ゴシゴシ、シャカシャカ、髪を洗う頻度は?

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「髪は毎日洗った方がいいの?それとも、なるべく洗わない方がいい?」——こんな疑問を持ったことはありませんか?実はこのテーマ、長年にわたって意見が分かれてきました。今回ご紹介するのは、健康なアジア人を対象に行われた大規模な研究で明らかになった「髪を洗う頻度と頭皮・髪の状態の関係」です。毎日のシャンプーが頭皮や髪にどのような影響を与えるのか、最新の科学的な知見をもとに、やさしく分かりやすくお伝えします。

シャンプーの頻度と頭皮・髪の健康の関係

髪をどのくらいの頻度で洗うのが理想的かについては、さまざまな意見があります。一部の人々は、洗髪をなるべく控えるべきだと考えており、その理由は「洗いすぎると頭皮や髪にとって大切な皮脂(ひし)を取りすぎてしまうから」というものです。一方で、「顔の皮膚と同じように頭皮も毎日洗って清潔に保つべきだ」と主張する人たちもいます。このような対立した意見があるため、専門家も一般の人も混乱しがちです。

しかし実際のところ、どの頻度が良いのかを客観的に示した科学的な研究はこれまでほとんど存在しませんでした。そこで、中国の西安(シーアン)市で、健康なアジア人を対象とした2つの大規模な研究が行われました。1つは「疫学的研究(epidemiological study)」で、これは大勢の人々の普段の洗髪習慣を観察して分析したものです。もう1つは「介入研究(treatment study)」で、普段あまり髪を洗わない人に毎日洗髪してもらい、頭皮や髪にどんな変化が現れるかを調べました。

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これらの研究は、洗髪の頻度が頭皮や髪にどのような影響を与えるのか、そして人々自身がそれをどのように感じているかを明らかにしました。

シャンプーを巡る議論の背景

近年、「シャンプーをなるべく使わない方が良い」「まったく使わない方が自然で健康的だ」といった考え方がインターネットや一部のメディアで注目されるようになりました。こうした人々は、「頻繁な洗髪によって頭皮が乾燥し、逆に皮脂の分泌が過剰になる」と懸念します。

皮脂は、毛穴に存在する「皮脂腺(sebaceous gland)」という器官から分泌されます。特に顔や頭など、毛包(hair follicle:毛が生える部分)が密集している場所に多く見られます。皮脂腺は「アンドロゲン(androgen)」というホルモンの刺激を受けると、脂質(油分)に富んだ皮脂を分泌し、髪や皮膚を乾燥や外部刺激から守るためのバリアとして働きます。ところが、甲状腺機能低下症(hypothyreosis)などの病気では皮脂の分泌が少なくなり、髪がパサついたり、硬くなったりすることがあります。

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一方で、定期的な洗髪を支持する人たちは、「洗髪は単に皮脂を落とすだけでなく、髪や頭皮に付着した汚染物質、整髪料の残り、花粉、たばこの煙などの有害物質も除去する」と主張します。さらに、皮脂が過剰になると、フケやかゆみの原因になったり、コレステロールや中性脂肪などの成分が増えて、細菌やカビ(真菌)の繁殖を助けてしまうこともあります。

特に頭皮は、他の皮膚と比べて特殊です。髪が密集しているため、暗く、湿度が高く、皮脂がたまりやすい環境ができあがります。このような環境は、マラセチア(Malassezia)というカビの一種が増殖するのに適しており、この菌は脂質をエネルギー源として増え、フケや脂漏性皮膚炎(seborrheic dermatitis)と関係しています。皮脂や汚れを放置すると、頭皮の炎症やかゆみ、さらには脱毛などの問題につながることがあるのです。

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過去の研究から分かっていること

これまでの研究では、「洗髪の頻度が少ないと、頭皮に皮脂がたまりやすくなる」という傾向が確認されています。皮脂は時間がたつと酸化し、「遊離脂肪酸」や「酸化脂質」といった刺激の強い物質に変化し、頭皮にかゆみや炎症を引き起こします。

例えば、南極に派遣された研究者たちが長期間洗髪できなかった際には、フケとかゆみが急増し、マラセチア菌の数が2〜3倍に増えたという観察結果があります。同様の現象は、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士にも見られました。限られた洗髪機会しかないため、頭皮トラブルが生じやすくなっていたのです。

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さらに、白人、中国系、アフリカ系アメリカ人などのさまざまな人種を対象にした疫学研究では、洗髪の頻度が少ない人ほどフケや頭皮の不快感を訴える傾向があることが分かっています。特にアフリカ系アメリカ人では、洗髪頻度が低いほど脂漏性皮膚炎が増える傾向があり、これは髪の成長にも悪影響を及ぼす可能性があります。

また、別の研究では、脂漏性皮膚炎や乾癬(psoriasis)を持つ人に対し、薬用シャンプーを使わずに洗髪の頻度だけを増やしたところ、かゆみ、フケ、マラセチアの数、炎症の指標がすべて改善されました。

