「めまい」と「耳鳴り」は特定の病気ではなく様々な症状のことです。めまいであれば歩くとフラフラする、耳鳴りであればキーンと音が聴こえるなどが挙げられます。この記事では自然治癒の難しい、めまいや耳鳴りの原因と治療法を医師が解説します。
目次
めまいと耳鳴りの症状とは
「めまい」と「耳鳴り」の症状(感覚)には個人差があり、その原因もそれぞれ異なるとされています。例えば、めまいであれば患者Aは「地面がグルグルと回転して吐き気がする」ことを訴え、患者Bは「歩くと左右から引っ張られるような感じで真っ直ぐの歩行が難しい」などが挙げられます。
耳鳴りの場合も患者Aは「日中に微かにドクドクと心音のように聴こえる」と我慢できるレベルの症状であり、患者Bは「大きなキーン音が鳴り止まず会社に行けない」と深刻な症状を訴えるケースなどが挙げられます。めまい・耳鳴りの症状や原因は一人ひとり異なることから、診断や治療、改善に時間を要することも少なくありません。
めまいの特徴として、耳鳴りを同時に発症することもあり、いずれの症状も仕事や家事など日常生活に支障をきたすといえるでしょう。また、吐き気や嘔吐を伴うめまいの場合は外出や人と会うことが困難となり、うつ状態になることもあるため早めの受診が必要です。
めまいと耳鳴りは年齢や性別を問わず起こる症状です。しかし、1ヶ月以上症状が続く慢性的なめまいは高齢者に多いとされています。
おもなめまいの症状
- 回転性めまい(自身や周囲が動いているような感覚)
- 浮動性めまい(ふわふわと足元が浮くような、気が遠くなるような感覚)
- 平衡障害(バランス感覚が失われるような感覚)
- 頭にモヤがかかったりクラクラする感覚
- ふらつく
めまいや耳鳴りの原因
めまいは平衡感覚に関係する、「内耳」「脳幹と小脳」「耳と脳幹・小脳をつなぐ神経路」に生じた何らかの原因によって症状が引き起こるとされています。
内耳とは聴覚器官と平衡器官という2つの主要部位から構成されています。どちらも内耳神経といい脳につながり、音や平衡感覚の信号を伝える役割をもちます。複雑な内耳の構造のいずれかが障害されることで、めまいや突発性難聴・聴力の低下、耳鳴りなどを引き起こすとされています。
めまい検査とは
ヒトが平衡を保つためには「眼」「内耳」「手足などの筋肉」と3つの器官から集めた情報を脳に正しく伝達し、脳は受け取った情報を身体の各部位に命令を送る必要があります。
また、めまいの症状と原因は数多くあり、内耳の病気のほか、頸椎の障害や脳出血・脳腫瘍、血液や血圧の病気などを調べることが重要です。これらのことから、めまいの治療をおこなうためには耳鼻咽喉科や内科を単体で受診するのではなく、総合医療クリニックでしっかりめまい検査をおこないましょう。
- 血液および血圧の検査 ・レントゲン検査 ・聴覚検査 ・平衡検査 ・ 眼振(がんしん)検査
- 温度刺激検査 ・電気眼振図検査 ・重心動揺検査など
めまいと耳鳴りを伴うメニエール病とは
メニエール病とは、めまいと耳鳴りを伴う耳の病気です。メニエール病の一般的なイメージとして、女性に多く見られるストレス性の病気とされることも多いですが、性別を問わず発症するとされています。
メニエール病のおもな原因は内耳にあるリンパ液が増え、それぞれの機能が正常に働かないことで引き起こるとされています。また、ストレスも大きく関与する病気であることから30〜40代の、いわゆる働き世代に多くみられる病気です。
メニエール病のおもな症状として挙げられるのは、めまい・ふらつき・難聴・耳鳴り・耳がつまったような感覚などです。しかし、「めまい=メニエール病」ではなく、メニエール病には厳密な診断基準があります。
メニエール病とされる診断基準は「難聴を伴うめまい」「症状の反復(繰り返し)」「他の病気の否定」この3つの条件が必須とされます。
めまい症状を特徴とするその他の原因と病気
メニエール病以外にも、めまい症状を特徴とする病気は多くあります。いずれも地面が回るような回転性めまいや耳鳴り、吐き気・嘔吐を伴うようであれば重篤な病気が原因であることも少なくありません。早期の受診を心がけましょう。
良性発作性頭位めまい症
良性発作性頭位めまい症とは、ふいに頭を動かしたり首を回すことなどで内耳の規管が刺激され起こる症状です。ごく短い時間の回転性のめまいや、ふらつきが生じます。「良性」とあるように良性発作性頭位めまい症は一般的に問題のない症状ですが、高齢になるほど起こりやすく、めまいによる転倒などには注意が必要です。
