STRを用いた尤度比の計算方法

STR(Short Tandem Repeat)を用いた尤度比(Likelihood Ratio, LR)の計算方法は、主に親子鑑定や法医学で使用され、特定の仮説(例えば、ある人物が子供の父親である)を検証するために行われます。

尤度比(LR)とは?

尤度比(LR)は、2つの仮説に基づいて、ある遺伝的証拠がどれくらい有力かを示す指標です。通常、次の2つの仮説に基づいて計算されます。

  • 仮説1(H1): 被検者Aが子供の生物学的な父親である。
  • 仮説2(H2): 被検者Aが子供の生物学的な父親ではなく、無関係な人物である。

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STRを用いた尤度比の計算

STRは、特定の遺伝子座における繰り返し配列の数(アリル)を比較します。親子鑑定では、子供の遺伝子座(アリル)と被検者のアリルを比較し、一致度を評価します。以下のステップで尤度比を計算します。

1. 仮説1(H1)の尤度計算

H1: 被検者Aが父親である場合
被検者Aが父親である場合、子供が父親から特定のアリルを受け継ぐ確率は1/2です。これは、父親の2つのアリルのうち、どちらか1つを子供が受け継ぐ確率が1/2だからです。

2. 仮説2(H2)の尤度計算

H2: 被検者Aが父親でない場合
この場合、子供のアリルが無関係な個人と一致する確率は、集団内のそのアリルの頻度に依存します。これは遺伝子データベースなどから推定され、集団におけるそのアリルの出現頻度(例えば、0.05など)が用いられます。

3. 尤度比の計算

尤度比(LR)は、2つの仮説の下で得られた証拠の尤度の比として計算されます。

  • H1(父親である場合)の尤度 = 1/2
  • H2(父親でない場合)の尤度 = アリル頻度(例えば、p)

したがって、LRは次のように計算されます。

この計算を各遺伝子座ごとに行い、すべての遺伝子座のLRを掛け合わせて最終的な尤度比を得ます。

4. 複数の遺伝子座に対するLRの計算

STR分析では通常、複数の遺伝子座を使用します。例えば、13~20個の遺伝子座でLRを計算し、それぞれのLRを掛け合わせて全体のLRを求めます。

5. LRの解釈

  • LRが1より大きい場合: 被検者Aが父親であるという仮説(H1)が、父親でないという仮説(H2)よりも有力であることを示します。例えば、LR = 1000であれば、父親である仮説が父親でない仮説より1000倍も支持されることになります。
  • LRが1より小さい場合: 父親でないという仮説(H2)がより有力であることを示します。

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ある遺伝子座で、子供と被検者Aのアリルが一致し、集団におけるそのアリルの頻度が0.05だとします。

  • H1(父親である場合)の尤度 = 1/2
  • H2(父親でない場合)の尤度 = 0.05

この場合のLRは次のようになります。

この遺伝子座だけで見た場合、被検者Aが父親である可能性は、父親でない可能性よりも10倍高いことを示します。

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まとめ

  • STRを用いた尤度比(LR)は、DNA鑑定において、2つの仮説に基づいて証拠を比較し、どちらの仮説が有力かを定量的に示す方法です。
  • LRは1つの遺伝子座ごとに計算され、最終的にはすべての遺伝子座のLRを掛け合わせて総合的なLRを求めます。
  • LRが1以上であれば、被検者が父親である可能性が高く、LRが1未満であれば父親でない可能性が高いことを示します。

この方法により、親子関係の鑑定や個人識別の精度を高め、科学的根拠に基づいた判断が可能になります。

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