「早産」とは、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことを言い、早産になりかかっている状態のことを「切迫早産」と言います。切迫早産になった場合は、できるだけ長くお腹に赤ちゃんを留めて置けるように、安静を中心とした治療が必要になります。
この記事のまとめ
切迫早産とは早産の1歩手前のことで、早産とは妊娠22〜37週未満に赤ちゃんが生まれてしまったこと自体をいいます。早産がいつから助かるかの目安の時期は、赤ちゃんの体重が500gを超える妊娠22週であるとされています。早産と一口で言っても、妊娠22週で生まれたのか、それとも妊娠後期で限りなく正期産に近い状況で生まれたのかによって、その後の赤ちゃんの状況が大きく異なります。切迫早産や早産を防ぐためには、妊婦健診をきちんと受診することが最も大切です。
早産とは
早産とは、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことです。ちなみに通常の時期の出産(妊娠37週0日から41週6日までの出産)のことは「正期産」と呼びます。妊娠22週未満の出産では、赤ちゃんが生存不能であるとされており、残念ながら流産となってしまいます。
早産は全ての妊娠のうち、およそ5%に起こると言われています。早産には、早く陣痛が来て出産してしまう「自然早産」と、何らかの原因があって赤ちゃんが子宮内で生きられなくなり、やむなく人工的に出産させる「人工早産」があります。早産のうち、およそ75%が自然早産です。
切迫早産と早産の違い
切迫早産とは、早産になりかかっている状態、つまり早産の一歩手前のことです。子宮の出口(子宮口)が開きかけてしまい、適切な処置をしなければ今にも赤ちゃんが生まれそうな状態を指します。それに対し早産とは、妊娠22〜37週未満に赤ちゃんが生まれてしまったこと自体を言います。
早産の原因
早産の主な原因として、
- 細菌感染や子宮頸管無力症(出産の時期ではないのに子宮頸管がゆるんで子宮口が開いてしまう病気)
- 子宮自体の異常(子宮筋腫や子宮の奇形など)
- 妊娠高血圧症候群、前置胎盤(胎盤が子宮口を塞いでいる状態)
- 常位胎盤早期剥離(胎盤が子宮壁から剥がれてしまった状態)
- 胎児機能不全(胎児が健康ではない状態)
などがあります。
また、早産は母体側の問題だけでなく、赤ちゃんの先天性感染症や、染色体異常症があるとされています。ヒロクリニックNIPTはお母さんの血液を採取するだけで、赤ちゃんの染色体異常のリスクを早期発見することができるNIPT(新型出生前診断)を行っております。
早産の傾向
以下のような方は早産になりやすいことがわかっています。
- 母体の年齢(35歳以上、未成年)
- 前回の出産から半年以内の妊娠
- これまでの妊娠で早産になったことがある人
- 子宮頸管が短い人
- 子宮頸部円錐切除術を受けたことがある人
- 多胎(双子や三つ子など)
- 細菌性腟症(腟内の感染の一つ)
- 超音波検査で子宮の出口が短くなっていることが確認されている人
また、喫煙や痩せすぎ(BMI18.5以下)、長時間労働・重労働なども、早産になりやすい傾向がありますので注意が必要です。
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母体へのリスク
母体へのリスクは、子宮の感染がなければ通常の出産と変わりありません。
赤ちゃんへのリスク
赤ちゃんへのリスクは、生まれた週数とその時の体重によって異なります。週数が早ければ早いほど、赤ちゃんが死亡する確率が高くなります。お腹の中にいる期間が短いと、体重が少ないままだからです。
体重が少ない状態で生まれた場合は、まだ身体の臓器や組織が十分発達しておらず自分で呼吸ができません。したがって、生きていくためには人工呼吸器などでの補助が必要となり、長期間にわたって新生児集中治療室(NICU)で治療を行うこととなります。
また、出生時の体重が少なければ少ないほど、後遺症が残る確率も高くなることがわかっています。一概には言えませんが、脳性麻痺などの重い後遺症が残る確率は、体重が1000g未満の赤ちゃんだと10~20%とかなり高くなっていますが、1500g以上の場合は5%未満であるとされています。
早産は、いつから助かるのか
早産がいつから助かるかの目安の時期は、赤ちゃんの体重が500gを超える妊娠22週であるとされています。したがって妊娠21週6日までの出産は、残念ながら生まれた赤ちゃんがその後生きることが難しいとされており、流産と呼ばれて区別されます。
週数別・早産の状態と生存率
早産と一口で言っても、妊娠22週で生まれたのか、それとも妊娠後期で限りなく正期産に近い状況で生まれたのかによって、その後の赤ちゃんの状況が大きく異なります。
妊娠 25週の早産
