髪の毛の移植手術を受けた後、一時的に髪が抜ける「ショックロス(術後脱毛)」が起こることをご存じですか?実はこれ、多くの方に起こる正常な反応なんです。今回はショックロスの原因や症状、回復までの流れを、最新の研究結果も交えながらわかりやすく解説します。術後の不安を軽減し、スムーズな回復を目指しましょう。
手術後の脱毛(ショックロス)とは何か
手術後の脱毛は、髪の毛の移植手術を受けた後に一時的に起こる脱毛のことで、「ショックロス」とも呼ばれています。これは移植された毛髪だけでなく、手術前から生えていた元々の髪にも起こります。通常、手術の2~6週間後くらいに抜け始め、手術後3~4か月が過ぎると自然に収まって、新しい毛が再び生え始めます。

ショックロスは主に移植された髪が植えられた「移植部位」で起こりますが、移植用の髪を採取した「ドナー部位」でも起きる場合があります。移植部位で起こるショックロスはより一般的で、手術から2~6週間ほどで起こります。これは手術の際に皮膚に小さな傷を作ることで、元々生えていた髪が傷ついたり、血管が一時的に損傷を受けたりすることが原因です。また、移植した髪の毛も、手術後3~4週間くらいで抜けることが多いです。これは毛根に血液が急に行き渡らなくなったことによる脱毛(成長期脱毛)で、3~4か月後には自然に再び生えます。ショックロスには血管損傷や物理的な刺激のほか、手術後に皮膚が大きく腫れること(浮腫)も関係していると考えられていますが、アドレナリン(興奮すると分泌されるホルモン)の関与はまだはっきりと分かっていません。育毛剤(ミノキシジルという薬剤)を頭皮に塗ると、回復を早めることができます。
ショックロスの頻度に関する研究結果
ショックロスが起こる頻度は患者さんの特性や研究ごとに大きく異なります。2024年に発表された、1985年~2022年までの43件の研究をまとめたレビュー(総合分析)によると、移植部位でショックロスが起きたケースは最大で6.5%でしたが、この数字は実際より低く見積もられている可能性も指摘されています。一方、別の2024年の研究では、女性型脱毛症を持つ女性195人を調査したところ、手術後に移植部位で元々の髪が抜ける「休止期脱毛」が45.1%もの高頻度で起きたことが報告されています。この研究では、手術後4か月目に移植部位で脱毛が起きた患者が1名報告されましたが、13か月後には症状が安定し、大幅に改善していました。また、621名の患者を対象に行われた別の分析では、女性の方がショックロスのリスクが高く、特に40歳以上の女性でそのリスクがさらに上昇することが明らかになりました。

ドナー部位のショックロスは頻度が比較的低いですが、毛髪を採取する方法としてよく使われる「毛包単位摘出法(Follicular Unit Excision、FUE)」と「ストリップ法(Strip Harvesting、頭皮を帯状に切り取る方法)」のどちらでも起こる可能性があります。FUE法ではドナー部位が広い範囲でまばらに抜けることがあり、ストリップ法では切り取った部分の傷跡周辺で抜けることがあります。このリスクを高める要因としては、手術中に起きた偶発的な血管損傷、傷を縫い合わせる際の過度な張力、喫煙や糖尿病などが挙げられます。頭皮にミノキシジルを塗布することで毛髪の再生を早めることが可能ですが、通常は3~4か月で自然に元通りになります。
人工毛植毛に伴うリスク
人工毛植毛とは、人工的な繊維(人工毛)を頭皮の下に埋め込む方法です。この方法はアメリカの食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)が1983年に禁止した方法であり、その理由は術後の脱毛や炎症などの重篤な合併症のリスクが非常に高いからです。人工毛を使うと頭皮が炎症を起こしたり、感染を繰り返したり、異物に対する拒絶反応が起きたり、傷跡ができたりするリスクがあります。1996年にEUで許可され、中東地域で人気が出ましたが、現在も永久的な傷跡や元々の髪がさらに抜けるなどの深刻な問題があります。

手術の方法と術後ケアについて
一般的な自毛植毛手術は、局所麻酔と生理食塩水などを使った麻酔を使って、日帰り手術として行われます。毛髪を採取する主な方法にはストリップ法(後頭部の皮膚を帯状に切り取る方法)と、FUE法(小さなパンチで毛包を個別に抜き取る方法)の2つがあります。ストリップ法は一度に多くの毛髪を移植できますが、線状の傷跡が残りやすく、回復まで10~14日ほどかかります。一方FUE法は点状の小さな傷跡だけで済み、縫合も不要で、5~7日ほどで回復します。

術後の回復には適切なケアが重要です。手術直後は軽い腫れやしびれ、血が混じった液体が出ることがあります。術後1~2週間は、頭を高くして寝ること、額を軽くマッサージすること、前かがみの姿勢を避けること、運動や飲酒、喫煙を控えることなどが推奨されます。術後2日目からは軽く洗髪を始め、保湿剤や生理食塩水スプレーを使って頭皮を潤し、かゆみやかさぶたを防ぐとよいです。軽い痛みには市販の鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬、NSAIDs)が使えます。抗生物質が5日間ほど処方される場合もありますが、予防的な抗生物質の効果についてはまだ明確になっていません。ストリップ法で縫合がある場合、抜糸は通常術後10~14日目です。
術後の回復促進には、手術後約2週間からミノキシジルの使用が推奨されます。本格的な毛髪の再生は術後3か月頃から始まり、最終的な仕上がりが見えるのは約8~14か月後になります。

患者さんには、術前後にショックロスの可能性などを丁寧に説明し、現実的な期待を持ってもらうことが非常に重要です。特に女性や薄毛が進んだ患者さんでは、心理的な負担を軽くするための丁寧な説明と術後ケアが欠かせません。

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