髪の美しさは、毎日の洗髪とコンディショニングから始まります。けれど、「どんなシャンプーを選べばいいの?」「髪がパサつくのはなぜ?」と迷うことも多いのではないでしょうか。この記事では、健康な髪を育むための洗浄とケアの基本から、髪質に応じた選び方、プレプーやL.O.C.メソッドなどの専門的なケアまで、最新の研究に基づいてわかりやすく解説します。今日から始められるヘアケアの第一歩を、一緒に踏み出してみましょう。
健康な髪を保つには、まず「洗うこと」から
髪と頭皮を健やかに保つためには、まず適切な洗浄が基本になります。基本的なケアの流れは、シャンプー(shampoo)で汚れを落としたあとに、コンディショナー(conditioner)で髪を整えるというものです。これに加えて、オイル(oil)やタンパク質を含む特別なコンディショナーを使うことで、さらに効果を高めることができます。シャンプーに含まれる洗浄成分(界面活性剤:surfactants)や、コンディショナーの成分はそれぞれ異なる役割を持っていて、特に乾燥しやすい髪や、縮れ毛、傷んだ髪には、それぞれに合った製品を選ぶことがとても大切です。

シャンプーできれいにします
シャンプーの基本的な役割
シャンプー(shampoo)の主な目的は、頭皮にたまった皮脂(sebum)、ホコリ、スタイリング剤の残り、空気中の汚れなどを取り除くことです。皮脂は頭皮にある皮脂腺から自然に分泌される油で、髪を保護し、ツヤを与える働きがあります。ただし、特にストレートヘア(straight hair)の人は、皮脂が毛先まで届きやすいため、皮脂が過剰にたまると髪がベタついたり、汚れを吸着して不潔に見えたりすることがあります。

髪質によって異なる洗い方のポイント
一方で、カーリーヘア(curly hair)やコイル状の髪(coiled hair)の人は、髪の形状が原因で皮脂が毛先まで届きにくいため、一般的なシャンプーを頻繁に使うと、かえって髪が乾燥してパサつき、傷みやすくなってしまいます。このような髪質には注意が必要です。ただし、2021年に行われた疫学的および治療的な調査(epidemiological and treatment study)によると、アジア人の参加者では洗髪の頻度が高くても髪の状態が悪化することはなく、むしろ毎日洗髪している人の多くが「髪の調子が良くなった」と感じていることがわかりました。

洗うときのコツ
シャンプーを使う際は、髪全体ではなく主に「頭皮」に塗って洗い、その後のすすぎで髪全体に流すようにすると、髪の乾燥を防ぎやすくなります。
シャンプーの効果を左右する界面活性剤(surfactants)
シャンプーの効果は、含まれる成分の中でも特に「界面活性剤(surfactants)」の種類によって大きく変わります。界面活性剤は、水と油のように本来混ざりにくいものをなじませる働きを持ち、汚れや余分な皮脂を落とすのに不可欠な成分です。昔のシャンプーは石けんと似た成分で作られており、「硬水(hard water)」では洗い流した後に髪がごわつくことがありました。現在のシャンプーは、より高性能で、様々な水質に対応できる界面活性剤を使っています。

4種類の界面活性剤の特徴と選び方
陰イオン界面活性剤(anionic surfactants)
負の電荷を持ち、油分や汚れを落とす力が最も強いタイプです。ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)やラウレス硫酸ナトリウム(SLES)などの「硫酸塩(sulfates)」が代表的です。洗浄力は高いですが、必要な水分や油分まで奪ってしまうことがあるため、乾燥しやすい髪質の方には注意が必要です。「サルフェートフリー(sulfate-free)」のシャンプーはこうした成分を避けて作られていますが、似た性質の成分が使われている場合もあるため、成分表示の確認が大切です。
陽イオン界面活性剤(cationic surfactants)
正の電荷を持ち、傷んだ髪のマイナス電荷部分に吸着しやすい性質があります。髪をやわらかく整える効果があり、ベヘントリモニウムメトサルフェート、ベンザルコニウムクロリド、セトリモニウムクロリドなどが代表的です。洗浄力は弱いため、陰イオン系と併用する際は配合バランスに注意が必要です。
両性界面活性剤(amphoteric surfactants)
pHによって正にも負にもなり、刺激が少なくマイルドな洗浄力が特長です。ベタイン系(betaines)やスルタイン系(sultaines)などがあり、ベビーシャンプーなどにも使われています。
非イオン界面活性剤(nonionic surfactants)
電荷を持たないため、最も刺激が少ないとされています。デシルグルコシド(decyl glucoside)やセチルアルコール(cetyl alcohol)などがあり、乾燥しやすい髪や化学処理された髪に適しています。

その他の成分とpHの影響
界面活性剤のほかにも、シャンプーには髪をなめらかにするコンディショニング成分(conditioning agents)、泡立ちやとろみを出す増粘剤(thickening agents)、見た目を整える白濁剤(opacifiers)、水中のミネラルによるゴワつきを防ぐキレート剤(sequestering agents)など、さまざまな添加物(additives)が含まれています。
また、pHも髪の質感に大きく関わります。アルカリ性(pH7以上)のシャンプーはキューティクル(cuticle)を開いて広がりやすくし、酸性(pH5未満)のシャンプーはキューティクルを引き締めて滑らかに整える効果があります。一般的な市販品はアルカリ性寄りですが、美容室用(salon-grade)の製品は酸性に保たれていることが多いです。
髪をいたわる「プレプー」のすすめ
乾燥やダメージが気になる髪には、シャンプーの前にオイルを塗る「プレプー」というケアがおすすめです。これは「ハイグラル・ファティーグ(hygral fatigue)」と呼ばれる、水分の出入りを繰り返すことで髪がもろくなる現象を防ぎます。
ココナッツオイル(coconut oil)は分子が小さく、極性(polar)を持つため、髪の内部(cortex)にまで浸透し、水の吸収を約半分に抑えることができるとされています。ミネラルオイル(mineral oil)にも保護効果はありますが、髪の内部まで浸透する力はそれほど高くありません。