妊娠24~25週での早産の赤ちゃんの生存率は、86.5%です。この頃の赤ちゃんの体重は平均で600~700g台まで増えており、現代の医療では、出生時体重が700g以上あると約90%以上の生存率が見込めるとされています。出産後は長期間NICUでの治療が必要となります。
妊娠30週の早産
妊娠30~31週での早産の赤ちゃんが助かる確率は97%以上であり、ほとんどの赤ちゃんが無事に退院することができます。
ただし赤ちゃんが自力で呼吸できるようになるのは妊娠34週頃と言われており、まだ人工呼吸器の助けが必要な状態です。出産後はNICUでの治療が必要となります。
妊娠 6 か月の早産
妊娠6か月ということは、週数でいうと妊娠20〜23週にあたります。
つまり、妊娠6か月の前半部分(妊娠20〜21週)に出産した場合は早産ではなく流産という扱いとなります。22〜23週で生まれた赤ちゃんはまだ身体の機能が出来上がっておらず、自力で呼吸もできないことから、長期間のNICUでの治療が必要となります。また、早産の赤ちゃんほど、後で重い障害が出てくる可能性が高くなります。
したがって、妊娠6か月で切迫早産の可能性がある場合には、赤ちゃんができるだけ長くお腹の中にいられるように、必要に応じて入院治療や自宅安静での治療を行います。どうしても妊娠が維持できず出産が避けられない場合には、NICUのある専門の病院へ救急搬送となることがあります。
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妊娠 7 か月の早産
妊娠7か月ということは、週数でいうと妊娠24〜27週にあたります。
赤ちゃんの体重は少しずつ増え、身体や臓器の機能も発達してきていますが、まだ完全ではありません。特に眼の機能が発達しておらず、妊娠28週未満で生まれた赤ちゃんは新生児網膜症となる確率が高くなっています。
妊娠6か月での早産と同様に、この時期に早産の可能性がある場合には、赤ちゃんができるだけ長くお腹の中にいられるように治療を行います。どうしても早産が避けられない場合には、NICUのある専門の病院へ救急搬送となることがあります。
妊娠 9 か月は切迫早産
妊娠9か月ということは、週数でいうと妊娠32〜35週にあたります。
この頃になると、赤ちゃんの体重が2000gを超えてくることも珍しくありません。妊娠34週未満で生まれた赤ちゃんはNICUでの治療が必要になることが多いですが、中には特別な医療的処置の必要がない赤ちゃんも少なくありません。
ただし、呼吸や哺乳に障害が出たり、黄疸などの症状が出ることがある他、発達の遅れが見られることがあるので、注意深い経過観察が必要となります。
妊娠の後期の切迫早産
妊娠後期に切迫早産を疑う症状としては、出血やおりものの変化、お腹のはりなどがあります。
早産にならないために気を付けること
切迫早産や早産を防ぐためには、まず妊婦健診をきちんと受診することが最も大切です。妊婦健診では切迫早産の傾向がないかなどもチェックしていますので、安静や減塩などの指導があった場合にはきちんと指示を守りましょう。
日頃から無理をしない妊娠生活を心がけることも重要なことです。医師から「安静に」と指示が出た場合、仕事をしている方は職場と相談し、休暇を取ることが望ましいです。家事についても、可能なものは家族に任せましょう。
どうしても仕事や家事をやらなくてはならない場合は、長時間立ちっぱなし・前かがみの姿勢を避けること、重いものを持たないことを徹底しましょう。体を冷やさないようにするのも効果的です。
また、喫煙は早産の理由となります。お腹に赤ちゃんがいるのに禁煙できていない方は、今すぐ禁煙しましょう。
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まとめ
以上、早産とは何か、早産と切迫早産の違い、週数別の早産の状態と生存率、そして早産にならないために気をつけたいことをまとめました。
出血やおりものの変化、お腹の張りなど切迫早産を疑う兆候があれば、かかりつけ医で早めに診察を受けましょう。
10分ごとの規則的な子宮収縮や破水がある場合は、出産時期近くではなくても、すぐに病院に連絡しましょう。
【参考文献】
- 公益社団法人日本産科婦人科学会 – 早産・切迫早産
- 今日の臨床サポート – 切迫早産
- 厚生労働省 – 低出生体重児保健指導マニュアル
- Medical Note – 早産とはなにか? – 早産にはどのようなリスクがある?
「早産」とは、妊娠22週0日から妊娠36週6日までの出産のことを言い、早産になりかかっている状態のことを「切迫早産」と言います。切迫早産になった場合は、できるだけ長くお腹に赤ちゃんを留めて置けるように、安静を中心とした治療が必要になります。
記事の監修者
岡 博史先生
NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業