誰かの話し声や変な音が聞こえてくる場合、幻聴といわれる症状かもしれません。幻聴が繰り返し起こると、本人にとって辛い経験となります。この記事では、幻聴の原因や考えられる病気て、対処方法について紹介します。

「誰かの話し声や変な音が聞こえてくる」そんな悩みを抱えていませんか?もしかしたらそれは幻聴といわれる症状かもしれません。幻聴が繰り返し起こると、本人にとって辛い経験となります。
この記事では、どのような形で幻聴がみられるか、原因や考えられる病気について、幻聴への対処方法について紹介します。自分だけが聞こえる話し声や音に悩んでいる人は、ぜひ参考にしてみてください。 

「誰かの話し声や変な音が聞こえる」とは?

周囲に誰もいない場所などで、話し声や変な音が聞こえる場合、「幻聴」という症状の可能性があります。
幻聴は、実際には聞こえないはずの声や音が、本人の頭の中などから聞こえる症状をいいます。幻聴の症状の現れ方には、個人差があり、以下のような聞こえ方がみられます。

  • 周りに誰もいないのに声や音が聞こえる
  • 対面している人から声が聞こえる。
  • 学校や会社、トイレ、お風呂場など決まった場所で声が聞こえる
  • 車やテレビなどの音や人の話し声とは別に声が聞こえる。

など

幻聴の種類

ひとことで幻聴と言っても、聞こえる声や音にはいくつかの種類があります。具体的な幻聴の種類には、以下のものがあります。

要素性幻聴

話し声などの言語ではなく、単調な音が聞こえる幻聴です。ベル音のような音が聞こえます。

複雑性幻聴

要素性幻聴よりも、複雑な音が聞こえる幻聴です。単調な音ではなく音楽のように複雑に組み合わさった音が聞こえます。

言語性幻聴

話し声や言葉が聞こえる幻聴です。自分に話しかける声、自分の噂話をする声などが挙げら、それに反応することを「対話性幻聴」といいます。対話性幻聴は、周囲の人からみれば、本人が独り言や空笑いしているように見えます。

自分に聞こえている声や音が幻聴かどうかを確かめる方法

本来ないはずのない話し声や音が聞こえ方は、人や状況によってさまざまです。健康な人でも、疲れていたり寝不足だったりしたときに、本来ないはずの声や音が聞こえてくることもあるでしょう。
一方で、自分だけに話し声や音が聞こえることが頻繁に起こるという人は、幻聴の可能性があるかもしれません。正体不明の声や音がするときに、大切となるのが本当に幻聴かどうかを確かめることです。
幻聴かどうかを確認するには、その場にいる自分以外の人に話し声や音が聞こえるかどうかを聞いえてみましょう。もし、自分だけが聞こえている声や音が頻繁にあるのなら、幻聴による症状の可能性があります。
また、周囲に人がいない場合は、話し声や音が聞こえるときに、録音をしてみるのもおすすめです。録音した内容に、自分が聞こえてた声や音が確認できなかった場合も、幻聴による症状の可能性があるでしょう。

話し声や音が聞こえるときに考えられる心の病気の種類

誰かの話し声や音が聞こえてくるという症状は、心身が疲れているときにもみられる症状です。一方で、幻聴の症状が頻繁に起こっている場合、心の病気が原因であることがあります。幻聴がみられる心の病気には、以下のものがあります。

統合失調症

心の病気の代表的な疾患の1つで、主な症状には、幻聴や幻覚、妄想、ちぐはぐな思考や行動、他人とのコミュニ―ケーションの障害など、さまざまなものがあります。
統合失調症の多くは、青年期に発症して、長い経過をたどります。統合失調症の症状が、人格に影響を与えるケースもみられます。話し声などが聞こえる言語性の幻聴が多いのが特徴です。特に、本人に話しかけたり、命令したりする対話性幻聴が多くみられます。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

衝撃的な体験をした後にみられる精神的な障害のことをいいます。ショックな体験は、大きな心の傷となりトラウマになります。PTSDになるとみられる症状のひとつが、フラッシュバックで、過去の体験が、今現在起こっているように感じることがあります。フラッシュバックが起きているときは、原因となった体験を再体験するため、当時の声や音が聞こえている状態になります。
このためPTSDでは、フラッシュバックを避けるために、原因となった体験と似た状況を避ける傾向があります。

