シェーグレン・ラルソン症候群

シェーグレン・ラルソン症候群シェーグレン・ラルソン症候群

概要

シェーグレン・ラルソン(Sjögren-Larsson・SLS)症候群は、先天性魚鱗癬に、四肢の痙性麻痺、ならびに精神遅滞を合併する魚鱗癬症候群の1つです。

常染色体劣性疾患の一種で、原因遺伝子は脂肪族アルデヒド脱水素酵素をコードするALDH3A2です。ALDH3A2は細胞内で生じた反応性の高い脂肪族アルデヒドを脂肪酸へ酸化し,無毒化すると考えられていますが,SLSの神経症状発症の根底にある分子メカニズムは不明のままでした。SLS患者は、脂肪アルコール:NAD +酸化還元酵素複合体の構成要素である脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼの活性低下により引き起こされる脂肪アルコール酸化を阻害します。

病原性ALDH3A2変異体により引き起こされる疾患として

  • 先天性魚鱗癬
  • 知的障害
  • 網膜変化
  • 精神遅滞
  • 痙性麻痺や四肢麻痺
  • 歯または骨変型

などの症例が多数報告されています。

魚鱗癬は分布が一般化されており、皮膚の組織学的特徴には、角質増殖症、乳頭腫症、表皮肥厚症、およびやや厚くなった顆粒層が含まれます。

シェーグレン・ラルソン症候群の出生前診断では、羊膜細胞と培養絨毛膜絨毛細胞の酵素学的研究、または胎児の皮膚生検の組織学的検査によって行うことができます。

疫学

劣性遺伝疾患で、罹患率は約10-20万人に1人程度です。

原因

脂肪アルデハイド脱水素酵素(fatty aldehyde dehydrogenase: FALDH)をコードするALDH3A2遺伝子の変異により、組織内に脂肪 アルコールや脂肪アルデヒドなどが蓄積することによります。

症状

先天性魚鱗癬は、先天性魚鱗癬様紅皮症、もしくは黒色表皮腫様の皮疹を呈します。皮疹は、頸部、腹部、間擦部、四肢で顕著となります。

四肢の痙性麻痺を伴い、精神遅滞は高度であることが多くみられます。眼科所見として眼底網膜の光輝性小斑点(glistening dots)がみられ、視力障害もみられます。また、歯牙形成異常もみられ、患者の皮膚由来線維芽細胞のFALDH、またはFAOの活性測定で確定診断が可能です。

ALDH3A2遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。

診断

先天性魚鱗癬以外にも、四肢の痙性麻痺、精神発達遅滞が見られる臨床所見から確定診断が可能です。

以下の①から③を全て満たす例を本症と診断します。

①先天性魚鱗癬

②痙性四肢麻痺

③精神発達遅滞

遺伝子診断

脂肪アルデハイド脱水素酵素(fatty aldehyde dehydrogenase; FALDH)をコードするALDH3A2遺伝子の変異の同定により診断します。

治療

先天性魚鱗癬は痒みをともなうため、止痒剤、保湿剤、角質溶解剤などを外用しますが、精神、神経症状については専門とする小児科医で診療を受ける必要があります。