常染色体劣性多発性嚢胞腎

常染色体劣性多発性嚢胞腎常染色体劣性多発性嚢胞腎

概要

常染色体劣性多発性嚢胞腎(Autosomal Recessive Polycystic Kidney Disease)は、腎の異形成を伴わない両側性びまん性嚢胞形成を特徴とする遺伝性腎疾患です。常染色体優性遺伝型多発性嚢胞腎(ADPKD)と同じく、疾患自体に対する治療法はなく、腎不全の治療や対症療法、合併症治療が主体となります。

疫学

頻度は1/10,000~40,000で、性差はありません。

原因

PKHD1(6p21.1-p12)の遺伝子変異によって、両側腎の腫大、胆管の異形成や門脈周囲の線維化を含む肝臓の異常が進行する、遺伝性嚢胞性腎疾患です。  

PKHD1遺伝子であれば当院のN-advance FM+プランN-advance GM+プランで検査が可能となっております。
原因
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症状

新生児期に、両側腎に直径2mm未満の小さな嚢胞が多数形成される腎集合管の拡張による腫大の症候を示します。

新生児期以後に発見される場合は、嚢胞形成と局所的な集合管拡張に加え、尿細管の萎縮や間質線維化病変を伴うなど、腎腫大の程度に差が生じます。また、肝脾腫の症候が顕在化することがあります。肝では、胆管の異形成肝内胆管の拡張や、門脈周囲の線維化が様々な程度で進行します。

診断

常染色体劣性多発性嚢胞腎は、「エビデンスに基づく多発性囊胞腎(PKD)診療ガイドライン2020」に基づき診断されます。

治療

腎の腫大が重症の場合は、血液透析、腎摘、腹膜透析療法の施行が考慮されます。嘔吐、下痢、悪心、発熱など症状がある際には、脱水に対する注意を要します。高血圧に対しては積極的な治療が必要です。アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)が使用されますが、これらでコントロールができない場合には、カルシウム拮抗薬も併用されます。腎不全が進行すると、透析治療や腎移植治療が必要となります。

予後

徐々に腎機能が低下し腎不全となり、透析治療や腎移植治療が必要となります。60歳頃までに約50%の人が腎不全になると言われています。また脳動脈瘤による、くも膜下出血を発症する危険性が高い(患者の10%)ことも注意点です。

【参考文献】