薬物による幻聴の症状

覚せい剤や大麻、コカインなどの薬物は、脳の中枢神経に直接作用します。多くの薬物が多幸感をもたらすので依存しやすくなります。繰り返し、薬物を使用し続けると、幻聴などの妄想や異常な行動を起こすようになります。
出来心で薬物を使っても、依存性が高いため、やめられなくなることがほとんどです。タバコや飲酒などが薬物使用への入り口になることもあるため、注意が必要です。

話し声や音が聞こえるそのほかの病気

上記に挙げた心の病気以外にも、ないはずの音が聞こえることがあります。幻聴ではないものの、聞こえないはずの音が聞こえる病気が難聴です。難聴で聞こえるのは声ではなく音になります。具体的には「キーン」「ザーザー」という音が聞こえ、耳鳴りと呼ばれています。
脳の聞こえる力が弱くなると、感度を上げようとするので、壊れたラジオのように耳鳴りが聞こえることで起こります。

幻聴が聞こえるメカニズム

本来ないはずの話し声や音が聞こえるのは、どのようなメカニズムがあるのか気になる人もいるでしょう。幻聴によって話し声や音が聞こえるとき、ほとんどの場合、本人の気持ちや考えからくるものです。
幻聴は、寝ている間にみる夢の中で聞く声や音に似ています。夢を見ているとき誰かと会話したり、話し声や音が聞こえたりするものです。しかし、それは他人が発したものではなく、自分の頭の中で考えていることによります。
幻聴もまた、自分の気持ちや考えを反映したものが、話し声や音となって現れるものです。特に、自分の心の中にあるネガティブな感情は、幻聴の元となりやすくなります。
例えば、何か後悔があり自分自身を責める気持ちあると、攻撃するような幻聴が聞こえることがあるでしょう。また、自分で気づいていなくても、心の底で誰かに反発していると、その相手への攻撃をしかけるような幻聴が聞こえることもあります。
また、「あの人は自分の事をこのように思っているだろう」という考えが、他人の声として聞こえるケースもあります。 

幻聴が与えるさまざまな影響

幻聴によって、話し声や音が聞こえると、日常生活にさまざまな弊害をもたらします。幻聴が与える具体的な影響には、以下のものがあります。

自分が混乱したり、周囲の誤解を招いたりする

幻聴がひんぱんに起こると、仕事や勉強などやるべきことに集中できなくなります。特に、心の病気による幻聴は、ネガティブな内容が聞こえることも多く、本人が混乱する原因になります。
ここで誤って、あるはずのない声や音に反応すると、他人から「独り言をいう変な人」とみられてしまうことがあります。また、幻聴に反応しなくても、「神や霊の声が聞こえる」など、本人が誤った認識を持つ可能性もあります。

症状が悪化して妄想が起こる

幻聴が起こると、「自分の個人情報がさらされている」「自分の考えが周囲の人に伝わっている」と感情を抱くことがあります。このような感情が起こると、周りで起こっている事象が、すべて幻聴と関連しているような思い込みを起こすことがあります。
思い込みが続くと、「嫌がらせを受けている」「尾行されている」などの妄想を起こすことがあります。幻聴をきっかけに妄想が起きると、症状の悪循環を生む原因になります。

幻聴を予防する工夫と起きたときの対策

心の病気が原因で幻聴が起きている場合、まずはどのような状況で起こるのか把握することが大切です。幻聴が起こりやすい状況は、以下のような状況です。

  • 不安が高まっているとき
  • 他人との交流がなく孤立感があるとき
  • 心身が疲れているとき
  • 不眠などにより睡眠が不足しているとき

上記の4つの項目は、心身の疲れを引き起こして、幻聴を誘発するものです。例えば、疲れているときに幻聴が聞こえる人は、心身の休息に重点を置いてみましょう。不安が高まっているときに幻聴が現れる人は、心がリラックスできるような環境を作るのもよいでしょう。自分の幻聴がみられやすい状況を把握して、対策を取ることが大切です。

