PET(ポジトロン断層撮影)検査は、がんの早期発見や治療効果の確認において非常に有効な画像診断法として知られていますが、実はがん以外のさまざまな疾患の診断にも活用されています。PET検査は、体内の代謝や機能の異常を捉えることができるため、がん以外の疾患においても病態の把握や診断に役立つのです。ここでは、PET検査がわかるがん以外の主な疾病と、その診断における意義について解説します。
1. PET検査でわかるがん以外の主な疾病
- アルツハイマー病や認知症
PET検査は、アルツハイマー病などの認知症の早期診断に活用されています。特に、脳のブドウ糖代謝を調べることで、脳のどの部分が正常に機能していないかを確認することができます。アルツハイマー病では、脳の特定の領域で代謝が低下していることが特徴です。また、アミロイドPET検査という特別なPET検査では、アルツハイマー病に関連する異常なタンパク質(アミロイドβ)の沈着を確認することができます。 - 心疾患(虚血性心疾患など)
心臓の血流や酸素消費量を調べるためにPET検査が使用されることがあります。心臓PETは、心筋の血流や機能を評価し、冠動脈の血流不足(虚血)や心筋梗塞の後の心筋の生存能力を確認する際に有効です。これにより、心臓の機能低下を早期に検出し、適切な治療法を見つけることが可能です。 - 脳のてんかん
PET検査は、てんかんの発作を引き起こす脳の部位を特定するために使用されることがあります。てんかん患者の脳では、発作が発生する領域で代謝が異常になることが多く、PET検査によってその領域を特定することで、手術の適応や治療計画を立てる際に役立ちます。 - 感染症や炎症性疾患
PET検査は、炎症性疾患や特定の感染症の評価にも使用されます。炎症が起こっている部位では代謝が活発化するため、PET検査でその領域を可視化することができます。例えば、原因不明の発熱(発熱性疾患)や結核、慢性炎症性疾患などの診断で役立つ場合があります。 - サルコイドーシスや炎症性腸疾患
サルコイドーシスは、体内の複数の臓器に炎症を引き起こす疾患で、PET検査を用いることで炎症が広がっている部位を把握できます。また、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)の活動性を確認するためにも利用されることがあります。
2. PET検査のメリットと限界
PET検査は代謝活動や体内の機能を詳細に評価できるため、通常のCTやMRIでは見つけにくい病変を検出することができます。しかし、PET検査にはいくつかの限界もあります。
- 特定の疾患で診断の確定に至らない場合もある
PET検査は、代謝の異常を示すことができる一方で、それが必ずしも特定の疾患を示すとは限りません。そのため、診断の確定には他の検査との組み合わせが必要です。 - 放射性薬剤の使用による被ばくリスク
PET検査では放射性薬剤を用いるため、被ばくのリスクがあることを考慮する必要があります。ただし、通常の医療行為での使用範囲では問題になることは少なく、必要に応じて行われる安全な検査です。
3. PET検査の進化と今後の期待
近年、PET検査技術の進化により、がん以外のさまざまな疾患においても正確な診断や治療効果の評価が可能になっています。また、PETとMRIを組み合わせたPET/MRI装置の登場により、さらなる高精度な診断が期待されています。これにより、より多くの患者に適切な治療法が提供されることが期待されています。