コンディショニングで守ります
コンディショナーの基本的な役割
コンディショナー(conditioners)は、どんな髪のケアにも欠かせない存在です。髪は生物学的には活動していない(biologically inactive)ため、自然に修復されることがありません。つまり、傷んでしまったあとではなく、傷まないように「予防する」ことが何より重要です。コンディショナーには、潤いを与えたり、静電気を防いだり、扱いやすさを向上させたり、枝毛を一時的に補修したりする働きがあります。特にテクスチャーのある髪(textured hair)や巻き毛(curly hair)は切れやすいため、シャンプーよりもコンディショナーの方が重要といわれることもあります。

リンスアウト・コンディショナー
「リンスアウト・コンディショナー(rinse-out conditioners)」は、シャンプーの直後に使ってすぐに洗い流すタイプです。髪の水分バランスを整え、静電気を減らします。主にベヘントリモニウムクロリド(behentrimonium chloride)などの陽イオン系化合物(cationic agents)や、シリコン(silicones)が使われています。ただし、すぐに洗い流すため効果は一時的です。
ディープコンディショナーとヘアマスク
「ディープコンディショナー(deep conditioners)」や「ヘアマスク(hair masks)」は、10分以上髪につけておくタイプで、成分をより深く浸透させることができます。パーマやカラーなど化学的に処理された髪や、傷みが進んだ髪にはとても有効です。加温によってキューティクルが開き、吸収が高まります。多くの製品には、タンパク質(proteins)も含まれていて、髪の構造を補修します。

洗い流さないコンディショナー(リーブイン)
「洗い流さないコンディショナー(leave-in conditioners)」は、髪に長時間とどまることで、より長く保湿と保護が続きます。カールヘアの人に特に人気があり、グリセリン(glycerin)のような保湿成分(humectants)や、軽量ポリマー(lightweight polymers)が含まれています。これらは髪の表面をコーティングして、傷んだ部分を埋めるとともに、静電気を防ぎます。スタイリングやダメージ予防のために毎日使用している人も多くいます。
タンパク質入りコンディショナー
タンパク質入りのコンディショナー(protein-containing conditioners)は、髪の傷んだ部分の隙間を加水分解されたタンパク質(hydrolyzed proteins)で埋め、一時的に髪の強度を約10%高めます。ただし、シャンプーを数回行うことで効果は薄れていきます。代表的なタンパク質には、加水分解ケラチン(keratin)、コラーゲン(collagen)、エラスチン(elastin)などがあります。

プロテイントリートメントによる集中補修
より集中ケアが必要な場合は、「プロテイントリートメント(protein treatments)」が用いられます。これらは高濃度のタンパク質を含み、髪の強度を支える内部(コルテックス:cortex)を補修することができます。研究によると、特に傷んだ髪では、塗布してから最初の15分間に最も多くのタンパク質が吸収されることがわかっています。
髪の水分を閉じ込めるL.O.C.メソッド
皮膚科の分野で使われてきた保湿法である「ソーク・アンド・スミア(soak and smear)」は、髪のケアにも応用されています。これは、まずシャンプーとコンディショナーを行い、髪を軽くタオルで拭いたあと、水分ベースのリーブインコンディショナー(water-based leave-in conditioner)を塗り、さらにココナッツオイルやオリーブオイル、ホホバオイル(jojoba oil)などで水分を閉じ込めるという方法です。さらに、水分を含まないクリームやバターを最後に塗ることで、保湿を長持ちさせます。この流れは「L.O.C.メソッド(Liquid, Oil, Cream)」として、ナチュラルヘアのコミュニティで広く取り入れられています。

ヘアケアは、思い立った今日からでも大丈夫です
このように、髪と頭皮の健やかさを保つためには、洗髪とコンディショニングの習慣を、水分を守ること、やさしく洗うこと、そしてダメージを防ぐことを大切にしながら、丁寧に組み立てていくことが大切です。特に、乾燥しやすい髪質の方やカールヘアの方、またはパーマやカラーなどの化学処理を受けた髪には、マイルドな洗浄力のシャンプーやサルフェートフリーの製品を選び、シャンプー前のオイルケア(プレプー)や、定期的なタンパク質補修を取り入れることで、髪本来のうるおいや美しさを保ちやすくなります。

引用文献
- Aguh, C. (2017). Developing a healthy hair regimen i: Formulating an optimal cleansing and conditioning regimen. In C. Aguh & G. A. Okoye (Eds.), Fundamentals of Ethnic Hair (pp. 79–89). Springer International Publishing. https://doi.org/10.1007/978-3-319-45695-9_7
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- Bouillon C. (1988). Shampoos and hair conditioners. Clinics in dermatology, 6(3), 83–92. https://doi.org/10.1016/0738-081x(88)90036-3
- George, N. M., & Potlapati, A. (2022). Shampoo, conditioner and hair washing. International Journal of Research in Dermatology, 8(1), 185–191. https://doi.org/10.18203/issn.2455-4529.IntJResDermatol20214930
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