すでに幻聴がみられているときの対策

ないはずの話し声や音が繰り返し聞こえるとき、状況や内容にパターンがあることに気づく人もいるでしょう。幻聴が聞こえるときは、「声や音は自分の気持ちによって生じてる」という事実を再認識することが大切です。
例えば、統合失調症の幻聴では、テレビやラジオを聞いているときに、自分の個人情報が一緒に聞こえる、という症状を訴える方がいます。本人には実際の声や音と聞こえたとしても、「他人の声や音ではない」ときちんと自覚することで、不安感を和らげることができます。
また、幻聴で聞こえる声や音にしてはいけないのが、反応することです。聞こえてくる声や音に対して、言葉をかけたり、むきになったりしてしまうと、幻聴が現れる頻度が増えたり、内容が激しくなることもあります。幻聴がみられるときは、無視することが大切です。幻聴が聞こえても、聞き耳を立てたり、対話を始めるのは避けましょう。
上記の方法を試しても、どうしても幻聴が気になる方は、以下のこと試してみるとよいでしょう。

  • 家族や友人など周囲にいる人と会話を始める
  • テレビを見たりやラジオを聞いたりする
  • 耳栓をしたり、ヘッドホンで自分の好きな音楽を聴く
  • 医師に処方された頓服薬を飲む
  • 気分転換に散歩やサイクリングに出かける

幻聴がみられたときに有効な対策法は、個人差があります。いくつかの方法を試して、自分に効果的方法を探してみましょう。

幻聴がみられるときは医療機関へ受診しよう

ないはずの話し声や音が聞こえる場合、「自分は変になってしまったのではないか」「自分だけが異常なのか」という不安を抱いてしまう人もいるかもしれません。心の病気によって幻聴の症状がみられるときは、治療によって症状を改善させることができます。
幻聴をそのままにしておくと、妄想が生じて症状に悪循環を生じさせることがあります。心療内科への通院に対して、抵抗感のある人も多くいます。しかしながら、症状を悪化させないためにも、早めに医療機関を受診することが大切です。

幻聴で行われる薬の治療について

幻聴を引き起こす病気には、抗精神病薬の投与を行います。抗精神病薬にはさまざまな種類があり、不安を和らげる効果のあるものや、不眠を改善する効果のあるものなどを投与します。抗精神病薬の投与することで、幻聴が起こりやすくなる状況を改善し、心の過労を和らげます。
また、幻聴がみられる心の病気で使われる抗精神病薬の中には、気力をアップさせるものもあります。やる気の低下や気分の落ち込みを改善することで、周囲の人との交流する意欲を助け、幻聴のリスクとなりやすい孤立感を和らげます。

抗精神病薬の副作用について

心の病気によって幻聴などの症状が現れるとき、お薬を飲むのに抵抗感がある人も少なくありません。特に、抗精神病薬の服用をやめてしまうきっかけとなりやすいのが、副作用が現れたときです。抗精神病薬による副作用には、以下のものがあります。

  • のどの渇き
  • 眠くなる、ふらふらする
  • 手足の震え、またはその場でじっとしていられない
  • 便や尿が出にくくなる

など

心の病気の治療で大切となるのが、お薬をきちんと飲むことです。いろいろな心の病気の治療薬として用いられる抗精神病薬ですが、病気の種類によっても効果に差があります。特に、統合失調症など幻聴がみられる病気は、抗精神病薬によってよい治療効果が得られやすいという特徴があります。
そのため、薬の効果がみられたからといって、自己判断で服薬を中断しないことも大切です。心の病気によって幻聴がみられるときに、医師の指示に従って、服薬を続けましょう。
抗精神病薬による副作用が気になるときは、まずは担当の医師に相談しましょう。医師が幻聴やそのほかの症状の程度をみながら、薬の量や種類を変更します。また、場合によっては副作用を和らげる薬の処方も可能です。

まとめ

正体不明の話し声や音が繰り返し聞こえる場合、心の病気による幻聴の可能性があります。幻聴の症状をそのままにすると、反応したりすることで、症状が悪化する恐れがあります。自分に起こっている症状が幻聴の可能性がある方は、心療内科や精神科のある医療機関を受診するようにしましょう。

記事の監修者

佐々木真由先生

佐々木真由先生

医療法人社団福美会ヒロクリニック 心療内科
日本精神神経学会専門医
佐賀大学医学部卒業後、大学病院、総合病院で研鑽をつんだのち、ヒロクリニックにて地域密着の寄り添う医療に取り組んでいる。

経歴

2008年 佐賀大学医学部卒業
2008年 信州大学医学部附属病院
2011年 東京医科歯科大学医学部附属病院
2014年 東京都保健医療公社 豊島病院
2016年 東京都健康長寿医療センター
2018年 千葉柏リハビリテーション病院
2019年〜 ヒロクリニック

資格

日本精神神経学会専門医
日本精神神経学会指導医
精神保健指定医