『どんな病気をもって、男の子は生まれてくるの?』
『赤ちゃんがXYY症候群とわかって、これから不安しかない』
このような疑問や悩みを解決するコラム記事です。
この記事のまとめ
XYY症候群は1000人に1人で発生し、男性のみにおこる病気です。胎児のうちからXYY症候群と決まっているので、後天的になりません。症状として発話の遅延や、自閉症スペクトラム障害などが挙げられます。XYY症候群には治療法はないため対症療法で治療するのが良いでしょう。
親の行動により、子どもの人生が大きく左右される可能性がある
疑問や悩みの解決策は、子どものために勉強するしかありません。
なぜなら、あなたがもっている知識によって、子どもに提供できるものが変わるからです。
本記事は、XYY症候群(ヤコブ症候群)についてカンタンに解説しています。
※以下、XYY症候群と表記。
- 妊娠中のお母さん
- XYY症候群の知識を、カンタンに知りたい人
- 赤ちゃんがXYY症候群と診断された人
へ役立つ情報です。
知識がなければ、子どもがXYY症候群の症状に苦しんでいる最中なのに、親として気がついてあげられません。
さらに、『赤ちゃんが生まれつき病気』という不安な気持ちは、妊娠中のお母さんの身体にストレスをあたえます。
知識があれば、対処方法がわかります。
対処が早いので、子どもが症状に苦しむ期間が少なくなるでしょう。
何をしたらいいのかがわかっていれば、お母さんの不安な気持ちも少なくなりますよね。
赤ちゃんの人生とお母さんの健康のため、本記事でXYY症候群の知識を学んでみませんか?
XYY症候群は、生命にかかわるものではない【特徴やリスク】
特徴は、軽度な症状
XYY症候群で現れる特徴は、日々の生活に影響しないものが多いです。
ほとんどのXYY症候群の症状は、軽度だからです。
たとえば、
- 身長が平均以上
- 家族と比較したIQが、10~15ポイント低い
- 性的発達にも影響はない(子孫を残せる)
XYY症候群とわからないまま一生を終える人もいます。
学校や社会的な人間関係の構築も問題がなく、成功したキャリアや家庭をもつ人もたくさんいます。
XYY症候群は遺伝しにくい
あなたやあなたの子どもがXYY症候群である場合、次世代にXYY症候群は遺伝しにくいでしょう。
理由は、XYY症候群の発生がランダムとされているからです。
言い方をかえると、健常者同士のカップルからもXYY症候群の男児が生まれる可能性があります。
現れやすい症状
XYY症候群で現れやすい症状は、
- 学習障害
- 発話の遅延
- 注意欠陥・多動性障害(ADHD)
- 自閉症スペクトラム障害
- 喘息
- ニキビ
- 歯の問題(平均より歯が大きい)
上記の症状は必ず現れるわけではなく、人により個人差があります。
たとえば、2つ現れる人もいれば、まったく現れない人もいます。
症状が現れた場合でも、親がきちんと対処しサポートしていけば、健常者とかわらない生活がおくれるでしょう。
XYY症候群とは、性染色体異常の1つ
別名、ヤコブ症候群やスーパー男性、YY症候群といわれます。
XYY症候群は1000人に1人で発生し、男性(男児)のみにおこる病気です。
胎児※1のうちからXYY症候群と決まっているので、後天的になりません。
※1 胎児:母親のお腹の中にいて、まだ生まれていない子
性染色体異常とは、設計図の異常
性染色体異常とは、ヒトがもつ染色体のうち、性染色体に異常がでる現象です。
性染色体はヒトの細胞※2の中にあります。
ヒトの身体をつくる情報が記録され、その情報をもとにヒトの身体がつくられます。
たとえるなら、ヒトの身体の設計図。
設計図に異常があれば、つくられる身体にも影響がでます。
