも回答します。妊娠中の方や、これから妊娠を考えている方は、ぜひ参考にしてください。
記事の監修者
岡 博史先生
NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業