神経管閉鎖障害はいつわかる?葉酸との関係も解説【医師監修】

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神経管閉鎖障害は、妊娠初期に神経管の形成が障害されて起こる無脳症や二分脊椎などの疾患のことです。葉酸の欠乏が主な原因として知られています。この記事では神経管閉鎖障害の原因や症状、予防するために気をつけることについて解説していきます。

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神経管閉鎖障害とは

神経管とは、母親の子宮の中で赤ちゃんの脳と脊髄のもととなる部分で、妊娠6週ころに形成されます。受精卵の中で板のようなものの両端がくっついて閉鎖して神経管という管ができ、胎児の成長とともに頭側が脳に、足側が脊髄に、それを覆う組織が髄膜に発達していきます。

その神経管の発達が障害されて、管がうまく閉じなくなったために起こる病気が神経管閉鎖障害(神経管閉鎖不全)です。日本では1万人に6人程度の頻度で起こると推測されています。

神経管閉鎖障害の原因

神経管閉鎖障害を引き起こす原因はいくつかありますが、大きな要因はビタミンB群の一種である葉酸が妊娠中に欠乏することです。

その他には、特定の薬剤(抗てんかん薬であるバルプロ酸など)、糖尿病、肥満、妊娠前期の高熱発作などの環境因子や、遺伝因子が原因となると考えられています。

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神経管閉鎖障害の種類と症状

神経管閉鎖障害には主に、二分脊椎(にぶんせきつい)、無脳症、脳瘤といった種類があります。

二分脊椎

脳からの命令を体の各部位に伝える太い神経の束である脊髄は、本来脊椎(背骨のこと)の中を通っています。

しかし、二分脊椎では足側の神経管が閉鎖しなかったことにより、脊椎の骨(椎骨[ついこつ])が脊髄の神経を覆っていない状態になっています。最も起きやすいのは腰椎で、1つだけでなく複数の椎骨に異常が見られることもあります。

二分脊椎はさらに2つの種類に分類され、脊髄やそれを覆う髄膜が脊椎の外に出てしまっている顕在性二分脊椎と、脊髄が脊椎の中にとどまっている潜在性二分脊椎があります。顕在性二分脊椎はより重症で、主なものに脊髄髄膜瘤があります。

最も重症な脊髄髄膜瘤の場合、脳の内部に液体(脳脊髄液)がたまる水頭症、脳幹が障害されることにより生じる無呼吸や嚥下困難が出ることがあります。

筋力低下や麻痺により歩行困難になったり、尿失禁や尿路感染症などの排尿に関する症状、便秘や便失禁などの排便に関する症状も現れます。

無脳症

無脳症は、神経管の頭側が閉鎖しなかった場合に生じ、神経管閉鎖障害の中でも最も重症なものです。脳組織が発達できずに脳の一部または全部が欠損した状態で、流産や死産となるか、産まれたとしても生後数日〜数週で亡くなってしまいます。

脳瘤

脳瘤は神経管の閉鎖不全により、頭蓋骨の一部に穴が開いてしまい、本来頭蓋骨の中にあるべき脳や髄膜が頭蓋骨の外側に出てしまった状態です。

脳が損傷する脳瘤では、脊髄髄膜瘤と同じように脳の内部に液体がたまる水頭症や発達の遅れ、知的障害などの症状が現れます。

神経管閉鎖障害はいつわかる?

神経管閉鎖障害は、出生前の超音波検査、MRI検査や母体血清マーカー検査(クアトロテスト)で診断されます。これらの検査で神経管閉鎖障害を診断できるようになるのは、無脳症の場合は妊娠11〜14週頃、二分脊椎の場合は妊娠16週以降になります。

神経管閉鎖障害の診断

神経管閉鎖障害は多くの場合、超音波検査、MRI検査や母体血清マーカー検査(クアトロテスト)など出生前に発見することができます。

超音波検査(エコー検査)

胎児の形態異常を検出することができる超音波検査は、無脳症や二分脊椎の診断において非常に重要な検査です。妊娠11週頃には頭蓋骨の中に脳が無い無脳症や、妊娠16週以降には頭部や脊椎に形態の異常を認める二分脊椎を検出することが可能となります。