※2 細胞:さまざまな身体の部分をつくっている一番小さい部品のようなもの。皮膚や内臓、筋肉や髪の毛にいたるまで、身体のすべては細胞が集まってできています。
ヒトの正常な染色体(46本)=常染色体(44本)+性染色体(2本)
ヒトがもつ染色体は、常染色体と性染色体にわけられます。
健常者であれば、ヒトの常染色体は44本、性染色体は2本とされています。
性染色体と表記の仕方について【XとYの組みあわせで性別が決まる】
ヒトの性染色体はX染色体(以下X)やY染色体(以下Y)の2種類。
性別を決定するものです。
2本の性染色体が、
- XとX(XX)なら女性
- XとY(XY)なら男性
健常者であれば、46,XY(男性)か46,XX(女性)と表記されます。
46本の染色体をもち、性染色体がXYかXXであるのを意味します。
対し、XYY症候群では性染色体が1つ増え3本になります(正常は2本)。
性染色体が1本増えるので、染色体の合計は47本ですよね。
XYY症候群は47,XYYと表現されます。
47本の染色体をもち、性染色体がXYYであるのを意味します。
クラインフェルター症候群との違い
男性(男児)のみにおこる性染色体異常の1つに、クラインフェルター症候群があります。
クラインフェルター症候群とXYY症候群の大きな違いは、
- 性染色体の種類(クラインフェルター症候群はXXY)
- クラインフェルター症候群の男性は、生殖能力のないケースがほとんど
クラインフェルター症候群の男性は無精子症がおおいので、子どもを授かるには顕微授精をする必要があります。
性染色体異常は、染色体の不分離がランダムに発生【原因】
では、ランダムに何が発生すると、XYY症候群になるのでしょうか。
答えは、減数分裂中の染色体の不分離。
XYY症候群では、染色体の不分離がおこり、Yが正常よりも1本多くなります。
減数分裂とは、精子や卵子をつくるための細胞分裂
精子や卵子をつくるため、ヒトの細胞は減数分裂をします。
減数分裂した細胞が、精子や卵子へ変化します。
男性の精子と女性の卵子が受精し、成長すると、胎児になります。
減数分裂は性染色体を半分にしている
ヒトの精子や卵子をつくる際に、細胞の性染色体の量を半分にしています。
なぜなら、性染色体の数を一定にするためです。
具体的には、
- XX(女性)の細胞なら、Xの細胞とXの細胞に分かれ、卵子になります
- XY(男性)の細胞なら、Xの細胞とYの細胞に分かれ、精子になります
※わかりやすくするため、減数分裂初期におけるコピー(複製)の過程を省略しています。
XかYの精子(父親)から1つ、女性のXかXの卵子(母親)から1つ、子どもに性染色体が受けつがれます。
仮に、細胞が減数分裂をせず、XXやXYのままで精子や卵子をつくるとしましょう。
子どもの性染色体はXXYXやXXXXなど、4本になってしまいます。
この場合、後世に受けつぐほど無限に性染色体が増え続けるでしょう。
ヒトの性染色体は2本なのに、つじつまが合いません。
つまり、減数分裂をしているので、ヒトの性染色体は2本に維持できているのです。
染色体の不分離が、過剰なYをもつ精子をつくる
染色体の不分離とは、染色体がきちんと精子や卵子に分配されない事象で、減数分裂中におこります。
精子や卵子が完成したときの正常な性染色体は、XやYを1本だけもつ状態です。
つまり、1つの細胞に1本の性染色体が存在します。
しかし、染色体の不分離は、精子や卵子がXXやYYの状態。
たとえば、YYの精子がXの卵子と受精したとしましょう。
こうなると、胎児の性染色体はXYYになります(XYY症候群)。
正常なXYと比べて、過剰になったYがヒトの身体に影響をあたえています。
YYの精子について【分裂前にコピーし、性染色体が2倍になっている】
YYをもつ精子をつくるには性染色体の数が足りないと、疑問を感じませんでしたか?
