この記事のまとめ
逆子とは、胎児の頭が下にない状態をいい、医学用語では「骨盤位」と呼ばれます。子宮の形態異常や前置胎盤、低置胎盤、羊水過少・羊水過多などが原因となります。逆子体操と呼ばれる体操で、胎児が自分で回転するのを促すことができます。しかし子宮収縮を生じさせることがあるため、必ず医師に相談した上で行うようにしましょう。
逆子とは
逆子とは、胎児の頭が下にない状態をいい、医学用語では「骨盤位」と呼ばれます。
妊娠中期まで、胎児は子宮内でさまざまに体勢を変化させますが、妊娠週数が進み、体が大きくなると頭が重くなるため、頭を下に向けた「頭位」という状態に落ち着きます。このような状態にならないことを一般に逆子といいます。
逆子の原因
逆子の多くは原因不明であり、遺伝するかどうかも分かっていませんが、以下のことが逆子のリスクになると考えられています。
- 子宮の形態異常(子宮筋腫や先天的な形態異常)
- 前置胎盤や低置胎盤
- 羊水過少や羊水過多
- 多胎妊娠
- 骨盤の幅が狭い
- 子宮内胎児発育遅延
- 胎児の形態異常(水頭症や無脳症など)
- 前回の出産が帝王切開
逆子の種類
逆子にも胎児の体勢により、いくつか種類があります。
- 単殿位(たんでんい)・・・胎児がお尻を下に向けてV字型の姿勢をとっている状態。逆子の8割がこの胎位で、経腟分娩も可能ですが、初産の場合はほとんどが帝王切開の適応となります。
- 複殿位(ふくでんい)…胎児があぐらをかいた状態。足とお尻の部分が産道を通るときに頭より幅が大きくなってしまいます。経腟分娩も可能ですが、場合によっては緊急帝王切開になることもあります。
- 足位(そくい)…両足で立った姿勢(全足位)、片足で立った姿勢(不全足位)に分かれます。足から先に出て、頭が最後に出る形となり、胎児に危険がおよぶため、帝王切開での出産が一般的です。
- 膝位(しつい)…両膝をついた姿勢(全膝位)、片膝をついた姿勢(不全膝位)に分かれます。足位と同様の理由で、帝王切開での出産が一般的です。
- 横位(おうい)…胎児が横向きになっている状態です。肩や手が先に出てくることになり、これ以上に大きい頭は産道を通ることができないため、帝王切開での出産になります。出産までに頭位もしくは骨盤位に回転することがほとんどです。
逆子のリスク
脳の発達について
逆子だからといって、脳の発達に異常が出たり、形態的に異常が出たりする確率が高くなるとは考えられていません。
出産でのリスク
逆子の場合、早い時期に破水をしてしまう可能性が高くなるため、早産のリスクが高まります。また、破水をしたときに、胎児より先にへその緒が出てしまう臍帯脱出になる可能性も高くなります。
経腟分娩時に、赤ちゃんの頭が骨盤に引っかかってしまい、出産が難しくなる恐れもあるため、頭位での経腟分娩に比べ、リスクが高まります。状態によっては、帝王切開をすすめられたり、緊急帝王切開になったりすることもあります。
逆子と診断された場合
逆子は妊娠週数が進むにつれて、治ることが多いです。妊娠週数の早いうちは、あまり心配せず、経過をみていきましょう。
妊娠後期で逆子と診断されても出産日までに治ることも多くあります。また、逆子体操や外回転術などの対策もありますので、医師の指示に従いましょう。
逆子と診断される時期
妊娠初期
妊娠初期は赤ちゃんがまだ小さいため、子宮の中でぐるぐると体勢を変えます。そのため逆子となる場合が多くあります。
しかし、まだこの時期は胎児がお腹の中で動き回る時期ですので、健診時に逆子であっても一時的なものと考えてよいでしょう。
妊娠中はおなかの赤ちゃんのことが心配になったり、不安な気持ちになったりすることが多くあります。赤ちゃんの先天異常には染色体によるものがありますが、それらは出生前診断で調べることが可能です。
出生前診断にはいくつか方法があり、羊水検査や絨毛検査は確定診断のため、確実に調べることができますが、流産のリスクがあります。