髪の質への影響

頭皮に関する研究に比べて、髪そのものへの影響に関する研究はまだ少ないですが、洗髪頻度が低いと皮脂が髪に移り、髪がベタついたり束になったりするという報告があります。さらに、髪のもろさ(fragility)や成長速度の低下も、洗髪頻度の少ない人々で見られています。特に、普段から洗髪頻度の低い傾向があるアフリカ系の女性においては、こうした影響が目立ちます。

また、頭皮が敏感になると、髪が抜けやすくなることも知られています。こうした間接的な影響を考えると、「頭皮を清潔に保つこと」が「髪の質を守ること」にもつながっていると考えられます。

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今回の新しい研究について

1. 疫学的研究

中国西安で行われたこの観察研究では、18〜75歳の健康な男女1,500人が参加しました。彼らは髪を洗う頻度によって「週1回以下」「週2回」「週3〜4回」「週5〜6回」「毎日(週7回)」の5つのグループに分けられました。参加者に頭皮の病気はありませんでした。評価は「専門家によるフケスコア(ASFS:Adherent Scalp Flaking Score)」と、参加者自身の主観的な感想の両方で行われました。

結果として、洗髪頻度が高いほど、フケ、かゆみ、乾燥の程度が低くなっていました。特に「週5〜6回」洗髪する人々が最も頭皮・髪の状態に満足しており、「毎日洗っている人」にも悪影響は見られませんでした。むしろ、髪のパサつきや抜け毛の悩みがわずかに改善していました。週あたり「髪の調子が良い」と感じた日数も、洗髪頻度が高いほど多くなっていました。

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2. 介入研究(治療研究)

別の研究では、普段は週に2回以下しか髪を洗わない18〜50歳の男女60人を対象に、5週間にわたる試験が行われました。最初の1週間は洗髪を完全に中止し、残りの4週間は毎日洗髪してもらいました。使用したのはすべて同じ亜鉛ピリチオン(Zinc Pyrithione、ZnPT)配合のスカルプケアシャンプーです。亜鉛ピリチオンは、脂漏性皮膚炎やフケの改善によく使われる抗真菌成分です。

髪や頭皮のサンプルを分析したところ、毎日の洗髪によって皮脂の量が大幅に減少し、酸化脂質も減っていたことから、頭皮の酸化ストレスが軽減されたと考えられます。フケのスコアや頭皮のにおいも大きく改善していました。

髪の見た目にも変化がありました。顕微鏡下で見ると、毎日洗った期間の髪は皮脂が少なく、表面が清潔で、テカリも減っていました。また、髪のキューティクル(表面の保護層)が水蒸気をあまり吸収しなかったことから、髪のバリア機能も保たれていたことが分かります。重要なのは、髪の内側にある「内部脂質(髪の保湿と強度に重要な成分)」は失われていなかった点です。

参加者の自己評価でも、頭皮のベタつき、におい、乾燥、かゆみ、フケがすべて改善されたと報告されました。髪についても、広がり(frizz)、ツヤのなさ、切れ毛が減り、「より健康で扱いやすい髪になった」と感じた人が多かったのです。

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まとめと今後の示唆

これら2つの研究から分かったのは、「洗髪の頻度を上げることは、頭皮と髪の健康にとって有益である」ということです。これまでよく言われていた「洗いすぎると髪に悪い」という考えとは逆の結果が出ました。

特にアジア人で直毛や細い髪質の人にとっては、週5〜7回の洗髪が頭皮の炎症や皮脂の酸化を防ぎ、結果的に髪の質を保つのに効果的であると考えられます。別の研究でも、ナイジェリアの女性たちが洗髪頻度を上げることで髪の悩みが減ったという報告があり、他の人種でも類似の傾向があるかもしれません。

特に都市部などの大気汚染がある地域では、皮脂や汚れが酸化して頭皮に刺激を与えやすいため、こまめな洗髪でこれらを取り除くことが重要です。今回使われたシャンプーは肌にやさしい成分で作られており、「シャンプーの種類も重要である」という点も強調されています。強すぎる成分の製品では逆に髪を傷めてしまう可能性があるため、適切な製品選びも欠かせません。

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結論

アジア人においては、週5〜7回の洗髪が頭皮と髪の健康に最も良い影響を与えることが科学的に示されました。

毎日洗髪することで、フケ、皮脂のベタつき、におい、酸化脂質が減少し、髪の見た目や手触りも良くなることが分かりました。

頻繁な洗髪による髪への悪影響は見られず、内部脂質(髪の重要な構成成分)も失われませんでした。

「シャンプーのしすぎは良くない」という考え方は見直すべきであり、むしろ洗髪を怠ることで頭皮トラブルを招く可能性があるという結果になりました。

今後も、消費者や美容の専門家の方々が、より正確で自信を持って判断できるような科学的根拠が、さらに蓄積されていくことでしょう。

女性たち

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引用文献

記事の監修者


監修医師

岡 博史 先生

CAPラボディレクター

慶應義塾大学 医学部 卒業

医学博士

皮膚科専門医

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