前庭神経炎
前庭神経炎とは前庭と呼ばれ、平衡感覚を司る内耳の一部が炎症することで引き起こる病気です。ウイルスが原因とされ、激しいめまいが数日間続き、投薬や理学療法などで徐々に治まるとされています。
化膿性内耳炎
化膿性内耳炎とは、内耳に細菌が感染することで引き起こる病気です。めまい(ふらつき)や難聴のほか、痛みや発熱を生じることも多くあります。治療には抗菌薬の投与や、鼓膜に穴を開けて液体の排出がおこなわれます。
自律神経失調症
自律神経失調症とは、ストレスなどにより交感神経(興奮)と副交感神経(リラックス)の切り替えが正常に働かず、自律神経の乱れにより生じるとされています。自律神経失調症は、めまい・耳鳴り・疲労感や不眠など症状はさまざまです。
不安神経症・強迫性障害
不安神経症や強迫性障害といった不安障害は、ストレスなどにより不安や恐怖といった感情が過剰につきまとい、日常生活に支障をきたす症状です。例えば「電車に乗っていたら事故が起こるような気がして途中下車してしまう」など精神面の症状や、めまいや耳鳴り・吐き気など身体的に生じる症状があるとされています。不安障害(特にパニック障害)では、気が遠くなるような感覚をめまいと感じて訴える患者さんもいらっしゃいます。
適応障害
適応障害とは、個人にとって特定の状況や出来事がつらく耐えがたく感じ、それらに適応できず、めまいや耳鳴り・動悸や吐き気、下痢などを生じるとされています。精神と身体に症状があらわれますが、ストレスとなる状況や出来事と距離をおくことで症状は軽減します。しかし、ストレスの原因から離れることができないと症状が悪化し、慢性化することも少なくありません。
うつ病
うつ病とは、精神および身体的ストレスなどにより、脳がうまく機能しない状態とされています。また、ものの考え方が悲観的・否定的になり、心身ともに様々な不調が現れます。精神的な症状には、意欲の減退や仕事能力の低下・抑うつ症状などが挙げられ、身体的には、めまいや不眠・肩こりや頭痛などが生じます。
なお、自律神経失調症・不安神経症・強迫性障害・適応障害・うつ病の各疾患では、ふわふわと足元が浮くような感覚が生じる、浮動性めまいの症状が現れることも少なくありません。
ヒロクリニック心療内科によるめまいや耳鳴りの改善法
以上のことから、めまいやそれに伴う耳鳴りなどの原因は様々です。耳鼻咽頭科や内科を受診し、多くの検査をおこなっても身体的な問題はなく、治療法が見つからないまま長期間のめまいや耳鳴り症状に悩む方は少なくありません。
めまいや耳鳴り症状はストレスが原因であることも非常に多く、とくに働き世代の方が発症しやすいとされています。また、ヒロクリニック心療内科では通勤電車の中で発症し、途中下車した駅から受診の問い合わせをしてきた患者さまもいらっしゃいます。
めまいや耳鳴りは吐き気や嘔吐など他の症状を引き起こしやすく、日常生活に支障をきたします。心因性のめまいや耳鳴りであれば、適切な診断と薬物療法・認知行動療法などにより症状が軽減するでしょう。
めまいや耳鳴りの症状を医師に相談するだけでも、症状が軽くなる患者さまは多くいらっしゃいます。また、「ストレスのせい」「少し休めば治る」など安易に自己判断することは症状悪化につながる可能性もあります。
気になる症状やお悩みはヒロクリニック心療内科へご相談ください。一緒にめまいや耳鳴りの改善法を見つけ、一日でも早い治療を目指しましょう。
【参考文献】
- MSDマニュアル – めまい(Dizziness)と回転性めまい(Vertigo)
- 厚生労働省 – うつ病の認知療法・認知行動療法
記事の監修者
佐々木真由先生
医療法人社団福美会ヒロクリニック 心療内科
日本精神神経学会専門医
佐賀大学医学部卒業後、大学病院、総合病院で研鑽をつんだのち、ヒロクリニックにて地域密着の寄り添う医療に取り組んでいる。
経歴
2008年 佐賀大学医学部卒業
2008年 信州大学医学部附属病院
2011年 東京医科歯科大学医学部附属病院
2014年 東京都保健医療公社 豊島病院
2016年 東京都健康長寿医療センター
2018年 千葉柏リハビリテーション病院
2019年〜 ヒロクリニック
資格
日本精神神経学会専門医
日本精神神経学会指導医
精神保健指定医