顕在性二分脊椎症の一つである脊髄髄膜瘤では、脳に水頭症や背中に隆起を認めたりすることで判断することができます。脳瘤では頭蓋骨から飛び出るような異常像を認めます。

超音波検査

MRI検査

超音波検査で脳や脊椎に形態異常の疑いを認めた場合、さらに診断を確定させる目的でMRI(核磁気共鳴画像)検査を行うことがあります。MRIは放射線を使用しないため、妊娠中も安全に行える検査の一つで、超音波検査では判断が難しい病変の検出に有用です。胎児が大きくなる妊娠18週以降に行うのが一般的です。

母体血清マーカー検査(クアトロテスト)

ダウン症などの他の先天性疾患の診断にも用いられるクアトロテストは、妊婦さんの血液を採取して血液中のα-フェトプロテイン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、非抱合型エストリオール、インヒビンAという4つの成分を測定して、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、神経管閉鎖障害の可能性を評価する検査です。

血液を採取するだけでできる簡便な検査ですが、クアトロテストのみで診断を確定させることはできないので、胎児超音波検査や胎児MRI検査、羊水検査などの結果と合わせて診断を確定させる必要があります。

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神経管閉鎖障害の治療

脊髄髄膜瘤に関しては、一般的には出生後24ないし48時間以内に露出部分の閉鎖手術を行います。水頭症に対しては新生児期にシャント術を行う必要もあります。

排尿障害に関しては、泌尿器科的な排尿管理や、歩行障害に対して装具を用いた整形外科的介入が必要になります。

神経管閉鎖障害と葉酸の関係

神経管閉鎖障害の予防には妊娠中の葉酸の摂取が欠かせません。ここでは神経管閉鎖障害の予防に対する葉酸の役割について説明していきます。

葉酸とは

葉酸とはビタミンB群の一種で、細胞を作るために必要なDNAやRNAなどの核酸やタンパク質の合成に重要な役割を果たしており、赤血球の産生や細胞分裂の活発な胎児の正常な発育に欠かせない栄養素です。ほうれん草の葉から発見されたことから「葉酸」と名付けられました。

葉酸が欠乏すると、この記事で説明している胎児の神経管閉鎖障害のリスクを高めるほか、巨赤芽球性(きょせきがきゅうせい)貧血という悪性の貧血になることが知られています。

食品では、ほうれん草の他に枝豆やブロッコリーなどの緑黄色野菜、いちご、アボカドなどの果物類、レバーなどに多く含まれています。

神経管閉鎖障害と葉酸の関係

なぜ妊娠前から葉酸の摂取が必要なのか

葉酸は神経管閉鎖障害の予防に非常に有効です。過去の疫学研究では、葉酸を十分に摂取することにより神経管閉鎖障害の発症を40〜70%も低下させたという報告もあります。

神経管は胎児の発達の早い段階に形成されるため(妊娠6週ころ)、妊娠を知るのは神経管ができる時期よりも遅くなります。そのため、神経管閉鎖障害を予防するには妊娠に気づく前の段階から十分な葉酸を摂取しておく必要があります。

厚生労働省からは、妊娠を計画している女性や妊娠の可能性のある女性は1日あたり400㎍(マイクログラム)の葉酸を摂取することが推奨されています。

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まとめ

神経管閉鎖障害は、神経管の形成が障害されて脳や脊髄の発達に異常が起こる疾患で、無脳症や二分脊椎などがあります。葉酸の欠乏が主な原因として知られており、妊娠前から妊娠初期にかけて十分な葉酸を摂取することにより、発症リスクの低下につながります。

【参考文献】

Q&A
よくある質問

神経管閉鎖障害についてよくある質問をいくつかまとめました。参考にしてみてください。

  • Q
    NIPT(新型出生前診断)で神経管閉鎖障害について調べられる?
    神経管閉鎖障害は遺伝子の異常が原因ではないので、NIPT(新型出生前診断)では調べることができません。

    NIPTでは、胎児の21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー(エドワーズ症候群)、13トリソミー(パトウ症候群)などの染色体異常を調べることができます。
  • Q
    神経管閉鎖障害の発症リスク低下に必要な葉酸の量は?
    厚生労働省からは、神経管閉鎖障害のリスクを低下させるために、妊娠を計画している女性や妊娠の可能性のある女性は1日あたり400㎍の葉酸を摂取することが推奨されています。

神経管閉鎖障害は、妊娠初期に神経管の形成が障害されて起こる無脳症や二分脊椎などの疾患のことです。葉酸の欠乏が主な原因として知られています。この記事では神経管閉鎖障害の原因や症状、予防するために気をつけることについて解説していきます。

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記事の監修者


岡 博史先生

岡 博史先生

NIPT専門クリニック 医学博士

慶應義塾大学 医学部 卒業

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