女性と男性が受精する場合、
- Xの卵子が2つ
- Xの精子とYの精子が1つずつ
とわかりやすくするため、あえて上述しました。
しかし、正常な減数分裂では、
- Xの卵子4つ
- Xの精子が2つ
- Yの精子が2つ
これは、分裂をする前にコピー(複製)をして、性染色体の量を2倍に増やしているからです。
性染色体の数が2倍に増えた状態で、染色体の不分離がおこるので、YYをもつ精子ができます。
治療はできない、対症療法の提供が親の役目
XYY症候群を根本から治療はできません。
なぜなら、性染色体そのものを入れかえる治療法が発見されていないからです。
XYY症候群の症状がでた場合、対症療法を子どもに提供してあげるのが、親の役目でしょう。
代表的な症状の対症療法
発話の遅延
発話の遅延には、療育(りょういく)が推奨されます。
療育とは、障害をもつ子どもが自立できるように助けるシステムです。
発話の遅延における療育は、言葉の理解や言葉をだすための発達を促す目的。
具体的には、聞き取りや発音の練習をおこないます。
療育は病院にプログラムが存在する場合や、療育に特化した療育センターがあります。
お住まいの地域のどこにあるのか、今から確認しておきましょう。
自閉症スペクトラム障害
療育をおこないます。
他の対症療法として、以下の様なことが挙げられます。
- 薬物治療
- 応用行動分析(ABA)
- ホルモン療法
薬物治療
薬物治療は、パニックがおこるときに検討されます。
パニックによって自傷行為や興奮、攻撃性など生活に支障をきたす場合、薬物治療を使用します。
応用行動分析(ABA)
応用行動分析(ABA)とは、子どもの行動が何を『きっかけ』におこなわれているかを分析する方法。
分析により、『きっかけ』がわかれば子どもにとって良い行動をおこさせやすくなります。
悪い行動の『きっかけ』がわかれば、『きっかけ』を失くし、子どもの悪い行動を減らせるでしょう。
ホルモン療法
ホルモン療法として注目されているのは、オキシトシンです。
経鼻スプレー(鼻の穴の中へスプレーする)としてのオキシトシンは、対人コミュニケーション問題の解決につながる可能性があります。
注意欠陥・多動性(ADHD)
ADHDの治療は、
- 行動の介入
- 環境の介入
- 薬物治療
の3つを組みあわせておこないます。
特に、行動の介入と環境の介入は親のサポートを必要とする治療です。
行動の介入
行動の介入は、子どもの行動に対し、親が明確な反応し、子どもの行動をコントロールする方法。
一例として、子どもが褒められる行動をしたら褒めたり、報酬をあたえたりします。
対し、子どもが好ましくない行動をしたら、叱咤して、行動をおこさせないようにします。
環境の介入
環境の介入は、子どもが集中できる環境をつくるための対処方法。
なぜなら、ADHDの子どもは集中しづらいからです。
たとえば、教室での机の位置や掲示物の数を調整するなど。
薬物治療
薬物療法はメチルフェニデートが有効と示唆されています。
ADHDの不注意や多動性、衝動性を軽くする可能性のある薬です。
非確定的検査の後、確定的検査【出産前の検査方法】
非確定的検査は流産や死産のリスクが少ない
リスクが少ない理由は、母体採血のみでおこなわれる検査だからです。
XYY症候群の非確定的検査に、NIPT(新生児出生前診断)が知られています。
非確定的検査はXYY症候群と確実にわかる検査ではありません。
しかし、お母さんや赤ちゃんにリスクが少ないので、まず調べてみたい方に推奨される検査です。
NIPT(新生児出生前診断)
妊娠初期(通常は妊娠10週以降)以降の血液の採取をします。
結果は2日~10日前後で判明し、費用は約7万円が相場です。
診断結果は『陽性』、または『陰性』と診断されます。
確定的検査は流産や死産のリスクがある
なぜなら、羊水や絨毛を採るには、身体の深い部分にまで針を刺すからです。
針により、破水や出血、赤ちゃんを傷つけてしまうリスクもあります。
確定的検査をするのは、NIPT(新型出生前診断)の結果が陽性のとき。
確定的検査には、
- 絨毛検査(じゅうもうけんさ)
- 羊水検査(ようすいけんさ)
があります。
早い対処で、子どもは症状に苦しまず生活できる
あなたの子どもが快適に生活できるよう、親として今からできることがあります。
赤ちゃんが生まれる前に、病気の知識や子どもの遺伝子情報を知っておきましょう。
なぜなら、症状がでたら、すぐに対処ができるからです。
具体的な準備として、
- 他のブログ記事をみて、知識を蓄える
- 妊娠中にNIPT(新型出生前診断)で検査をする
通常のNIPT(新型出生前診断)で、XYY症候群は検査しにくいでしょう。
しかし、【XYY症候群(ヤコブ症候群)】は、ヒロクリニックNIPTのNIPT(新型出生前診断)で検査可能です。
具体的には、性染色体検査でわかります。
あなたの子どもが症状に苦しめられないように、生まれる前から準備してみませんか?
【参考文献】
- kidshealth – XYY Symdrome
- アメリカ国立図書館 – 47,XYY syndrome
- MSDマニュアル – 47,XYY症候群
- 琉球大学医学部医科遺伝学 – 疾患詳細
- 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構 – 世界初自閉スペクトラム症へのオキシトシン経鼻スプレーの治療効果を検証しました
- 厚生労働省 – ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療
記事の監修者
岡 博史先生
NIPT専門クリニック 医学博士
慶應義塾大学 医学部 卒業