NIPT(新型出生前診断)はお母さんの採血のみで調べることができ、確定診断ではありませんが、ダウン症(21トリソミー)は感度・特異度ともに99.9%の精度で調べることができます。
エコー検査で妊娠が確認できたら検査することができますので、ご不安がある方は検討してみるといいでしょう。
妊娠中期
妊娠中期までは妊娠初期と同様に、胎児は子宮の中で体勢を変えています。そのため、逆子となる場合が多くあります。
健診時に逆子と言われても、その後通常の位置に戻る方が多いため、心配しすぎず経過をみるようにしましょう。
また、妊娠中期には、胎動を感じ始めることが多いです。逆子の場合は足が下にあるため、胎動は下腹部の方で感じやすくなります。
妊娠後期
妊娠後期に入り、妊娠30週を超えた時期に逆子であった場合、逆子の診断がくだることが多いでしょう。
しかし、この時期に逆子であっても分娩の直前までに逆子が治ることもあります。逆子体操や外回転術など対策をとることもできますので、医師の指示に従いながら経過をみるようにしましょう。
ここまでみてきたとおり、逆子は妊娠の初めのころに問題になることはありません。では、いつまで経過をみていてよいのでしょうか。
妊娠中期までは様子をみて、妊娠後期に入っても逆子の場合は医師の指示に従い、逆子体操や外回転術などの対策を行うのがよいでしょう。
逆子の分娩方法
妊娠後期で逆子の場合、帝王切開になることが多いですが、単殿位や複殿位など条件によっては経腟分娩が可能です。しかし、そういった場合でも分娩途中で緊急帝王切開に切り替えなければならないこともあります。
逆子を治すためにできること
逆子体操と呼ばれる体操で、胎児が自分で回転するのを促すことができます。しかし、子宮収縮を生じさせることがあるため、必ず医師に相談した上で行うようにしましょう。
逆子の治し方「逆子体操」
- 胸膝位(きょうしつい)
四つん這いの姿勢から、頭、肘、胸を床につけて膝を立てて、お尻を高くします。顔を伏せて、お尻を高くした状態を10分〜15分程度保ちます。
- ブリッジ法
床にあおむけになり、両膝を立てて腰幅に開きます。お尻の下にクッション等を置いて腰の位置を高くした状態を10分〜15分程度保ちます。
- 側臥位(そくがい)
赤ちゃんの背中が上に来るようにして横たわります。
逆子が治らない場合
帝王切開
逆子の経腟分娩は、骨折・神経損傷などの分娩外傷、臍帯脱出からの新生児仮死・死産、分娩遷延による新生児仮死・死産など、さまざまなリスクを伴います。
これらのリスクを回避するため、多くの施設で逆子の分娩は帝王切開となります。
外回転術
逆子の治し方として、外回転術があります。こちらは病院で施術をしてもらう方法になります。
赤ちゃんがお母さんの頭側に上がるよう、下半身を持ち上げます。その後術者が超音波で赤ちゃんの向きを確認し、お母さんのおなかの外から赤ちゃんの頭とお尻をとらえ、回転させます。
施術時には、子宮の筋肉の緊張を緩めて赤ちゃんが回転しやすくなるよう、お腹の張り止めの点滴や、腹筋の緊張を和らげるために麻酔を用いるのが一般的です。
まとめ
妊婦健診で、逆子と指摘されると心配になってしまうことが多いと思いますが、多くは分娩までに正常な位置に戻ります。
妊娠後期で逆子と診断された場合でも、逆子体操や外回転術など対策法がありますので、過度に心配せずに医師の指示に従うようにしましょう。
また、最後まで逆子が治らなかった場合、経腟分娩が難しくなりますが、帝王切開で出産することが可能です。逆子はおなかの赤ちゃんの障害の原因になることはないと考えられていますので、過度に心配しすぎないようにしましょう。
記事の監修者
岡 博史先生
NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業